バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

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138 対神頭脳戦

食事の後、オレ様はテントに全員を集め、真ん中に置いたちゃぶ台を囲わせた。

ちなみにさっき魔力を一気に使い果たしてぶっ倒れたゼルギズは横で目だけ開けてこちらを見ている。

まあ話すことはできるだろうし、そもそも勝手に回復するだろうからほっといてもなんの問題もない。

 

「で、話ってなに?

 明日も言っとくけど結構歩くからね?早めにして欲しいな」

 

魔王がキレかけている。

いや、オレ様が無理して戦ってるからそれでキレてるんだろうけど、あれはマジで放置しても偵察されて後々厄介になるから処理するしかなかったんだよ。

そもそもオレ様以外が処理出来ないだろ。

 

「あー、まず今回の話についてだがな、なんかDがちょっかい仕掛けてきたっぽい!」

「「は?」」

 

ゼルギズと魔王が同時に声を出し、ソフィアとメラゾフィスはため息をついた。

でも、白は黙って顎に手を当ててなにかを考えていた。

やっぱり何かおかしさを感じる。なにかやられてるよな。

 

「というわけで、ギュリエに連絡することも考えたんだが。

 まずは張本人に聞いてみるっていうのが一番楽に済むと思うんで、電話します!」

 

プルルルル………。

無虚空間の中から取り出した電話がすでに音を鳴らし始めているのを見て、全員が青ざめた。

うーん、もう無理だろこれだって。

先に聞いとかないと、てか本人の助けがないと多分詰むぞ。

 

「どうしました?電脳。

 あなたから電話してきたことありましたっけ?というか出来たんですか?」

「あ、Gフリートで電話してきたの逆探査しちゃった!てへぺろ!

 で、今回の勝利条件ってなんだ?」

「勝利条件ですか……。

 わざわざ提示させる必要ないと思いますよ。

 あなたが全部知ってしまえばあなたの勝ちが確定します」

 

淡々と話すDの声色から、嘘をついているわけではないとオレ様は断定する。

おそらくこちらも脅威として見られているだろうから隠している可能性もあるが。

やつもなかなかきつい戦いを挑んできたらしい。

 

「りょーかい、てか勝てる気がするわ全然。

 今日中に全部終わらせるから、さっさと仕事終わらせといてくれ。

 全部わかったらまた電話する」

「楽しみに、ではないですが……。

 結果が出るのを待っていますよ」

 

ツー,ツー,ツー。

切れた電話を無虚空間にしまい、オレ様は皆の方に向き直る。

同時に一斉に溜息を吐かれたが、もう起きちまってるんだ、仕方がないだろ。

「ってかなにがどうなって……」

「そもそもどうして……」

「どういうわけ………」

 

待て待て待て。

その理由を知ってたらこうはなってないんだよ!

なんとか宥めすかして,やっと頭脳戦は始まった。

 

 

 

 

 

 

「まず、今の電話でDの関与は既に証明されている。

 だから逆算して考えるぞ。

 オレ様があらかじめ想定している事象は四つ。

 1、人物の発生による異常の発生。

 2、人物の消滅による異常の発生。

 3、事象の発生による異常の発生。

 4、事象の消滅による異常の発生だ。

 ここまで何か気になることはあるか?」

「ギュリエは呼ばなくていいの?役に立つはずだよ、あいつも」

 

魔王の一言に、確かにとギュリエにも連絡を繋ぐ。

すると、馬鹿げてるのかと愚痴を吐きながらもすぐに転移してきてくれた。

こちとら頑張っとるんじゃい、アンタも手伝え。

 

「で、今回はなにをやらかしたんだ?」

「Dに情報戦仕掛けられた。

 消滅か発生を起こされたあとに、記憶を改竄されたっぽい」

 

 

ギュリエは天を仰ぎ,そしてからうなだれ、膝から崩れ落ちて頭を抱えた。

だよな、Dに戦争仕掛けられたとか笑えないよな。

だって普通圧殺されるだけだし。

 

「概要は把握した。

 最悪奴と話くらいはしてやるが、直接なにかやれというのは勘弁だ」

「大丈夫だ。いくらテメーがDと繋がってると言っても、戦わせねぇよ。

 情報が欲しいだけだ」

 

ギュリエはそのままちゃぶ台につき、肘を乗せて思いっきり頬杖をついてきた。

うーむ、オレ様なにかをやらかしたと思われている、誠に信用がない。遺憾である。

ともかく、

 

「なにかを生み出されたり消されたりってのは想定出来たんだが、記憶の改竄までされたのが厄介だ。

 ここまでされるとオレ様の手に負えない、てっことでお前らに協力を仰いだ。

 まず、これから記憶の擦り合わせをしたい。それに違いがあれば、今あげた四つのうちどれかの同定ができる

 オレ様から話そう」

 

オレ様は話す。蜘蛛になってから、白を助け続け、そして神に近い力を得てGフリートを破壊し今に至ったことを。

それを無言で聞いていたソフィアが、静かに手を上げる。

 

「白のことそんなに好きなの?」

 

だよな、それはオレ様もそう思ってる。皆も同じことを考えていた様で、珍しくゼルギズですら考える顔になっている。

そりゃそうだ、我ながら言ってしまうが、ここまで助けるほど白を愛してはいないし、お人好しではない。

その疑問を白はどう思ってる?

それを察したのか、白も話し出す。

 

「わたし、同意。

 電脳からは愛情を感じない」

 

思ったよりもはっきり言われたからダメージはあるが、事実だ。

となると選択肢は、自動的に二つに絞られる。

 

「事象の消滅、または人物の消滅、か」

「待て待て待て。どうしてその二つになった?

 確かにわかるが、なにかが増えてそう記憶が改竄されたという可能性はないのか?」

 

ゼルギズが後ろから片腕を動かしてこちらの肩を掴んで来た。

いやまあ、それももちろん考えている。

 

「今回の件についてだが、想像以上にDの介入が弱い。

 上位神なら潰せるであろうアラがそのまま残っている。

 となると、これからも厄ネタ,つまり齟齬部分が大量に湧き出てくるはずだ。

 そこまで考えた時、なにかを生み出して発生する齟齬よりもなにかを消した時に発生する齟齬の方が多くなりやすいと推定した。

 ひとまずがそれの理由だ。

 まあ、お前がおそらく考えてるであろう何かが愛を与えた説、または白を守るだけの事象があったという想定も多分あっている」

 

ゼルギズがすごすごと引き下がり、手を元の位置に下ろす。

いやありがたいんだぞ、そうやって聞いてきてくれることでオレ様も考えをまとめられるわけだし。

決していらない子じゃない、マジでバンバン喋ってくれ。

 

 

 

 

そして、他のみんなも自身の記憶のついて話してくれた。

すると、大量の齟齬が出るわ出るわ。

かといっても大半は白に対するオレ様の異常な執着だったが、純粋におかしな部分も一部見受けられた。

 

その魔王の発言を要約すればこうだ。

 

「私と本気でドンパチやったとき、最初は全力で殺そうとしてきたけど急に認めてきた。

 しかもその後なんか勝手にステージを作って歌を歌ってたんだよ」

 

我ながらドン引きである。

情緒不安定すぎて終わっている。

なにより、歌を歌ったとか頭おかしいんじゃないか。確かにオレ様の記憶にもそれはあるが、なぜかマイルドに記憶されていて全然印象に残っていなかった。

だっておかしいだろ。

最初は白を傷つけたことにガチギレして襲い掛かり、それなのに頭を一度破壊された後はその実力を認めて許す方向,生かす方向へと移動した。

そしてそれを終えたのちには訳のわからないステージを幻夢で作り出してまで歌っていたらしい。

馬鹿げている。

 

「あの時、あの愛の歌に私は心を動かされたんだ。

 全てを取りこぼさない様にしていた私から、なにかを失ってでも本当に大切なものを守れる様に足を踏み出せる私になった。

 電脳にはいつも呆れてるけど、そのことには本当に感謝している」

 

おかしい。

俺は、オレ様はここまでの愛を込めて歌にはしない。

そもそも愛の力などわからない。

でも歌うのだ、歌っていたのだ、記憶の中のオレ様と魔王の記憶の中のオレ様が。

死に物狂いで。

スポットライトの中、大量の舞い踊る闇と光の中、私は歌っていた。

 

 

 

 

「えー……、じゃあ一つに絞られるのか……?

 オレ様の肉体の中にいるもう一人の生命体が白に強い愛を持っていて、それによって白は守られ続けたり、愛の歌を歌ったりということか?

 そしたらそもそも体内に二重人格を住まわせてたことになるんだが……、それは起こりうるのか?」

「起こりうると思う」

 

白は静かに口を開く。

 

「叡智はもう私にはない、でも。

 叡智の存在、私、擬似の人格、勘違い可能」

「本当か?」

「理論的には」

 

参ったな……。

となると、オレ様が今度は生命的に後から生まれた付属物になってしまう。

だって電脳だ。

名前から考えるにスキルとして生まれた可能性が高い。

そんなオレ様に存在意義はあるのか?

主人の消滅まで導いてしまうオレ様に生きている意味はあるのか?

あ、気づいた。そうだったんだ。

 

「そうか、オレ様は、自分を誇張して呼ぶことで自身の存在を自分で許していたんだな。

 オレ様は、俺だったんだ、元来」

「電脳?」

「いや、そうだ。

 俺は俺だった。俺が過去を認められずにいたのが、オレ様を構成して、電脳の精神部分を構成していたんだな」

「電脳」

「確かにそうだ。

 俺は、佐野蒼生のかけらだったんだな。この俺ですら」

「電脳!」

 

ゴン。

後ろから頭を白にぶっ叩かれ、ちゃぶ台に頭をぶつけそうになる。

あー、そうだ。

ジェラシーは俺には似合うが、神としちゃあ似合わないな。

 

白は静かに俺を睨んでいた。

早く話を進めて欲しそうにしていた。

そうか。ソイツ、本当に白に愛を与えてたのか。

欲しがってる、白がその愛を。

いままさにこの瞬間。

俺はなにであるか、なにであったかなんて関係ない。

俺たちがいま必要なのは、ソイツだ。

 

「俺の主人を存在Aと仮定する。

 そして龍を急に集めるのを最初に考えたのは、おそらく存在Aだ。

 MAエネルギーを一気に集めることで急拵えながらDに対抗するための力を得ようとしたんだろう。

 じゃあなんでDがここまで仕掛けてきた?アルセウスの関与があるんだから神が原生生物になにかしたら罰ーー」

 

そういうことか。

たどり着いた。

正解に。

ここまで、ここまでたどり着いた。

 

「全部の鍵があった。

 具体的にはGフリートのコアを白が吸収した後、俺たちが地上に降り立つまでの時間だ。

 そこで俺たちは神、Dに喧嘩を売った。

 それと同時に白の神化が発生した!」

 

「となると、神化が起きて、尚且つDとの接触する可能性があって、この記憶消去をDが知られたら罰が生じるということは……、

 会ったな。Dと。

 神と話す理由、このタイミング……。

 白の生誕顕現祭か!」

 

「じゃあ、俺たちに最後に必要な人物は……、アイツか」

 

 

俺の脳裏に一人の人物が浮かび上がる。

全てをソイツに伝えればチェックメイト、俺たちの勝ちだ。





思考★未来★Aビューティフルスター
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