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1 虫
俺はある100レベルの虫6匹を連れてポケモンをプレイしている。
デンチュラ。
電気を纏ったデカい蜘蛛なのだが、これがいいポケモンである。
第一にふくがん。
技の命中率を上げるというなかなかいい特性をしているのだが、ふくがんには実はもうひとつの効果がある。
野生ポケモンの道具の所持率の増加。
ポケモンにはひとつの道具を持たせることができ、野生ポケモンもたまに道具を所持した状態で出現する。
他のゲームでいえば倒した時に一定の割合で決まった道具を落とすみたいなものか。
そこでふくがんという特性は野生ポケモンが道具を持って出現する確率を大幅に上げることが出来るのだ。
ちなみにこの特性は虫ポケモンしか持っておらず、対戦では全般的に弱いため本来の用途で使われることはほぼない。
第二に、デンチュラは『どろぼう』という技を使える。
この技は相手ポケモンが持っている道具を奪い取れるというものだ。
この技を使えるポケモンはなかなかに少なく虫ポケモンでまともに使えるのはデンチュラくらい。
持っていたポケモンで他に見つからなかっただけかも知れないけど。
ちなみにこれも戦闘で使われることはほぼない。使いにくい道具を奪ってしまうとデメリットしかないうえ、基本もともと持ち物を持って戦うので奪えないのだ。
とにかく、この二つを兼ね揃えているため、野生ポケモンが道具を持っている確率を上げながら貴重な品々を掠めとり逃げるという戦法が出来る。
ちなみにデンチュラはとても素早いので、100レベルならほぼ確実に逃げ切れるというおまけつきだ。
まぁそんなことはあくまでゲームの話で、実際の俺はただの高校生で何の関係もない話。
プロゲーマーになるわけでもなく、なんならポケモンをやってる理由も他のことをやりたくないからだし。
昼飯を食べたあと学校にさりげなく持ってきていたゲーム機で昼休み中その作業を行いそのまま5限の古文に突入する。
飯食べたから眠くなってきたけど、どうせ古文の先生は優しいから赤点回避出来るはず。
なら、このまま突っ伏して寝てしまえ。
教室を包む閃光。
何も感じず、俺は眠りについた。
ーーーーーーーーーー
ん?
どういうことだ?
真っ暗で何も見えない。
あとなんかカサカサ聴こえる気がする。
カッカッ。
身体になんか硬いものが当たる。
なんだこれ?
てか俺の状態はなんなんだ?
とりあえず周りの状況を確認したい。
めちゃくちゃカサカサ言ってるよな。
がッがッがッ。
身体をぶつけて周りの硬いものがなんとかならないか試みる。
パキャ。
あ、開いた。
よっしょいこっと。
手をかけ力を込めて外に出る。
ん……?
ん……?
ん……?
んッッ!?
はぁぁぁぁっ?
たくさんの、巨大な蜘蛛たちが周りで蠢いていた。
え?
ちょっと待ってね、疲れてるみたい。
あー、夢かー、タチ悪い夢ってあるもんなんだなー。
疲れてると良くないもんだ、ゲームやり過ぎたか?
さて現実に戻ろう。
ゴシゴシ。
え?
目を開けると、蜘蛛たちがこっちを向いていた。
いや待て怖い怖い怖い!
なんだそのサイズは!?
正面の高さでも俺の身長の二倍はあるぞ。
逃げなきゃ死ぬ。
ガサガサガサッ!!
うわ、なんかものすごい速度で追ってきた。
夢だよな!?
なあこれ夢だよな!?
おい誰か起こしてくれ!?
いや待て訳がわからん!
てか死にたくないんだよ!
石蹴ったりする感覚とかなんか妙に感覚リアルだし!
あれ?
足たくさん生えてね?
ダッシュした瞬間にいつもとは全く違う感覚がある。
まるで、地面にたくさんの足で立っているような。
自分の身体をググッと曲げて見て、俺の心は固まった。
たくさんの脚が生えていた。
は、はぁ?
わからん、なんか地獄に落ちたか?
いやまずは逃亡だ!
進めばふたつ、逃げればひとつ!
俺は逃げる!
ーーーーーーーーーー
よし落ち着こう。
なんとか壁に張り付いてため息をつく。
あの蜘蛛身体は大きかったけどまだ壁には登れないみたいだった。
小さいからできる技なのかも知れない。
で、ここは洞窟か?
ヤバイ数のウジャウジャ蜘蛛がいなければペルーとかにありそう。
はて、暗いのになんでよく目が見えてるんだろう。
あえて考えないようにしてたけどあれだよな俺。
うん蜘蛛。
蜘蛛だよな。
てかなんで蜘蛛になってんだ。
アホみたいな大爆発があって、俺が死んで?
これ死んだかわけわからん妄想を植物状態でしてるかだな。
なんならそうだったら一番嬉しい。
ガンガンッ!!
でも強く叩けば足も痛いし、壁の感触もしっかりある。
やっぱ妄想じゃない感じ?
なんなら転生後、または蜘蛛地獄みたいな地獄に落ちたか?
俺そんなに悪いことはしてないと思うんだが。
うわぁ。
転生ならまだしも地獄だと嫌だなぁ。
マジで地獄絵図だし。
なにより俺の身体はどうなってるんだ?
水溜まりがあるし、反射して見えたりしないかな。
映った青い目。
黄色い、僅かに艶のある体毛。
澄んだ色の青い足。
ああ、あ、これバチュルだわ。
水に映った顔を見て確信した。
黄色い身体に青い目。
確かでんきぐもポケモンだった気がする。
弱い。
高さ10cmの最も小さいポケモン。デンチュラの進化前。
マジで最弱レベル。
人でも勝てそうなポケモンの代表格。
あれ?
そんなやつに生まれ変わったところで、俺どうやって生き残れば?
神様、少なくとも即死の未来が見えるのですが。
そもそもなんで周りの蜘蛛が結構デカイのに俺だけチビなんだよ。
全長奴らの半分あるか怪しいぞ?
タイマンじゃ絶対死ぬ。
くそ、どうやって生き残ろう。
この蜘蛛以外になんか生き物はいるのか?
ーーーーーーーー
歩いてきたら、しっかりいた。
カエルやらハチやら蛇。
ただ言えること。
デカい。少なくともあの蜘蛛たちより絶対強い。
多分比にならず強い。
身体が小さいから隠密性は人一倍、蜘蛛一倍あるけど倒せはしないし近づきたくもない。
壁に張り付きながら俺は再びため息をつく。
俺、飢えて死ぬのか。
次は人間になれますように。
悪いことこの世界でしてないし、なんとかなれる気がする。
やることも思いつかないので、蜘蛛の群れを見ています。
弱いからなのか、なぜか電気も使えません。
糸は少し出ました。
マジでチビの蜘蛛です。
兄弟に狩られる理由がわかりました。
チビだからです。
多分獲物を狩れません。
チビだからです。
あれ?
なんかヤバい蜘蛛がいる。
二本足で踊ってるし。
なんだあいつ奇行種か?
一回見に行って見よう。
あ、ワンチャン俺と同じ転生者の可能性もあるのか。
ちなみに蜘蛛子はポケモンをほとんど知らない設定でいきます。