バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

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お久しぶりです。
やりたいことをやっていたら遅れました。


W6 どうもこんにちは神の分身です

「なんか食うか?飯あるが」

「いらない。お腹減らないし」

「おけ。我もまだ完治してないから動きたくないし、それならそれでいい」

 

私は白。青が作った空間の中にいるものの、まごうことなき神の分身だ。

元々の心、感情を、知能を押しつぶして生まれた、神の分身。

もともと感情なんてものがあったのかは知れないが。

 

その違和感に気づいたのは、神になって目を覚ましたとき。

私の目の前でポテチを食べながら笑っていた女は前世の私そのものだった。

そして混乱する私の目の前でそいつは言う。

 

「貴方方はこの世界に転生したんです、私がいたために教室が爆発したので」

 

だからなんだ、と思った。

私は混乱しているんだ、そんなことは関係ないと思った。

知りたいのはなぜお前なのか、それだけだった。

なんだお前、私が見た私はもっと静かで……。

 

あれ、私、鏡なんて机の上に置いていたか?

いや置いていない。

じゃあ、この私の顔は誰が見たんだ?

思い出そうとしても、蒼生の顔しか出てこない。

なんだなんだ、なんだこれ呪いか?

この蒼生の顔の記憶はなんなんだ。

この覗き込むような記憶は。

 

彼の手の上を私は歩く。

周りには呆れたようなクラスメイトたちの目、彼の次に見える私の呆れ顔。

笑う蒼生。

 

次の瞬間、私の頭に雷が走り二つの人生が一気にフラッシュバックしていく。

人をゴミのように見る私。人を恐れて逃げて、隠れて、殺して敵とみなすわたし。

青のことを軽視する私。青以外のものを全て軽視するわたし。

私以外の人間は下等なクズだと笑う私。わたしが最も下等であると自分を嘲笑するわたし。

全ての歯車が、頭の中で記憶と共にガコンガコンと組み合わさっていく。

残酷に、でも確実に噛み合っていって、私は全てを理解した。

 

 

 

 

私は教室に迷い込んだちっぽけな蜘蛛だったんだ。

そしてそんな蜘蛛を、本来ならば巨大な人間たちに勝手に殺されているであろうちっぽけな蜘蛛を、クラスメイトなんかよりも全然大切にし続けた蒼生。

ああそうか、そうか、そうだよな。

青も私も、魂のレベルは等しく愚かだったんだ。

私は蜘蛛で、彼は人間を捨ててそれに合わせていたから、私と彼は2人で蜘蛛になった。

 

彼と私は、最初からこの目の前の化け物と同じくらいに狂っていたんだ。

 

 

 

 

「おい、おい、聞いてるか?」

「ああごめん、どしたの?」

「テメーが寝てんのは不都合だからな、叩き起こした。

 何より泣きながら寝てんのは気分がわりぃ、泣くんならオレ様の目の前で泣け」

 

目の前にいつの間にか電脳が立っていた。

と言うか私泣いていたのか、驚き。

 

「テメーが泣いてる理由当ててやる。

 自分の存在を初めて理解した、OK?

 それで自分がどうすればいいのかわからなくなってるんだろ」

「いや、その、わかんない」

「あー、まあとりあえずオレ様の話を聞け。

 テメーが蜘蛛であること、それをオレ様と青が認識したのは2年前だ」

「は?」

 

思わずすごい声が出た。

でも、理解出来ない。

なんで私がついさっき知ったことをコイツらは2年前から知ってるんだ。

どうやって?

 

「あー、理解出来ねぇって顔をしてんな?電脳舐めんな。

 名前がねーこととか、テメーの家族構成、クラスメイトへの記憶がバグみてーな挙動してたかんな、それで推測した」

「それだけでいけるの?」

「まあオレ様も確証なかったが。Dに会った時点で確定したが」

 

やっぱ化け物だなこいつ。

私のことを確実に私より知っている。

あれ、じゃあ青も私のことをより知ってるってことか?

ええと、それはなんか少しだけ嫌な気がするな。怖い。

 

「だからまあポジティブにいけ、どんなことをしてもテメーはテメーだ。

 今のお前があの蜘蛛とDのキメラだとしたって関係ねぇ。それを知ったところで、たとえお前がそれを言いふらしたところでいつも通り接するからな。

 みんなみんなそうすんだろ。

 何があろうと、何が起きようと、人は変らねぇ」

 

うん、そうだ。

やっぱりそうだ。

いつもなら私はこんなことを言われたら、そりゃそうだろうと言って普通に流したはずだ。

だけれど今日の私はどこか敏感だったのか、その言葉を受け止めたくなかった。

電脳の声色に、諦めたような声に、私は反応せざるを得なかった。

 

「電脳」

「なんだ?」

「人は変わるよ」

「いや、変わんねぇな。

 死んでも変わんねぇ」

「変わる」

「変わんねぇよ」

「変わる」

「なにが言いたい」

 

こちらを見下げる電脳の睨みつけるような目に思わず怯む。

けれど伝えなければいけない。

彼が壊れる前に、壊れきってしまう前に。

 

「だから、だから。

 自分を殺さないで……」

「……ああそう、オレ様のことはオレ様がいちばんわぁーてる、安心しろ」

「待って!」

 

私の言葉はスッと青い空間に消えた電脳には届かなかった。

無虚空間だから、彼の住処に等しい工場へとワープでもしたのだろう、そう思うしかない。

けれどそれがわかっていても身体はまともに動かせない、足が動かない、立てない。

彼の心は、彼女の心は、もう壊れてしまっていた。

呆然として、彼のいなくなった空間を見つめる。

 

 

なぜ私は今まで気づかなかったのか。

彼の、彼女のこの一年はなにがおかしかったのか。

地球に何回も行って、前世のことを全部処理してきたと言っていた彼は、そこでなにを知ってしまったのか。

なんで心を壊さなきゃいけなかったのか。

人の記憶に蜘蛛の心を持った私は、私は未だそれを理解することが出来ない。

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