ヤバいやつばっかり
私たちは中層を進んでいる。
あの後サヤにはだいぶ心配させたけど今はもう別行動をしている。
安心したのかな。
あと、なんでサヤが別行動をしてるのかがやっとわかった。
サヤには火耐性がつきにくいみたい。
それでHP管理のために獲物を探して徘徊しまくってたってわけ。
白もそれで納得してくれた。
電脳にも話したら、まあそれもあるだろうなって一蹴された。
それもってなんなのよ。
他に何があんのよ。
そんな感じになりながらも、私たちはナマズを探して徘徊していた。
鰻?
そんなもんは知らんな。
アイツわりかし強いから、負けるかも知れないし。
『間違っちゃいねえが負けたら死ぬってことわかってるか?』
「もちろん。だって実際前死にかけたじゃん」
『わかってるならいいが』
鰻って強いんだよね。
白が麻痺の邪眼を手に入れてたけどこれでも勝てるかは不安だ。
相手のことを見てたら麻痺になるっていうだいぶ壊れたスキルのはずなんだけど。
『おい、青、白。あの穴から離れとけ』
大きな穴があった。
とてもとても大きな穴。
直径にすれば100mくらいあるんじゃないかな。
「なんで?」
『いや、あの穴はなんか嫌な予感がする。なんかいるぞ』
「青、できるだけ離れながら通るよ」
結局、迂回する。
わざわざ危険な橋を渡る必要は無いしね。
サヤはどうやって通ってたんだろう。
壁を沿うようにして穴からできるだけ離れながら歩く。
「そういえば、電脳はどうやって危険って判断したの?」
『穴の縁が削られて新鮮な岩が露出してたからな。巨大な何かが通ることで溶岩が削られたって考えるのが一番筋が通る』
「良く見てるね」
ゆっくりゆっくり歩いて穴のそばを通り過ぎる。
通り過ぎて、視界にぎりぎり穴が入るような距離で。
その穴の主は姿を現した。
ここからでもはっきりと見えるほど巨大で、黒く光る体躯。
紅く巨大な目に、私たちの数倍の大きさのありそうな鋭い牙。
一本一本が巨大な樹のような脚。
それについた、人の指を思わせるような巨大な爪。
何より、全てを黙らせることの出来そうな強大な気迫。
私たちのマザー、クイーンタラテクトだ。
『鑑定はしないが、予測はする。眼に入れとけ』
電脳が無理な指図をしてくる。
無理なものは無理だ。見られたら死ぬ。
『もう大丈夫だ。欲しかった情報は手にいれた』
ああ、そう。それはよかった。
「マザーがこの迷宮だとトップなのかな」
「そうなんじゃない?アレよりでかい化け物いたらわたしたち生きていけないでしょ」
「そーだね。マザーは迷宮をここ使って行き来してるのかもね」
『かもじゃなく98%そうだがな』
でも近づかないでよかった。
ネタ半分で近づいてたら、狙われてやられてジエンドだった。
狙われて生き残るなんて無理でしょ。
あの巨体じゃ狭い場所は通れないけど、おそらく道をこじ開けてでもこちらを追いかけてきそう。
そんな恐怖があった。
これになら、アラバが負けたとしても何も違和感がない。
ギャラドスなんて一撃だろうね。
あーヤダヤダ。なんでこんな怪物がいるんだろう。
サヤなんて目じゃないぞ。
マザーの視線が、ある一点に定まる。
それは、マグマの巨大な湖の底。
あの湖もおっきかったんだよね。
今まで見た中で1番大きいくらい。
「白、探知で何かわかる?」
「えーと、あのさっき調べたけど何にもなかった。浅くてびっくりしたくらいかな」
でも、なんだろう。浅いマグマの湖。
嫌な予感がする。
なにもないはずなのに。
そしてマザーは口を向けて、光線を放った。
グラグラと迷宮が揺れる。
本物の光線だ。バグじゃない。
本当の、破壊光線。
私は固まった。この力の凄さと恐怖と美しさに。
白も、電脳でさえも言葉を失っている。
こんなものを見たら、しゃべれない。
次の瞬間だった。
地面から、壁から、天井から。
轟音が鳴り響き始める。
ドゴン。
巨大な土の槍が何十本もマザーに向かって飛び出した。
元々身構えていたのかぎりぎりではあったけど、それらを全て避け切ってる。
だけど、その後に湖から放たれた巨大な光線に、マザーは対応しきれなかった。
脚の一本にその光線が当たって、先端が溶け落ちる。
マザーも逃げようとは思ったみたいだけど、その光線はマザーが出てきた穴にも撃ち込まれる。
巨大な地響きと共に大量の岩がその穴から降って来た。
マザーはそれに幅まれて上層に上がることは出来なかったみたいだ。
そして、マザーを屠ろうとした張本人は、湖から姿を現した。
100メートルはあるだろう身体に、赤く光る鱗。
全てを破壊できる鉤爪。
どんなものでも押し潰せる、圧倒的な存在感。
うん。4種類目のポケモンがこれか。
勘弁してほしい。
グラードン。
それは、体内から発光し始める。
周りの岩が、溶けていく。
地獄絵図みたいだ。
いや、地獄そのものだ。
『離れろ!』
「わかってる!」
字面が揺れる中、白が猛ダッシュをかける。
瞬間、噴火が起きたのがわかった。
山じゃなく、ポケモンから湧き出るマグマ。
立ち上る噴煙に、降りかかるマグマに身体を削られるマザー。
この記憶は、火耐性でも相殺できなかったHP減少とともに私の身体に刷り込まれた。
ーーーーーーー
「え?」
他の大迷宮に向かっている間、私はクイーンからの要請を受けた。
曰く、クイーンが瀕死になったらしい。
まだ命はあるようだし、生き残ったのは良かったんだけど、誰にやられたんだ?
火龍の気が狂ったとして、一対一じゃ負けるはずがない。
でも、一対一だったというのは間違いないらしい。
急ごう。星の逆側だ。
急いでクイーンを治癒して、その敵も確認しなければ。
私は、ジェット機のように速度を上げる。
突然、
ものすごい衝撃と共に手放しそうになった意識を無理やり抱きとめ、私は顔を上げる。
上げているのだろうか。
わからない。
墜落する身体に鞭打って、なんとか体勢を整える。
飛び去っていく襲撃者の姿も確認出来た。
やられた落とし前ならつけてやる。
見たこともない龍に、私は一片の容赦も無く襲い掛かかった。
龍って誰なんだろうな(遠い目)