「白、本当に平気?
護衛サエルだけで。
部屋居たいよね?
プロテクトかクイーン置いてった方がいい?」
「流石に心配性だよ、青。
そもそも白ちゃんだって成人男性くらいは戦えるんだから。
言っとくけど、パペットタラテクトだって上位の龍くらいの強さあるんだからね?」
「私は平気。
買い物行ってきて」
そのまま私は、魔王に背中を押されて宿の部屋を出た。
そして袋に入った龍煎餅をバリバリ食べ歩きながら考える。
さて、最初は白に言われた通り買い物かな。
魔王と別れ,ソフィアを連れて商店の方へ。
ちなみに魔王はメラゾフィスと冒険者ギルドの方へ向かった。というのもこれから山を登るから、それについての情報収集らしい。
最悪、私がいるんだから山を平らにすればいいと思うんだけどね。それでも無理なら星を更地にしちゃえばいい。
「というか、街ではやっぱりそれ食べないでよ……。
ギュリエさんの上司でしょ、食ってるの……。
純粋に怖いよ……」
隣のソフィアにめっちゃ引かれている。
そもそも人聞きが悪い、上司とか言ってるけどトカゲだぞ?ただ少し人に化けられるだけの。
それを呼び寄せてたらいっぱい来るようになったから、無虚空間で煎餅に加工して食べられるようにしたって程度のことだ。だのに私以外には不評なのが気に食わん。
冥土とかキラ、アルセウスは美味そうに食ってたんだけどね。ただ魔力増強になっちゃうからDにはあげなかった。魔王とギュリエにも勧めたんだけど、魔王は食べたら全身が光りだしたから吐き出させたし、ギュリエにはただドン引きされた。魔力増強には絶対効果ある。みんな食べよう。
「あ、食べる?ソフィアも。
多分めっちゃ魔力増えるよ?」
「冗談でもやめて、天使様。
魔力量多すぎて爆発しちゃう」
いてっ。
なかなかの強さでどつかれた。
でもやっぱりいいね、天使様って呼ばれるの。白あだ名つける才能あるよ。
バリボリと食べながら、見つけた商店に入って食べ物を吟味する。
うーん、でも品数が少ないな……。
最近の鬼騒ぎか?
「あ、お姉さん、最近ここら辺の山に鬼って出てます?」
「お姉さんなんて嬉しいねぇ、こんな老いぼれに。
そうだね、最近は鬼が出ちゃってねぇ。それで街道が封鎖されちまってるんだよ。
店のものが少ないのもそのせいさ。
全く困っちゃうね」
「その通りですよ、ほんと……。
どうする?ソフィアちゃん。
私の作るもの食べたい?」
「いや、ちょっと、ね……」
ソフィアが返答に困りながら首を振ったのを見て、店主のおばあちゃんの目が鋭くなる。
まずい、私が虐待親だと思われてしまうかもしれない。
断じてそんなものは食べさせておりません!
「いやですね、あのですね?
いつも私が料理してるわけではないんですよ……。
でもですね、旅をしている身であって、私が作る乾物があまりまだ子供の口に合わないらしくて……。
それで、食べてもらうしかない場合、ちょっと申し訳なくて……」
そんなことを申し訳なさげに言ったら、今度はソフィアの方へ鋭い視線が走る。
おーいこれ、どうすりゃいいの!?
無限ループ入ってない!?
「そうかそうか、そういうことなのかい。
なら、私が作ったこれをあげよう。
また来るんじゃぞ」
そう言うと、そのおばさんは魚の干物を持ってきて、ソフィアの手の中に乗せてくれた。
この山の中、海が大陸横断レベルでない山の中である。
いや、嬉しいし、美味しそうだけど、それおばあちゃん死んじゃうって。
栄養とってくれ。
「じゃあ……。
ちょっと海の肉あげます、よければどうぞ。
スキルの関係で腐ってはないしめっちゃ新鮮です。
みんなで食べてください」
無虚空間から水竜の肉を五キロほど取り出し遠慮するおばあちゃんの両手に乗せてお辞儀をする。
水竜とは言えなかった、おそらく引かれる。
人間だと勇者でさえ龍と戦うには死を覚悟するレベルなんだ。言えるわけがない。
そんなこんなで、私たちは何も買わずにいそいそと店から退散することとなった。
「さて、困ったね。
肉はいくらでも取ってこれるけど、転移しなきゃだしなぁ……。
鬼の方処理してもしばらくは入荷されないだろうし」
「転移してよ、別になんの問題もないんだから」
「そもそもこの世界あんまり美味しい食材ないんだって」
はい、地球に戻れます。
全然戻ってお肉買ってお野菜買ってお鍋囲んで美味しく食べられます。
けどそれするとみんな地球のものしか食べなくなっちゃうじゃん。
だから舌肥やさないよう私は滋養に効くやつばっかり作ってるんだよ。
「いや、そうだけど、そうだけどさ……。
味って大事だよ?」
「宇宙産の龍食べよう。美味しいよ」
「光って爆散するんだって私ら!」
本気でどつかれる。
いいじゃんか、白が神になったのも多分同じ手順だぞ。
そんなことを考えながら、料理のネタを思い浮かべて歩いていた最中だった。
「佐野くん!!根岸ちゃん!!」
エルフの子供が路地から飛び出し右手で私の腕を掴む。
ソフィアは左手で掴まれる前に振り払って、氷魔法の魔法陣を展開。
あ、まずいなこれ。
路地裏で頭を抱えるポティマスを見つけて、同時に私も心の中で頭を抱える。
ちゃんとしとけよポティマス、だけどもう時間がない。
エルフは手を離さないし、ソフィアの魔法が突き刺されば人間は基本死ぬ。
ヤバい!襲撃者が危ない!
「「転移!!」」
ポティマスが走ってきてエルフの頭をつかんだのと、私が叫んだのは同時だった。
圧倒的な魔力と圧倒的な技量の間で、ポティマスと私の間で転移の綱引きが発生する。
私と魔王の激突から3年経ったことで溜まりに溜まった世界の二台巨頭の魔力の爆発が、ごく当たり前の路地で発生する。
そしてその綱はエルフの子供。
下手しなくても次元で捩じ切れる!!
「亜空切断!!」
私は腕を光らせ、多角形状になるよう目を動かす。
空間に白い線が走り、やがてそれは多角形に空間を切り落とし、パリンと鏡のように割れ落ちる。
そして、切られた空間は割れ、地面へと落ちて砕けた。
「え……?」
路地にソフィアをただ一人残し、いつもの街の日常が始まる。
「はぁー、20秒で終わりにするから、さっさと帰れ」
「言われなくてもそうする」
無虚空間にて。
私たちは気を失ったエルフの子供を囲って話していた。
まあ、私もこの子の見当はついているんだけどね。
「お前がエルフの子供、こっちの世界だと先生だったか?を勝手に利用するのはいいんだが、ちゃんと管理しとけよ。
俺らのところ行くの無理あるって考えりゃわかるだろ」
「わかっている。
生徒を救いたいとかほざく餓鬼は想像もしない思考回路で動くのだ。これだから実験施設の中に閉じ込めておきたいのだがな」
「人権!人権!
この世界にはないだろうが、人を操りたいなら考えた方がいいぞ。
考えないだろうが。
で、なんで来たんだ?ソフィア連れ去るつもりだった?」
「ああ。この餓鬼に押し切られてな。エルフの里に保護するつもりだった」
「やめときな。私が行くよ。
となるとエルフの里終わるよ?今私、サリエルより強くなってんだから。最近龍増えてさ」
「はぁ……」
ポティマスも眉間に手を当ててため息をついている。
おそらく、ポティマスもポティマスでこの誘拐についてあまり乗り気でないのだろう。
極論言っちゃえば私が神化の石をあげれば神化出来ちゃうわけだし、それが無理でも私を取り込めば神化できるわけで。
要は、サブプランのサブプランで転生者を誘拐して後で融解してエネルギーにしようとしてるわけだ。サブプランの割にはリスクがデカすぎる。
だって私が敵になりかねないじゃん。
「はぁー、とりま、路地裏に返すからさ。
また転移してくんね?
ソフィアにバレると面倒なんだわ、もう手遅れだけどさ。
あと学校の人間は連れてってもいいから俺らに関わんな。
いちいちめんどくさい」
「了解した。失礼した」
違う路地裏に開放すると同時に、先生を抱えてすぐに転移するポティマス。
ああ大人になって……、私嬉しいよ。
ちゃんと失礼したって言えるようになったんだね……。
毎回愚痴ったおかげかな……。
そのあと。
宿で、ソフィアですら振り払えたのに私は反応できずに掴まれたということで、魔王と白にめちゃくちゃ絞られた。
あと急に消えたことはもっと絞られた。
ポティマスについてはどっかに吹っ飛んで消えたということで誤魔化した。
あれ分体だし、私より弱いんだから宇宙の彼方に時空跳ね飛ばしていったって言っても信じるでしょ。
先生については、まぁ、ね?
忘れてくれ。
高評価、感想よろしくお願いします。