さて。
こんなことを言われても、俺に実際どうしろってのが正解なんかねぇ……。
もう戦争が始まってるって言っても、特段今の所そんな予兆も見えねぇし。
っけど、アイツが嘘をついているとも思えねぇ。
やっぱ教皇には言わねぇと。
背中に悪寒が走った。
「よお。
お前、転生者だろ。
いい話がある、来い」
「なんだお前」
「いいからいいから」
肩を万力のように握られる。
なんだこれ、何が起きてる。
合成音声みたいな声だ、何を望んでる。
「お前、女神がなにかって知ってるか?」
「知らん。知ったところでどうする」
「私は知ってる。
魔王の隠し子だ」
「は?」
俺は、この仮面の女?の口車に乗った。
「ということは、お前は女神が魔王の子で、女神の本当の目的は世界の完全な掌握って言いたいのか。
馬鹿馬鹿しい」
「逆に聞こう。なぜ馬鹿馬鹿しい」
白と黒の仮面をつけた、女、だよな。
体は女のように小さいけど、それにしては声が低い、のか?
地球でだったら男の娘でも言うんだろうか。
ソイツと俺は、路地裏で話していた。
自分のことを魔族のスパイと語るコイツが話しているのは荒唐無稽なことばかり。
けれど、妙に説得力があって、その筋書きは正しいように思えた。
「馬鹿馬鹿しいって、そんな世界征服だの、この世界のただの動物があそこまで強くなることも。
ゼルギズも星神っていう種族だからそれが可能なのであって、実際あんな強くなることはできない」
「魔王を見て同じ言葉が吐けるか」
「ーーッ」
魔王。
昔は、人族と魔族間の交流もほとんどなかったみたいだが、今となってはニュースでもたまに姿を見せる魔族の王だ。
彼女の力の一端はそこで見たことがあるが、確かにあれはこの世界の生命体の動きではなかった。
それを考えてしまうと可能なのかもしれない。あそこまでの強さの女神が魔王から生まれることは。
「私は暗部の全てを知っているわけではないが、ある程度の想定はできる。
ローヤルゼリー。次代の魔王だけが獲得できる魔王への進化を誘導する神がかっている餌だ。
それが魔王から与えられたと考えれば説明もつくだろう」
「つまり、女神は次代の魔王なのか?」
「あくまで予想だがな。スパイに与えられる情報は少ない」
「で、お前はなぜそれを俺にわざわざ教えるんだ。
お前が俺と同じ職業ってなら、情報の重要性は理解しているはずだ。
そしてその罪の重さもな」
もしこんなことをしたのが俺で、それが国にバレたら少なくともどこまで話したかを拷問され、その後そのまま処刑される。
それに見合う価値が俺にある……、いや、わっかんねぇな。
そうは思えねぇ。
「それがあるんだ。
まず、お前にはそれを教皇に伝えて欲しい。
それは出来るか、出来ないか。
どっちだ」
「…‥チッ。
伝えりゃいいんなら伝えてやるよ。
だが、そもそもこれがほんとかどーかなんて、俺はわからねーよ」
「そうか。
なら、俺はお前にこれをいう価値があったということだ。
上に判断してもらえ。そうすればお前は影の英雄だ。
この結果がどうであれ世間には伝えられないだろうが、魔族に先制攻撃でもして出鼻を挫けば名は残る。
永久に教会で利用されるであろう機密資料にも、これからの人類の歴史にもな」
「そっか。
まあ俺にはわっかんねーな」
その人物の姿が消えていくのを見届け、サジンは教会へと飛ぶ。
「青春とは、嘘であり悪である」
「はは……、相変わらずだな、アイミ」
「俺ガイル一巻冒頭。だが、もちろん生命そのものは素晴らしい。
夏目漱石。宮沢賢治。米津玄師。宮崎駿。
生命というよりかはその波紋そのもの、そしてその集合体が美しいというべきか。
となるとなんとも皮肉。で、どうした」
同級生たちと話しながら、私、アイミは思考を巡らせる。
本体である女神は問題なく機能していて今も龍を撃退している。
だが数年前から感じていたこの星の大気中に存在する龍の匂いが消えない。
となるとやはり内部に侵入していると考えるのが吉。
戦争直前だ、ここまではあえて探らないでいたがそろそろ相手方も全員集合しただろう。
よし、踏み潰しに行こうか。
とある田舎町の教会の地面に置かれた扉。
そこから続く地下堂に、7人の彼らは集まっていた。
これからの展開について、そして動き出すために。
「まずそもそも、どうやってエネルギーを吸収する」
「そんなものあとで決めりゃいいの、そんなもん」
「いやーそれは地道に回収するしかないよ。
元々その前提で動いているんだから気にしたら負け。
敗北確定、相手はあのアストラルドリームだからね」
宇宙龍。
宇宙を束ねる最強の龍であり、自身が神であると信じてやまない存在。
彼らは人化し、テレビのモニターを見ながら話していた。
目的はこの星のエネルギーの奪取と、アストラルドリームの捕獲または殺害。
一つの星から奪うのならまだしも、全ての所有する星から奪うならば彼女自身を止めなければならない。
「賭けだな……」
「だからこそ今まで、何年だ?
6年前から準備してきて、生命分離の魔術まで使った。
これでダメなら全てが終わるくらいまでな。
だが、逆にここまでやった」
「ま、実際なんとかなるだろうが……。
この国の軍はすでに並の神なら一瞬で屠れる戦力だ。
逆にこれでダメなら……、いや、考えたくもないな」
「うん大丈夫。
これで行けるはず。これでダメなんてのはあり得ない。
死ぬのはあっちだよ」
笑うアセトに、腕を組んで考えるアルリゴ。
ぴょんと跳ねーーーーーー。
「あっ、こっからはこっちのターンってなったから名前覚えなくておけ。
おひさ龍さん。
念の為処理するよー」
「たく、なんで逆に今まで俺らは気づかなかったんだ……。
圧倒的なミステイク、反省が必要だな」
バシンと開かれたドアと、そこから地下室に差し込む光。
ドアから続く数段の階段の上に2人の男女が立っていた。
ギャルのような元気ハツラツな女子と、眼鏡猫背の短髪男子。
やっと来た、アセトは笑って話しかけた。
残念、もう終わってる。
「いよっす。
私はアセト。おはこん!
君らの名前教えてよ、私知らないからさ」
「これから殺す相手に名前教えるの、合理的か?
合理的じゃないよな」
「合理的とかいーじゃん!
私はムーブ。青の分体ね!
ちなみにこの根暗インキャ黒髪アホメガネはシンク。電脳の分体!」
「りょーかい。
じゃ、帰ってくれない?私ら話してたからさ。
今出かけてるゼロターンに連絡もしなきゃいけないし」
「へー、なるほど。
じゃあ帰れば……って、帰るわけないよ!私らもあんたを消すためにきたようなもんだし!」
「ほらさっさと消すぞ。
生命分離の魔術もこれから解除しなきゃだし、メンドクサいこと極まりない。
お前は勘違いしやすいんだから、さっさと処理だ」
どこからかロケランを出し、ガチャリと装備するシンク。
それに対してムーブはむすっとしていて、少し納得いっていない様子。
いけそう。
「はぁ!?
生命分離……もうバレてるとかどうすりゃいいんだよ!
おいアセト!お前の考えた方法めっちゃ簡単にバレとるが!」
「だね。
ここは一旦死のう。
無い手は打てない。終わろう」
「うー……」
黙ってらっしゃい、無能の同僚。
スマホを弄りながら、私は口角を上げる。
やっぱり龍いっぱいで来すぎたか。
そりゃさまざまなルートがバレちゃうな。
「おいテメェ、そこのピンクのツインテールの女。
何考えてる。龍がこれで終わるわけねぇだろうが。
何重の回避を備えてる。言ってみろ」
「そんなん持ってないよ。
私が来てんのは星のエネルギーを奪うためだけど、今じゃなくてもいい。
Dが星を掻き乱してからでもいいからね。
だから帰らせて貰うの」
「チッ。
勘がいいな、クソ女。
龍に似合わねぇ思考能力、テメェ神か?」
「いやー?
神じゃないけどなー。
ともかく、ここは逃げさせて貰うよ」
パチパチとスマホを打ち終えて見ると、シンクが消えていた。
そろそろこっちも転移魔術が来る、後何秒だ。
けれど、1人残っていたムーブが笑った。
どこからか聞こえる声と話しているかのように、笑顔で。
「りょーかい!
じゃあね!”零領域”!!!」
ムーブを中心に広がる超高熱の爆発が、半径50mの空間だけを削り取ったように塵にした。
「いよーーーっす!
ターンゼロ、平気?
へへ、今爆発が起きてうちら2人以外は死んだー。
ヤバいよねー」
「は?
いや、は?
なんで神を殺せる火力を超近距離だけの被害で抑えられるんだ。
どうなってる。
全く理屈がわからん、終わりだぞ本当に」
「このでっかい木偶の坊と私以外は焼失。
生命分離も破られておそらく魂の情報から書き換えられたからうちら以外は完全に終わりかなー。
私もアルリゴだけは戦力のために回収したけど他は無理でしたー!
流石に怖いよー!」
『うわー。
私やっぱりこの星来るべきじゃなかったんじゃ……。
どうしてこんな簡単に龍殺せるの……?』
「ま、これでコンタクトは一時的に切れたはずだ。
ターンゼロはゼロターンとして認識されている。隠密だけは上手いしな、一度死んでもらうが」
『え、うそ?』
無傷な2人は、電話をしながら市場の中を弱音を吐きながら歩き始めた。
龍と神と人とポケモンと……。
敵が、敵が多い…!!