バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

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高評価、感想お願いします。
少し刺激の強い描写があります。ご注意ください。



128 vs機械円盤⑨ -ヒトガタ-

部屋の中に侵入したコードに向かって爆弾ロボの銃撃が雨のように降り注ぐ。

というのも柱全部を銃が占めているんだからとんでもない数だ。

普通のやつなら防ぎようがないというか、チリも残さず打ち砕かれる。

あくまで普通のやつなら、の話だが。

 

 

銃撃が放たれるのとほぼ同時に入ってきたアリエルが暴食を発動させると、銃弾がまとめて消滅する。

防いだとかいう感じではなく本当に消えたという言い方が相応しい。

これがただの支配者スキルの一つだと考えると頭が痛くなるけど、今現在だけはそれは有難い。

白だと絶対無理だったはずだし、オレ様も初発は抑え切れると思ってなかった。

 

 

”急激液化”ドッキリキッド‼︎

 からの”究極吸収”アルティメットゲッター!!』

 

次発の銃撃の前に飛び当たると予測される部分の体をあらかじめ液化。

そしてくらって言葉通りその弾のエネルギーも食らってから元の体に戻る。

体の大きさくらいしか守れないという欠点はあるが、ロボットから見たコードはそんなに大きく見えないからこれで十分だ。

 

 

「白!」

「わかってる!」

 

 

ポティマスの方へ飛んでいく銃撃も白が盾を持って防ぐ。

まあ盾といってもこの部屋の扉を無理矢理に引きちぎったもの。

それでも完全に抑えられているし、予想以上の仕事が出来ていると言えるだろう。

 

 

「やばかったら言え!」

「問題ない!

 むしろそっちヤバいんじゃ!

 身体半分近く溶けてるよ!」

「いつものこったろ!

 もうこっちはただのエネルギー体に近いんだ。

 人間の見た目なのも動くの楽だからって理由だかんな!」

 

 

実際そうだ。

事実上青の体はもう生命をやめている。

単為生殖だって可能で、心臓が無くても脳がなくても問題なく生きていく事ができる。

なんなら水槽の中に液体となって保存されることも可能。

こんなのは生き物とはもはや呼べないだろう。

まあそれはDやヤツのお付きの冥土にこそ言えるだろうが。

 

 

つーかコードはどこにブッ刺さるつもりなんだ。

もちろん刺すための穴も無いし、ポティマス側のコードには突起はあるがだからといって解決する問題でも無いだろう。

と思っていたらグサリと柱にコードが突き刺さった。

マジかよ、どんな力がコードから出てんだよ。

まさかそのまま刺さって侵入するとは誰も思わねーって!

まあそれで出来るならいいけどなぁ!

 

 

撃たれながらコードの長さを計算し、コアまでの距離を概算。

それに一秒あたりの運動距離を計算に加えかかる時間を軽く確認する。

ああ、でも案外早く終わりそうだ。

ポティマスが思ったより安全な処理方法思いついてくれたおかげで楽に行けたわ。

そもそもコイツがGフリート設計図作ったんだがな。

ま、全部終わったらGフリートごとオレ様が鹵獲するし許してやろう。

 

 

 

 

そんなことを思っていた矢先だった。

急に体が重くなり、身体の周りに纏わせていた微細な魔法が解除される。

ただ理由ははっきりわかる、クソエルフだ。

視界の端に映る白に向かって銃を放つソイツ。

だが白は急に結界が貼られたことに違和感を感じているのか、ボーとしているのか、ポティマスの撃った弾を見つめている。

チッ、無理をするしかねぇ。

 

 

神経を活性化し爆雷を発生。

それと共に一気に体内を組み替えて、瞬発力を上げる。

そして跳ぶ。

 

 

よし、白とポティマスの間には余裕を持って割り込める。

だがアリエル、お前は近づかんでくれ。

いくらアンタでも暴食なしでポティマスに撃たれたら重症になる。

だからオレ様が抑える。

 

 

白を庇おうとするアリエルにタックルして、壁まで吹き飛ばす。

そしてポティマスの方を向き、両手を広げた。

ポティマスが撃った弾はオレ様の胸を狙っている。

無論こちらがそう動いただけだが。

胸を液化させて、さっきのように銃弾を受ける。

その瞬間、確かに目の前のポティマスがニヤリと笑った。

 

 

「あ」

 

 

やっちまった。

一つ致命的なミスを犯していた。

バカだ。

そうだオレ、一度戦った時コイツにもう肉体の液化は見せてたのに、また通用すると思っていてしまっていた。

こんなエネルギードバドバな星で対策されてないはずがない。

やべぇ、死ぬかも。

 

 

肉体が溶解していく。

マズイ、再生しなければ、原型を戻さなければ、この戦場に完全な足手纏いを生んでしまう。

だけど直らない。

体は徐々に崩れ液体となっていく。

崩れたタンパク質のようになって、砕けて、また水になって、また肌色と黄色の混ざったグズになる。

だけどすぐに溶けてゆく。

やばい。

 

 

 

考えろ。

思考加速を無理矢理さらに強めて、考える。

今回の銃弾には強い酸が封入されていてそれがオレ様の肉体溶解機構主に神経伝達部位と筋肉終板のアセチルコリン受容体およびミオシン頭部アクチンフィラメント結合部位におけるトロポミオシン上トロポニンを溶解させ筋収縮を抑制して同時に神経伝達が抑制されてる。

となると考えられる酸はオレ様の肉体を貫通させ全身に回るレベルであることを考慮した上で最終的に完全液化までには至らない濃度、それでいて銃弾内に詰めても問題なく射出可能なレベルまで酸を弱めるとするとマジック酸あたりが一番当てはまる。

となるとマジック酸がピストルから発射されているわけで、マジック酸ならこの星独自の法則、ステータスくらいなら軽く貫通できる。マジック酸に耐えられる容器は100億%銃弾に封入できる硬度ねぇのになんで出来てるんだよこのクソエルフ。

 

 

結論。

この酸が込められた銃弾を止める術は地球上に存在せず、同時にこの星においてもポティマス以外は持ち得ない。オレ様以外の原生生物に当たったら溶け消えて死ぬ。

 

 

糞ゲー過ぎでは?

このオレ様が糞ゲーって言うんだぞ、終わってるぞこれ。

てか伝えなきゃ死ぬわコイツら。

マジで。

 

 

『オレ様は死なない!

 だけどこれを食らえば身体が溶けてお前たちは確実に死ぬ!

 逃げろ!』

 

 

クソッ、だよな、逃げようとはしないよな!

ポティマスに向き直った2人を見て、無い唇を噛む。

 

 

「私ももちろん貴様らを逃す気はない。

 電脳には悪いが貴様の体が欲しかったからな、回収するには邪魔を排除する必要がある。

 なに、意識は残すように尽力する。

 もう一人の方は捨てるが」

 

 

 

ふざけんなよ。

全部終わる。

こんなヤツのせいで、こんな中途半端で。

これはオレ様にとって到底許されることではない。

 

 

MA原子炉が身体の中で回る。

身体の中のエネルギーがオレ様の中で廻り回って、身体が弾けるように揺らぐ。

理屈ではわからない心を無理矢理突き動かす。

ああ、助けたい。

青のことを、白のことを、アリエルのことを。

それだけが今のオレの願いだ。

 

 

 

ダメだ。

無理矢理でも動けない。

今まではこんなピンチでも動けていたのに、クソ。

理屈に、科学に、勝てねぇ。

 

 

ポティマスが動けないオレに銃を向ける。

それを遮るように立つ白とアリエル。

マズイ、このままだと本当に死んでしまう。

 

 

あー!!科学に勝てないか、そうかそうか、そうに決まってる。

今まで気づけなかったオレの名が泣く。

オレ様は電脳で、科学は逆らうものじゃなく使うもんだ。

見てやがれ。

 

 

酸性のものをその物質自体を取り除かずに変性させて無毒化する方法は二つある。一つは水を大量に加えることで濃度を下げること、そして二つ目はアルカリ性の物質を加えて中和することだ。だが今回は大量の水がないからアルカリ性の物質を加えるしかない。

じゃあそのアルカリ性の物質、出来るならば浸透の早い液体をどう作れるか。

簡単だ。超強力アルカリ性火山性ガスを無理矢理溶解させてそれを超高濃度にする。

そしてゼルギズのお陰で無虚空間には山程メタンガスやエタンがある。

普通なら溶けねぇ、だがオレ様の体内で超圧縮すれば溶かせる。

よし少しだけ中和できた、このままいけばいける。

時間が欲しい。

 

 

「じゃあ貴様らはこれで終わり。

 自分本位で動けば助かるものを、人を守るために動かないとは本当に愚かなのだな」

 

 

だけど無慈悲で、言葉と共に弾が2発放たれる。

クソ、中和が間に合わない。

クッソ!

 

 

「今まで散々、守ってくれてありがとう。

 だから次はわたしが守る」

 

 

そんなバカなことを言って白は振り向いて笑ってポティマスに突進する。

放たれるピストルに、スローモーションになって見える。

 

 

「そうは問屋が下さない!

 白ちゃん、今は生きろ!」

そして白を止めるために白以上に加速するアリエル。

ああ、これ、オレを救おうとしてるんだ、この2人は。

 

 

チッーー。

オレはオレの仕事をする。

この星を救うタイムリミットはオレが殺されるまでだ。

決して2人が死ぬまでじゃねぇ、目的を忘れんな。

体内でガスに圧力をかけて無理矢理溶かしていく。

そして無理矢理体を中和していく。

 

 

 

ドプンという鈍い音がアリエルの腕と白の頭から響く。

どうやら着弾したみたいだ。

急げ。この一秒を無駄にするな。

この一秒が世界を変える。

 

 

ブォンという空気を切り裂く音と、地面に響く鈍い音。

は。

よし一定以上中和した、これで立てる。

行かなければ。

 

 

顔を上げると、床に落ちている溶けかけの白の頭とアリエルの左腕。

顔のない白は鎌を持ってポティマスに脚で掴みかかっていた。

ピョンとその間にオレ様の隣に跳ぶアリエル。

そして切れた左腕を隠し、右手でピースを作って笑って言った。

 

 

「ほらね、死ななかった。

 君が思ってるより私たちは丈夫だよ!

 魔法少女アリエルちゃんと白ちゃんが死ぬわけないじゃないか!

 不思議な力で生き返るさ!」

 

 

彼女の笑顔になぜかクラリと脳が刺激される。

ああ、舐めてたのはオレ様だったんだな。

この2人を。

この2人はオレ様が思っているより断然強かった。

まさか撃たれた部分を即座に鎌で切り落として浸透を防ぐとは。

 

 

白の力でバキリという音で砕けはじめるポティマス。

その隙にアリエルが柱とのコードを切断して柱を一気に蹴り飛ばす。

おい、爆弾入ってんのに平気か?

 

 

ポティマスも爆弾入りロボットも2人が対応してくれている。

これで全部終わった、か。

オレ様が見くびってただけだったのかもしれねぇな。

まあ終わったんだ、無事に。

……アリエル、本気で爆弾入り柱ロボットケチョンケチョンにしてるけど大丈夫だよな?

ポティマス自分で処理出来ないのそんなに苛立ってんのか?

そんなことを考えていた瞬間だった。

 

 

ドン、ドン、ドドン。

 

 

 

響く銃にオレ様とアリエルは目を見開く。

背中からでもわかる、溶け始める白の体。

ポティマスもボコボコにされてとっくにもう動けないと思っていた。

まだ銃を撃てたのか。

今の弾は4発だし、頭にも命中している。

白の蜘蛛の頭も人の頭もやられた。

動きを止めてグズリと自重に耐えきれずに崩れる白。

どんどん身体が溶け落ちていく。

 

 

 

救わなきゃ。

待って。






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