バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

47 / 177




40 食

迷宮の入り口。

私は隠れながら様子を確認する。

てか、めちゃくちゃデカい扉あるね。

その割には脆いけど。

逆に脆いから厚くしてるのかな。

 

 

しっかりと警備員さんもいる。こんな暗闇で眠くなりそう。

 

『で、どうするつもりなんだ?』

『うーん、人様に敵意を持たれる前提で進めなきゃいけないのが大変。

 うまいこと出来ればいいんだけど』

 

私が人と関わりたいって言ったから、電脳はお休み。

言語を解読してもらうっていう仕事もあるしね。

 

接触を図るか?でも急に目の前に魔物が現れるとびっくりするかもしれない。

 

 

 

いや、バレてんなこれ。

鎧に隠れてるけどチラチラこちら見てるわ。

それでも何もやられないのはやっぱり私が無害だと思われてるから?

 

警備員さん二人で話し合ってる。

どうしたかな?

 

『単純にお前を殺すかどうかの議論じゃね?迷宮の異常には変わらないだし』

 

あ、前に向き直った。

私のことは完全に無視してる。舐められたもんだ。

 

まあいいもん。

胃袋を掴むことの重要さを教えてやる。

 

私は、持ってきていた卵を転がして転移した。

 

 

 

 

 

どうなってるかなー。

転移用ゲートをもう一度開いて、さっきの兵隊さんたちを確認。

 

うんうん。卵見てるね。

剣でつついてる。魔物の卵なんてびびるよね。

そりゃ私もびびる。

 

 

パキャ。

 

 

待って?

いや待って?

 

剣でそのまま割ってきたんだけど。

 

いやうそでしょー。

なんでそんなに人間ビビリなのよ。

蜘蛛の巣は焼き払うのに。

 

見たこともない蜘蛛の卵はびびって割るの?

本当によくわからない。

 

しょうがないなー。

人間は小心者なんだから。

私もここまできたら腕を振るってあげよう。

 

 

お料理教室、開催!

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

じゃあ。

お料理教室の始まりだよー。

 

1。適当な魔物を狩ります!

  カエルはギリ許容範囲!蛇がベストです!

 

2。皿に乗せます!蛇のお肉も乗せましょう!

  もちろん卵も乗せます!

  これがメインディッシュだし。

 

3。焼きます!蛇やらカエルやらは燃料です!

  カエルの汁がパチパチしても肉や卵にかからないように!

  かかると死にます!人だと。多分。

 

4。毒味します!電脳さんに調べてもらって大丈夫ならまあ大丈夫でしょう!

 

 

てなわけで、どう?

 

『多分有毒。あくまで地球の世界の人間基準だがな』

『え?』

『カエルの毒が混ざっちまったみたいだな。もうカエル温めるのやめとけよ』

『もう混ざっちゃってるし。またヘビ狩ってくるの?』

『ああ』

 

マジか。

もうアースたちに持ってきてもらうか。

 

『てか、なんでお前糸使わないの?糸使えばいいじゃん』

『え?』

 

ーーーーーーーー

 

 

 

ある日のことだ。

違和感が生まれ始めた。

 

ある日、よくわからない蜘蛛が隠れていた。

脚が8本だったしあれは蜘蛛だろう。

 

そいつは、俺たちの方向をじっと見つめていた。

しばらく見ているが一向に攻撃してくる気配がない。

手のひらに乗るようなサイズだし戦ってても勝てるとは思うが。

 

「相棒。なんだアイツ?どこから出てきた蜘蛛だ?」

「さあ、どうする?」

 

相棒も気にかけていたようで話しかけてきた。

確かにこんな魔物はいねえ。

見たこともない。

だが負ける気もしない。

 

「ほっとくんでいいんじゃねえか」

「そーだよな。害があるわけでもなさそうだし」

 

そして、俺たちが目を離したら消えていた。

一つの卵を残して。

 

 

 

次の日。同じ時間にその蜘蛛は再び現れた。

そして俺たちに手を振った。蜘蛛が手を振るハズはねえ。

でも確かに振ったんだ。

少なくとも俺にはそう見えた。

 

そして、その前日のように消えた。

再び置いてある卵。

昨日は食えないだろうと思って割った卵も、あの時なら食えそうだと思った。

なんの根拠もなかったのにな。

 

相棒も同じことを思ったみたいだ。

 

「どうやって食う?」

「焼いて食うのが良さそうじゃないか?害は無いだろ」

「バッカお前。卵だぞ。害があるわけねえじゃねえか」

「それもそうだな」

 

その日は俺たちで卵を焼いて食った。

もちろん、調味料なんてものはねえ。塩も香辛料もない。

それでもなかなかに美味かった。

 

 

 

またその次の日。

ソイツは自分から近づいてきた。

もちろん、俺たちも警戒しない。

警戒するようなものでもないだろう。

俺たちに飯をくれてるんだし。

 

蜘蛛は糸を出して、火魔法で焚き火を始めた。

蜘蛛が魔法を出すとは凄いな。

しかも苦手なはずの火魔法。

女神教に存在するそれこそ神獣か?

 

焚いた火の上に皿を乗せていく。

皿は妙に赤いし硬い。

石の割には軽いな。

この皿はなんかの生物の鱗か。

神獣ならこんなことをしてもおかしくないが。

 

 

 

恐ろしく頭が良い。

さすが神獣だ。

こんなこともできるとは。

 

蜘蛛は、その後俺たちに皿をスッと差し出してくれた。

 

優しいな。

魔物と対峙しているということを忘れてしまいそうだ。

というより、その時は忘れていた。

今も忘れているのかも知れない。

警戒心などはないのだから。

 

 

美味かった。

とんでもないほど美味かった。

生きてきた中で最も美味かった。

涙が止まらないほどだ。

この飯を一日一回食えるならこの仕事なんてやめていいと思えるほどだった。

その神獣は、俺たちの顔を見ながらうんうん頷いていた。

 

 

それから三日が経った。

その神獣は、今もなお俺たちに飯をくれている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。