違いは同化へと。
「魔族領、着いたぞー!!」
「変わんないのねー、残念」
「こらソフィア、だまらっしゃい」
私たちは、あの後氷龍に謝ってから、なんの心配もなく魔族領に到着した。
ただ、ソフィアにとっては拍子抜けだったようでガッカリしている。
そりゃそうだ、私も魔族の見た目が人間と全く変わらなくてショック受けたもんね。
「魔族というのは単一の種族だよ。言ってしまえば人間やエルフと同じ。
ま、エルフはあのクソ男が作ったってもんだから全然人為的な生命体だけどね」
というわけで、どこぞのラノベみたいにリザードマンとかゴブリンとかオークが街を形成しているわけではないらしい。
どうせならそれも面白いとは思うんだけどね、この星の生命体に私もあんまり関与したいわけじゃないし、内乱もそっちの方が起きやすそうだし。おそらく元はそうだったんだろう、年を経るごとに魔族以外が蹂躙されただけで。
「青ちゃん、まさか色んな種族ぶっ込んだ方が面白いとか思ってないよね?」
「思ってないですよー」
魔王にジト目をされて、口笛を吹きながらそっぽを向くふりをする。
知っている、これだけの平穏に魔族領が至るまでどれほどの人民が消え失せたのかを。
『僕はどうするんですか?』
『お前は強いから魔王城に着いてから詳しく考えよう、OK?』
ゼルギズと鬼くんには無虚空間に引きこもってもらっている。
ソフィアが一日一回くらい突っ込んで戦いに行くから空間内が荒れるのが癪だけど、ストレス発散として鬼くんが加わったのはよかった。
というかソフィアが戦闘狂すぎる。
吸血鬼の本能からなのか、ずっと戦いたい欲に駆られているようなのだ。オールウェイズ戦闘狂。
「魔王、こっから魔王城までは?」
「安心して、白ちゃん。こっからは後一年で着くよ」
えー。
私と白の思惑が一致したのか、二人で嫌な顔をする。
魔族領に着いたらある程度終わりだと思ってたんですけど、こっから一年かかるんすねー。
そりゃ領土の境目に城があるなんてことは思わないけど、純粋に長い。
「ゆっくり歩いてこう」
「「あーい」」
不満たらたらだけど、しょうがないよね。
「電脳、どんな状態?今。
ポケモンの動態は今どうなってる?」
「あー、最悪って訳じゃねぇが、だいぶまずい。
そろそろエルロー大迷宮を支配されそうだ」
無虚空間内。
私は、その中にあるラボで電脳と話していた。
ちなみに外の私も普通に思考はできるから、体内と体外で分身してるってのがいい表現だろう。
私は最近ずっと気になっていることがあった。
それは今のポケモンたちの動向だ。
昔戦ったグラードンはともかく、魔王もレックウザと交戦して殺しきれなかったことがあるらしい。
彼らは伝説のポケモンだからまだ増えることはないんだけど、一般のポケモンはいくらでも増えるし生態系を壊せる。
とは言ってもオリジン同士では場所の把握がある程度出来るし、オリジン同士の生存競争で潰しあってくれることを願ってたんだけど……。
「まさかオリジン同士で共同戦線を組んでくるとは」
「ちょっと想定外だね、こっちもクイーンエレテクトで少しだけは間引いてるけど限界はある。
竜程度なら薙ぎ倒せる戦力を持っちゃったのがまずい」
かと言って、これ以上のスピードで間引くことはできない。
それをやってしまうとポケモンを定着させてみたがってるアルセウスにマジ注意される恐れがあるからだ。
注意といえど、相手は最高神。この星に二度と干渉するなとかめちゃくちゃ重いペナルティがありうる。
これだから宇宙を創造できるやつは……。
「で、これから先はどうなりそう?」
「近々戦争が発生するぞ。
ポケモンが引き金の戦争だ」
え、マジ?
いや、薄々予想はしてたけどマジで起きる?
それ被害どうなる?
マジかよ、これ私がDに戦争ふっかける前に起きるな。
「今はまだエルロー大迷宮内にポケモンを留めてるから何の大ごとにもなっていないが、逆に言ってしまえば出てくれば大戦争になってしまうほどの量がもうすでに詰まっている。
そしてポケモン、されどポケモンだ。
知能レベルは下手な魔物よりよっぽど高い。人間を襲った方が食糧としての効率がいいことはすぐに気づく。
人族滅びるぞ?」
まじかー。人族滅びるっていっても、そうなったらそのあとは魔族領を滅ぼしにかかってくるよな。
となると結局全て滅びてポケモンの更地となるわけで。
侵略的外来種すぎるだろ。
「で、どーすんのよこれ」
「いやーマジでどうしよう。まず、アルセウスの方に打診かけて、ギュリエに打診かけて……、そっから……」
まずいまずいまずい。
全然これからも時間ないかもしれん。
というかこれ借りになっちゃうけどポティマスにも打診かけないとやばいな。
ポケモンの群れとか、エンドレスエイプの100倍死ねる。
しかもまだ一番やばいところが残っている。
「伝説、どうする?」
「どうするって言っても……」
私がグラードンをワンパンした時は、私もまだこの世界の生き物って言えば納得してもらえるレベルだった。
だからアルセウスにも何にも言われてなかったと思うんだけど……。
「今あれやったら絶対文句言われるよね」
「ああ。言われるな」
なにより、私は瞬殺してしまった。
それは彼らと私の力量がかけ離れていること、つまり他のポケモンとやっても瞬殺できることを意味する。
これがマズった。
「電脳、私この戦争参加できると思う?」
「無理だろ」
「ですよねー」
圧倒的な個が戦争に参加したところで、蹂躙するのは目に見えている。
それは面白くない。
そして神どもの行動原理は面白いか面白くないか。
つまりどんな手段を用いてでもアルセウスは戦争に私を参加させないだろう。
「ポティマスならいけるか……?」
「いけるけど、魔王殺されねぇか?」
「うげー」
私が戦争中動けないとなると、確実にやられるな。
神化の石を私から渡されなくなることを恐れて辞めてくれればいいが、相手はポティマスだ。
そんなに頭良くない、絶対やる。
「そこまでに白を魔王以上くらいに強化して、鬼くんとソフィアを仕上げて、クイーン量産して、ポティマスに抗うか?
それともポティマスを戦争に参加させないようあらかじめ手を回すか。
どっちがいいと思う?」
「前者。
ポティマスが参加しねぇと勝てねぇぞ、これ。
ポケモン舐めんな」
マジかよ。
いやー、私も元は言えばポケモンだもんね。その可能性は自分が一番よくわかっている。
「我はどうなるだろうか?」
「いや無理だろ、お前も観戦組だ」
電脳はラボに顔だけ出してきたゼルギズにそう吐いて、ため息を吐く。
サイズ可変のマグマ龍が戦争に参加できるわけがない、伝説でも1発で死ぬ。
それにギュリエも戦争には参加できないだろう、となるとマジで今弱い人たちを鍛えなければポティマスに全て破壊される。
「あと何年持つ?」
「まだしばらくは持つ、多分俺が今まで生きてきた年数以上には」
「了解」
思わず苦虫を噛み潰したような顔をして、私は思考する。
やばいな、これ。
ポケモンとポティマスとDと龍とサリエルと人族とギュリエ、連戦になるかもしれない。
私が想定していたDとの戦争の予定はあと8 年くらいあとの話だからだ。おそらくほぼ同時期に来る。
私についての分析は自分自身でできているし、それを考えれば誰が相手になってくるかも想定ができる。
その上で全部ひっくり返さなきゃいけない。
うん、やばい、やばい。
けど準備はできるはずだ。
今までの4年で、私はとっくのとうに準備を始めている。
Dにも布石は打ってるし、冥土にも既にとんでもない地雷をぶつけて破壊している。
キラにもダメージは与えた。龍なんか、もう最近は毎日食っている。
アルセウスとはなんかおじいちゃんと孫に近い関係性を構築できてるし、害を与えなければいける。
うん負け試合じゃない。
私は口角を上げて、その体に普通の人には見えない底なしの暗黒を湛えながら笑う。
いいね、最高に
生きるための娯楽。
冥土にぶつけた地雷やDへの布石はまた過去編で。
高評価、感想よろしくお願いします。