バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

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129 vs機械円盤⑩ -美しい終わり-

走る。

白が死んでしまうから。

ポティマスの結界のせいでスキルが発動しないこの世界では白は卵復活出来るからわからない。

だってただでさえふたつの脳が両方やられているんだ、私が対処しても最悪の事態ということはありうる。

 

 

「どうすればいい!?」

「今アリエルは何もしないで!

 下手に触れるとみんな死ぬ!」

「青……!?」

 

 

ああそうか、アリエルは私と電脳が今この瞬間に同期したことを知らない。

だから驚いてるのか。

 

 

「私はもう平気、だから心配しないで。

 それよりアリエル、あなたにはこの後やってもらうことがある。

 だから今は参加しないでいい。

 後で頑張って」

「……わかった。

 何か出来ることがあったらすぐに言って」

「うん」

 

 

おそらくアリエルは私がアリエルを思いやってやってもらうことがあるなんて言っていると思っているはずだ。

だけど本当にやってもらうことはある。

私と一緒にではあるけれど、明らかに分不相応な場所へついてきてもらうことになるだろう。

多分だ、あくまで多分。

私もそうならないことを願う。

そもそも何もなければそうはならないんだ。

 

 

強酸が付着している部分を切断して白の中に生き残っていく部分をかき集めていく。

ただ唯一良かったのはポティマスが白に銃を撃つとともに力尽きてくれたこと。

まだ見られているかもだけど私から見ても完全に機能は停止しているから干渉されなければいいや。

いやでも、私の能力バレのせいでこんなことになっちゃったんだし念のため破壊しとこう。

 

 

「アリエル、ポティマスを粉々に砕いといて」

「うん、私に任せなさい」

 

 

そうアリエルに頼んで、砕いてもらっている間にも私はその間も白の体から組織を取り出していく。

私もとい電脳が作ってくれた強アルカリ、あれなら白に撃たれた弾の酸を中和できるけどいかんせん4発も撃たれちゃ許容可能なキャパシティを軽く越えられてしまう。

馬鹿げたことをやられたもんだ。

 

 

ああ、キレそう。

手が溶けるのも構わずハサミのように尖らせた腕で白の組織を切っていく。

ラッキーなことに人の部位の心臓は生きてくれている、これさえ恒常的に生きながらえられるようにすれば不死と高速再生で勝手に再生してくれるはず。

そもそも不死なんだ、主要な臓器さえ守り抜けば死にはしない。

ここまで来たらあとは私がこの心臓を傷つけなければオールOK。

はぁー、ヒヤヒヤした、心臓まで酸が侵食していたら間違いなく助からなかった。

肺とかまで酸が侵食してたから本当に危なかったよ。

ドクン。

私が切り取って両手の上に乗せていた心臓が一度急に拍動した。

どうした。

 

 

 

そして止まった。

 

 

 

 

はぁ?

どうして、いやわかってる、理由はあのクソ女だ。

ただなんで心臓が止まった。

どんな原理で止められた。

それがわからないとどちらにしろ生かすことは難しい。

いやよくない考えてる暇なんか無い!

だってもう心臓は止まってんだよこのままにしたら死ぬんだよ馬鹿野郎!

もう余裕はない。

 

 

 

『おいD、干渉を止めろ!

 不死であっても、ポティマスの結界内では本来関係ないはずだ!

 それなのに不死の機能が止まったのはお前の仕業だろ!

 ふざけるな!

 早く元に戻せ!』

 

 

こんなことを私が言っても、念話からはうんともすんとも帰ってこない。

ヤバい、完全に白が死んでしまう。

生命なんて魂なんて本来心臓に宿らないんだ。

不死でそれをカバーしてるのにその不死を消してくるとは。

マジで死すべき邪神だ。

 

 

クソッ!

魂を縫い付けておく方法なんて知ったこっちゃない。

私も今まで不死とかで無理やり保存してて、地球間での移動も万全な状態で行ってたからどうすれば保てるかとか知らない。

だけど保たないと白が死ぬ。

どうすればいいんだ。

 

 

だけどひとつだけ解決法を思いついた。

ただこれは未来を投げ打ってしまうことになるかもしれない。

個体としての私が死ぬかもしれない。

だけど、だけどだ。

白が生きられないならどうでもいい。

全生命と白なら、白に私の命をくれてやる。

 

 

私は、刃のように鋭く変形させた自分の腕を胸にグサリと突き刺した。

大量の真っ赤な温かい液体が流れ出るのを感じるけどそんなのはどうでもいい。

無虚空間でさえきちんと保存できるかわからないんだよ、これしかないだろう。

 

 

「青……、えっ?」

「あとアリエルGフリートのコアを頂戴、私の背中に押し当てて!

 そっからエネルギー吸収するから!

 私の持ってるエネルギーじゃ白に適合するかわからない!」

「わかった!」

 

 

ともかくアリエルには後のことを任せる。

私は今、どんなことをしても彼女を助けるんだ。

自分の心臓を切り取り、グニュリと外へ押し出す。

そして白の心臓を私の心臓があった所へはめる。

血管を繋げて、神経を繋げて、筋を繋げる。

これで白の心臓は理論上動けるはず。

彼女の心臓は私の心臓になったんだから。

 

 

爆弾ロボットからコアを取ったアリエルが、私の背中にそれを押し当てる。

うんやっぱり片手に収まるほど小さかったね。

私の予想でも両手に収まると思ってたし、簡単に運べるサイズだったのは良かった。

背中からMAエネルギーを吸収していく。

ヤバいすごい、身体全体がビリビリする。

元々大量のエネルギーを持ってる私がこんなに身体をビリビリと神経を焼き切られそうになってるとか、どんなにエネルギー詰めてたんだ。

ヤバい、辛い。

 

 

全身に響く痛みを必死に抑えながら心臓にエネルギーを送り込む。

こんなにすごい力を送ってるんだ、白の心臓であってもマッサージに十分なりうる。

今は私の神経が心臓にも絡まっているから形容し難い痛みは襲ってくるけれど。

そもそも心臓マッサージだって肋骨折ってやること……ヤバい、どうして痛覚無効なのに痛い!?

ドクンと身体中が揺れる。

やっと心臓が動き出した。

よしこれで第一段階は終わり、でいいんだよな。

あとは私の肉体に白の精神を宿す。

つまり私は体の中の主導権を彼女に明け渡すということだ。

実際にはそれでも死にはしないけど、はたから見れば死んだように見える。

まあ神とかいう上位存在に弄ばれたら消えるくらいには存在弱くなるけど。

 

 

じゃあおやすみ。

あとは任せたぞ、白。アリエル。

ああやっぱりだ。

私もすぐ戻るから頑張って。

私が戻るまで、2人で粘って。

今まで床だったものが天井になって壁が消滅する。

まるで虫かごをひっくり返したように重力がめちゃくちゃになる。

けれど私は空中で眠りに落ちた。

アリエルのことは気絶したせいでわからないけど、せめてただ粘り切って欲しい。

本当に願ってる。

 

 

 

これから神たちの会合が始まる。




これで第2章、『特異点』編は終わりです。
次からは第3章へと参ります。
最後まで書いていきますので、よろしくお願いします。
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