あれから、さらに1年が経った。
時が経つの早いと思うよね、私も思う。
けれど、時が早く経ってしまうことは、自身が長く生きているということを示す。
人間の時間感覚は積分で表せてしまうからだ。
長く生きていけば生きるほど、時間は加速していく。
それを考えると、やはりキラやアルセウスはすごいなと思えた。
だって、あんなに長く生きているのに人間と同じゲームで楽しむということが出来ているんだもん。
少し違うか、人間と関わることに楽しみを見出しているんだもん。
でもどうなんだ、蟻さんのように触れ合って楽しむのは人間を個体としては扱っていないから違うのだろうか。
それならDもだもんな。
あー、でもDよりはまだ2人の方が人間を倫理観持って扱ってるんだよな。
単純に優しいってことなんだろうか。
「青ちゃん、なにボケーとした顔してるの?
あれ魔王城だよ、わかる?」
魔王に肩を叩かれて、ハッと意識を戻す。
あ、魔王城だ。やっぱりいつ見ても、魔王城ってよりかはデ◯ズニーのシンデレラ城だよねー。それかドイツの吸血鬼のお城。
『ノイシュヴァンシュタイン城な』
電脳、感謝感謝。
でも別に感動ないしなぁー。
もうこの道覚えてるし。この城下町に転移で買い物、三桁台来てるし。
いや、綺麗だとは思ってますよ?うん、とっても。
「でも、城下町まで来てるのに魔王も目立ってないのは驚いた」
話を逸らすために、私はとりあえず言ってみる。
けど実際魔王様とか言ってくる人がいないのは正直びっくりしている。
有名じゃないの?
「私は最近は誰かのおかげでセコセコと飛び回ってて仕事してないからね。
そもそも私が魔王になったのつい最近だし」
おーう、お疲れ様です。
私は悪くないからな!言っとくけどこっち、2人とも1回はアンタに殺されかけてるからな。
「で、ここまで来たわけだけど。
ソフィアちゃんには学校に通ってもらいます!」
『学校ってなんだ?』
『社会について勉強するところ』
『なるほど!我も後学のために通ってみたいものだな!
龍として生きていくためには神社会も知らなきゃならんだろう!』
おい待て体内の奴ら黙って。特にゼルギズ、アンタは学校知らないと思うけどスーパードラゴン混じってたらよくないから。ちょっともちつけ。
「学校、ですか?」
「うん、学校です」
アリエルの宣言に、私はため息をつく。
いや、大丈夫だと思うが5歳に精神年齢20歳くらいの人が混ざっていいのか?
ブラックジャックじゃあるまいし。
「ソフィアが大丈夫ならいいと思うよ。
なにより、色々調べてるとこの星と地球の物理法則結構違うし。
それに考え方も違うだろうから知っておいて損はないと思う」
「と、青ちゃんは言ってるけど、実際はコネ作りだね。
もちろん勉強に意味はあるけど、おそらくソフィアちゃんたちが生きてきた世界と比べてこの世界は貴族社会なんだよ。
まーだから結局思考を学べって感じかな?」
それ、結局拒否権ないよな?
白の方に目配せすると、白も白でこちらにジト目で目配せしていた。
意見合致してる。
「はい、では学校に行きます」
ソフィアは少し考えたのちにそう言った。
魔王の目を見据えて、まっすぐな目で。
すごいな、20歳なのに5歳の中に混じる決断をするなんて。
あー、私も5歳なんだよなー。
過去全部捨てなきゃ。
「オッケー!いいね!
じゃ、メラゾフィス、私の下で働いてね」
「「え?」」
魔王に言われて、2人の声が丸かぶりする。
そうだねー、そろそろソフィアも独り立ちかー。
私感動。
「ま、独り立ちってことではなくてねー。
貴族以外が従者を連れて学校に通うのは難しいから、納得して欲しいな。
現実は非情ってことで」
「天使様は逃しませんぞー!」
私が後ろから抱きしめて、ぎゅっと圧をかける。
学校行くのやめるとか言うなよの圧だ。
ソフィアもソフィアで、同郷のやつが奇行に走ったおかげで踏みとどまってくれた。
まだ覚悟も決まってないしちょっと辛そうな顔だけど、しょうがない。
メラゾフィスは覚悟決めてるみたい、さすがだね。
『ライナー、お前さぁ………疲れてんだよ………』
『いいや、限界だ、言うね!』
『ライナー……やるんだな!?今……!ここで!』
『あぁ!!勝負は今!!ここで決める!!』
ーー同郷のやつの奇行とか思い浮かべてたからか、体内でゼルギズと電脳が奇行に走っている。
ちなみにライナーと言ってる方が電脳で、勝負を今ここで決めるらしいのがゼルギズだ。
念の為に言っておくが、Dがいる方の地球に漫画『進撃の巨人』はあれど現実にはライナーはいない。
なんだこいつら。
「どしたんお前ら」
『我も、学校行きたい』
「は?」
えー、マジですか?
「ゼルギズが学校行きたいと言っても……、うーん」
今私たちは、絶賛城の前で考えていた。
内容は、ゼルギズの通学について。
正直な話、通う意味がない。そして通う意味がないからこそなんで通わせるんだ?と言う感じだ。
「確かに魔族側の学校の方がいろんな種族はいるよ?
でも彼神様じゃん。龍じゃん。
それ、凄いことにならない?」
同意。
けど、ゼルギズもだからって行かせないのはなんか可哀想だ。
精神年齢は私より上だけど、だからこそ今まで何かをしたいって私たちを困らせるほど主張してくることはなかった。
それこそ始めてのわがままってことで私も出来るだけ手伝いたい。
「青ちゃんの方でなんか出来ないの?」
「いやー、うーん。
あ、いけるわ」
思いついた。
学校についてはツテとあてがあった。
少し難しいけどゴリ押せばいけるはずだ。
なにより、少なくとも魔王には迷惑をかけない。
「なら平気だけど……。
何やるか想像つくし、大騒ぎにはならないように注意してね……?」
「善処する」
言ってしまえば、善処しか出来ない。
だけど善処はできるし、する。
それこそ、社会で生きていくために必要なことだと思うから。
「ポティマス、後ろ盾になってくれないか」
「却下だ」
「まだ何も言ってないんだが……」
エルフの里研究所。
電脳をこっちの世界に出して、その代わり私は体内に入って交渉をしてもらっている。
もちろんポが協力してくれるとは思ってないから情報収集と言う色が強いけど。
「青とゼルギズが学校に行きたいみてぇだ。
人族の学校に行く。
そんなとき、一応人族ではお前は顔を立てられるだろ。
それを頼んでる」
「それはそうだが、それはお前のためではない。
私が動きやすくするためだ。
それに、学校にはこっちからもガキを1人入れるつもりだからな。
いくら私といえど、複数人の後ろ盾になるようなバカな真似はしない。
青とやらには理解できないかもだが、貴様にはわかるだろう?」
そうそう、ポティマスって色々資金援助してるから人族では顔が広い……って、エルフのガキを学校に入れる!?
それはだいぶでかい情報だぞ、ありがとう電脳!
となると、考えられる人間は1人。
「先生だろうね」
「そうだな。
それ以外にやる意味が薄い。
それに先生なら生徒を預かっているからそれを人質に自由に動かせる。
ポティマスとしては便利な駒限りないしな」
まーあ、先生を助ける気はありませんが。
ゼルギズの言葉を頬杖をついて聞きながら、無虚空間の中のちゃぶ台から外の様子を写した画面を見る。
先生も、今はまさか自分が助けられなきゃいけない立場だと思ってないだろうし、なんならこっちを助けようと引っ張ってくる。
精神が弱い私にそれは効くから,正直言っちゃうざいし厄介だ。
下手な暴力よりも苦しい。
今先生を助けるのは溺れている相手に手を差し伸べるような愚行だ。
「お前も学校に行くんだな、青」
「ああ。
もちろんゼルギズを見ておきたいってのはあるけど、それ以上に理由はいっぱいだった。
私も過去の自分を捨てたいし、今の自分でちゃんと学校を過ごしてみたいし、そうじゃなくても私に社会性が欠如している。
神になるとしても勉強しなきゃだ」
私はゼルギズから目を逸らした。
これが、神様の人化けの第一歩になってしまうんだろうか。
ふざけた、神の人の真似だ。
同化は、じわじわと。
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