さて。
どう接触しようか。
手をブンブン振り回している蜘蛛を見下ろし腕を組む。
たとえ転生者であるとしても、考慮しなきゃいけないことはたくさんある。
下手に接触すると危ない蜘蛛かと思われて逃げられるかもしれない。
でも情報なんてものはないのかも知れないけど出来るならば一緒に行動したいという願望がある。
だって死ぬもん。
俺一人では何も狩れんし。
しょうがない。奥の手を出すしかないか。
腹っていう弱点を見せることにもなるし、何より馬鹿らしくてアホらしい。
よし。
寝転がっているその蜘蛛の近くの地面に降りて、2本脚で立つ!
プルプルプル。
足が震える。
体の構造的に無理か?
蜘蛛だし。
いや待て。
いけるんかい。
わざわざこの体勢になる必要は本当に皆無だけど!
ここから、踊る!!
よーいしょ。
よいしょ!!
回る回る。雪月花のように。
脚を軸にして。
なんで花が回ってるかは知らんけど。
花と雪と月が回ってるの?
あれ、どゆこと?
俺にわかなんだけどマジで知らん。
その件の蜘蛛はこっちをただじっと見ていた。
あれ、まさかやらかしたか?
え、転生者じゃなかった?
そしたら逃げないといけないんですが?
死ぬんですが?
さてどう来る。
その蜘蛛は、俺が回り終わった後に再び回り出した。
あ、あれ。
これまさかのまさかの?
意思疎通出来てんのか!?
俺がもう一度回ると、その蜘蛛ももう一度回った。
よし成功だ!!
ありがとう神様!
後は地面に文字を書く!
『なまえなんですか』
その文字を見た蜘蛛は大分驚いてる。
まあそうだよね。
見た目蜘蛛だし、俺も恐いし。
そのくせに日本語についてわかっていて急に書き始めるんだから。
てか、日本人だよね?
そうじゃないと英語イマイチだから避けたいんだけど。
そもそも地球人だよね?
そうであってくれ。
でも俺の心配を他所に、蜘蛛は案外すぐに書きはじめてくれた。
『若葉姫色です
まじですか。あ、おれ佐野蒼生です。わかりますか
同じクラスの人ですね』
まさかまさかの同じクラスの人だった。
しかも、俺がクラスの中ではトップレベルに関わっていたほうのヤツ。
ただこれで状況が良くなったわけでもないし、まずは情報収集をしなければいけない。
話そうとして、二人で顔を見合わせてシャーシャーいう。
あ、発声器官ないから日本語分かっても通じないのか。
言葉ないと不便ってすごいわかる。
人類の発展、発声マジ大事。
また結局諦めて地面に書いてるしな。
『これからどうします?
どうしましょ
おれとしてはいっしょにこうどうしたかったんですが。小さく生まれてきてしまったもんで
そうだね。でもはなすのがこれだとめちゃつらいとおもいます
そうですね。てんせいものだったらねんわくらいほしいですよね
かみさまなんだからそれくらいやってほしいですね』
《要請を上位管理者Dが受諾しました》
《スキル『共生Lv1』を構築中です》
《構築が完了しました》
《条件を満たしました。スキル『共生v1』を獲得しました》
「「はぁっ!?」」
ロクでもないことが起こった気がする。
いや、なんか得たのはいいことだと思うんだけど、その過程がロクでも無さそうなんだよ。
まるで、世界に飼い慣らされているような。
てか神様煽っちゃったことになるのではこれ。
もしかしてとんでもないことやっちゃったか!?
神様いるって知ってたのにすごいこと書いちゃった。
あー、神様ごめん許して。
ただ今は、情報不足で考えようがないというのも事実。
というか必至に生きようとしないと死ぬから考える余裕がない。
「えっと、なんか色々あったけど、これから一緒に行きませんか?」
「いいけど、ひとついい?」
「ああはい」
「あんた男子だったよね。
なんか念話だと女の声だよ」
えっ?なんで。
まさか性別変わってたりするの?
ショック。
嘘でしょ?
でもあんたもあんたなんて言葉言わなかったと思うけど。
もっと厳格で、上品で、君とかって言ってたはずなんだけど。
そういうのに敏感な俺が言うのだから間違いない。
てかアンタと関わっていた主な理由のひとつはそれだ。
今言ってもしょうがないか。
Siriみたいにデフォルトで女声なのかもしれんし。
若葉さんも何かしら変わっててもおかしくない。
何より今考えてもわからないしね。
「理由はわかりません。
てかどうします?2人でもいろいろ問題があるんですよね。
管理者Dがなんなのかもわからないし」
「その人のことは一応後にまわそう。
いまは食べることだ。なんか探そう?」
「はい」
若葉さんが歩き出したから俺もついていく。
そして、彼女はそのままどんどん加速していく。
俺も加速する。
でも若葉さんはそれよりさらに歩く。
え?
歩くの速くないか?
歩いてんだよな、これ。
マッハ?
「あのー、ちょっといいですか?」
「なに?」
「めちゃくちゃ速くないですか、足?」
「え、本当?
全くそんなつもりなかったんだけど。
いやでも、速かったかも?」
うんうん唸る彼女。
やっぱ変わったよなぁ。
前はわからないことなんて無いみたいな態度取ってたし、人の話なんて興味ないみたいな人だったのに。
「はい。多分普通の蜘蛛の速さの2倍くらいの速さありますよ。
俺より全然足速いですもん」
「えぇ。じゃ、どうしよう。
よし、私の背中に乗れ」
え?
う、うん。
まあそれがベストではあるけど。
俺男のはずなんだよなぁ。
ーーーーーーーーーー
「とかなんでそんな蜘蛛になったの?
私よりも全然ちっさいし」
結局若葉さんに背中に乗っけてもらっている。
結局最適解だししょうがない。
俺、男なのに。
「ポケモンの話なんですけど。バチュルっていう蜘蛛のポケモンがいるんです。
これはその姿にそっくりで。
転生前めちゃくちゃポケモンやってたからかもしれないです」
「そういうのでもなる可能性があるのか。転生怖」
「あ、そういえばなんて呼びます?
転生前と同じ名前使うのはなんか嫌じゃないですか?」
「同感だ。ってわけでどうしよう?」
「うーん。無駄に長くするのもあれだから。
白はどうです?」
「白?」
「白いし。今ホワイトでもじろうとしたけど思いつかなかった。
それはともかく今さら異世界風の名前にしてもやりにくいかなって思いました」
「ああー。そうくる。
じゃ、君の名前は青にしよう」
「えっ?思い切り黄色なんですけど」
「目が青いし!!
あんたのもとの名前の蒼生からの連想で!!
何より黄だと一文字でキリが悪い!!」
そういうことか。
うーむ、納得できるような出来ないような。
でも名前をつけてもらうことに価値があるんだ。
実際そうだし、そう思おう。
「じゃあわかりました。俺は青にします」
「よし、じゃあ白と青の冒険を始めよう!!」
「青白か、紅白って感じじゃないすね」
「一言多い!」
「さーせん」
ーーーーーーーーーーーー
「あれは!?」
「蜘蛛の死体!」
「なんか斬られてる!?」
「食えるかも!!」
衝撃!!
暗闇から現れた兄弟の死体!?
「「あ」」
死体の近くに人間の足跡発見。
はい俺たち結構デカいことが判明しました。
で、ここは異世界確定です!!
マジか。
よーし冷静になろう。
歩いてたら、切り裂かれた兄弟の死体を見つけた。
そして人の足跡があった。
その足跡よりだいぶ俺たちがデカいから、異世界確定。
うーむ良くない流れ。
でも一つわかったことがある。
「これ、人に会ったら殺されるね」
「はい」
「ともかくたべよ」
「うん」
マジか。
自分で言ったからアレなんだけど正直食いたくない。
だって明らかにウマいってことない見た目してるもん。
「じゃ、降りるぞ」
「おけ。私が3分の2くらい食べていい?」
「わかた。どうぞ」
あと話し合いの結果、俺は砲台となることが決定した。
下の白が移動し上の青が糸を発射するという魂胆。
ちなみに二人ともまだ上手く糸を出せはしない。
よし、現実逃避はここまでにして食べるか。
俺現実逃避だいぶ得意かもしれない。
さすが前世から磨いてきたスキル。
そんなことを考えながら、牙を立ててグチュリという音を立てて蜘蛛にかぶりつく。
《条件を満たしました。称号『悪食』を獲得しました》
《称号『悪食』の効果により、スキル『毒耐性LV1』『腐蝕耐性LV1』を獲得しました》
《条件を満たしました。称号『血縁喰ライ』を獲得しました》
《称号『血縁喰ライ』の効果により、スキル『禁忌LV1』『外道魔法LV1』を獲得しました》
なにか聞こえた。わからん。
でもそれ以上にお腹が減ってるんだ。
食わせてくれ。
今はそんなこと考えてる暇ない。
謎解きは飯の後で、これ大事。
海賊王も言ってるかも。
はい食べました。
うん、うん。
何というか、これ、まずい飯としかいいようなかった。
先に一口食べた白が全く笑ってなくて目が死んでたから少しは悟っていたけど。
「獲物狩れるようにしよう、青」
「そうっすね、食べたい。ウマイの。白」
「まさか毒耐性が手にはいるとは」
「ほんとですよ」
ーーーーーーーーーー
しばらく糸を出す練習を2人でして巣を作ってみる。
2人の糸が絡んで友情が壊れかけたのは知らない知らない。
《熟練度が一定に達しました。『蜘蛛糸Lv1』を獲得しました》
《熟練度が一定に達しました。『蜘蛛糸Lv2』を獲得しました》
やったね。
「この巣を3つくらい作って、鳴り子つけて、なんかかかるのを待とう」
「それまでは?」
「兄弟を食べます」
あーあ。
あれからしばらく経っている、さすがに狩のやり方も覚えた。
最初は手こずってバッタバッタしたけどね。
いつも通り糸で罠を作り、兄弟がかかったところに俺が糸で口を塞ぐ。
あとは白が噛みついて終了。
《熟練度が一定に達しました。『蜘蛛糸Lv3』を獲得しました》
「何回かやってるけど大分安定してるね。
蜘蛛糸も強くなってる」
白は喜んでるしまあ上手くいってるんだろう。
《経験値が一定に達しました。LV2にレベルアップしました》
あ、レベルアップした。
バリバリっと皮が剥がれていく。
まさかこれは脱皮するのか!?
しちゃうのか!?
蜘蛛なのに!?
バリっ。
あーそういう仕組み。
脱皮だわ。
うん。
ほんとにしたわ。
しちゃったねぇー。
《『HP吸収Lv1』『連鎖斬Lv1』を獲得しました。『鑑定Lv1』を取得できます》
なんか生まれた時からあるスキルポイントは100で、今レベルアップでもらったのが100だから合計200。
そして、手に入れられるのは鑑定。
なんとなくだけど、スキルポイントを消費したくないんだよなぁ。
いつか必要かもだし。
ポケモンでいうと「連鎖斬」はおそらくれんぞくぎりという技の異世界版。
そして「HP吸収」はすいとるという技の異世界版。
両方とも1レベルの時点で覚えている技だから、覚えたんだと思う。
そして蜘蛛の糸に関する技も後々覚えるわけで。
鑑定はどうだろう。
でも下手に惜しむとそこまでに死ぬかもしれないからなぁ。
「青、そっちは何のスキルが取得出来るの?」
「鑑定」
「あー。こっちと全く同じだ。
ポイントはあるし、取った方がいいかなー」
「そうかー。ポイントはあるし、いま出来ることはやった方がいいか。おけ」
取ります!
《『鑑定Lv1』を獲得しました》
やっちまったぜ。
後悔はしていない。
「「よし、鑑定!!」」
『石』
ん?
「「よし、鑑定!!」」
『石』
白と顔を見合わせる。
えっと、うん、草。
「私たち、二人ともこれ取ったんか?」
「そうみたいッスね」
「かなしいね」
「かなしいね」
「かなしいね」
「とりあえずまた兄弟倒して経験値稼ぎます?」
「でも、私たちそこまで食べられないよ?」
「じゃあ、倒したら群れのところに放り込みましょう?」
「うーん。まあ、それなら勿体ないとは思わないけど。うん、そうしようか」
4匹ほど狩ったところで、近くの鳴り子が鳴る。
鳴り子!なんかかかった!?
はい、カエルがかかってた。
さてどうしようか。
完全に身動きは取れなくなってるけどこっちを向いてかかっちゃってる。
ベロでやられるかなあ。
こわ。
「青、大丈夫?」
「OK。糸は任せて!」
「「よし、行こう!!」」
びちゃっ。
えっ?
は?
カエルが毒を吐いた。
毒を吐くなよお前カエルだろベロ使えベロ!!
なんか抵抗はすると思ってたけどそれは予想外だよ!
「危なっ!糸は?」
「まだ遠い!!あと少し近づきたい!」
「おっけ!」
びちゃっ。びちゃっ。びちゃっ。
ビュッ!
ビュッビュ!
白は速い。
カエルが吐く毒をどんどん回避して少しずつ近づいていける。
よし、糸を。
お尻からカエルの口に向かって糸を出した瞬間、カエルが毒を吐いたのが見えた。
びちゃっ!!ジュッ!
お尻が焼けるのがわかるし、何より冗談じゃなく痛い。
うん、痛い。
てかマジで痛いな!?
お腹の方にまで突き刺すみたいな痛みがある。
でもいける!
「青、平気か!?」
「うん平気!白は!」
「こっちも焼けたけど身体が大きいからまだいける!
でも安全第一!」
《熟練度が一定に達しました。『酸耐性Lv1』を獲得しました》
スキルが出来たからか、ちょっと楽になった。
カエルの方は今口が塞がれてるしいける!
HP吸収と連鎖斬。
やれるはず。
いけ!
白はカエルの喉元に噛みつき、俺はうなじにくっついてHPを吸収しながら爪でカエルの身体を切り裂く。
「死ねぇぇぇっ!!」
そんな物騒な声とともに、カエルは動かなくなった。
はい。
お食事タイム。
「まずい」
「まずい」
知ってた。
《熟練度が一定に達しました。スキル『毒耐性LV1』が『毒耐性LV2』になりました》
「なんか耐性上がったわ」
「こっちも上がったわ」
ムシャムシャ。
《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV1』が『酸耐性LV2』になりました》
「上がった」
「上がった」
「苦いね」
「酸っぱいね」
「「食うもんじゃないな」」
「なんか白はスキル増えた?」
「毒牙もらった」
「いま持ってるスキルまとめたいね」
「えっと、青が持ってるのは?」
「HP吸収と連鎖斬、毒耐性と酸耐性、あと鑑定、蜘蛛糸」
「その最初の2つはなんなんだ。私は毒耐性と酸耐性、鑑定、毒牙、蜘蛛糸」
「そのほかの奴らは?」
「忘れよう。変に触れたら死ぬ予感がする。
忘れるべきだ。
その最初二つのスキルは何処からきてるの?」
「あれはポケモンの影響っぽい。
ポケモンが使える技を使えるようになったっていうか……」
「いいなー」
「まあまあ白も毒牙があるじゃないですか」
「まあそうだけどさ」
「ていうか電気ポケモンなのにまだ電気っぽいこと出来ないんだよね」
「ポケモンはわからんからそっちでがんばれ」
「あっはい」
《経験値が一定に達しました。LV3にレベルアップしました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『共生LV1』が『共生LV2』になりました》
「白さんもレベルアップしました?」
「こっちもしてる!ペースは同じっぽいね」
「てか脱皮で火傷治った!すごいなこのシステム!」
「マジだすごい」
「今日は寝ます?」
「うん」
ーーーーーーーーーーーーー
次の日。
お腹も満ちていたから糸で2人で簡易ハウスを作った。
《熟練度が一定に達しました。スキル『蜘蛛糸LV3』が『蜘蛛糸LV4』になりました》
「青ー。熟練度ってどのスキルにもあるのかな?」
「俺そっちのオープンワールド系のゲームあんまりやったことないんですよね。あ、でもそうじゃないすか?知らんけど」
「じゃあ、鑑定にも熟練あるのでは?」
「!」
「「よし、鑑定!!」」
『蜘蛛』
あ、はい。知ってます。
多分あっちも同じ答え出てるんだろうな。
俺たちはなりふり構わず周りを鑑定し始める。
『壁』『石』『糸』『空気』『壁』 etc,
《熟練度が一定に達しました。スキル『鑑定LV1』が『鑑定LV2』になりました》
よし。マジでレベルが上がった!
この調子だ鑑定がんばれ!
「あ、レベルアップした」
「白も?」
「おっと、君には負けたようだワトソン君。じゃあ、お楽しみの鑑定っこをしようじゃないか」
「「えい」」
『スモールレッサータラテクト 名前 白』
出た。すごいぞ鑑定。
あ、自分にも。
『スモールレッサーバチュル 名前 青』
うん。本当にバチュルでまかり通るのそれ?
壁は?
『迷宮の壁』
ふーん。
ここ迷宮なんだ。
出れるの?
「青」
「なに?」
「出れるかは後だ。この迷宮内でずっと生きていけるくらいには強くなろう」
「うん」
そしてたった今。
お腹が減ったところで再び鳴り子が鳴った。
二人とも「共生」忘れてるな……。
あと、称号とかの表記少し変えてます。理由は書きやすいからです()