空間から現れる黒ずくめの男。
やっぱり黒と一体化したような姿だ。
暗くなった風景に少しだけ同化してて見にくい。
管理者ギュリエディストディエス。
世界の管理をDから頼まれていて、同時に現在進行形でDにいじめられている男だ。
彼は私のことを細い目で見てから、ため息をつく。
『これで聴こえるか?』
『ああな、流石龍。昔から生きてただけあるじゃねえか』
『は?』
待って。何言ってんの?
電脳。
『私はDの作ったシステムの言語設定に干渉したのだが。これでも無理矢理やっているのだから普通は出来ない筈だ。お前はなぜ話せている?そもそもお前はDのシステム下で生きているんだよな?』
『あー。こちとら魔法改造して魔術もう作ってんだ。オリジナルは無理でも干渉程度なら出来る。結論としてはそっちと一緒だな。あと後者についてはノーコメントだ』
待って何言ってんの。
本当に。
ヤバくない、こんなこと言うと?
オレ様が話す。ボロ出さないように嘘つくぞ。
黙っててもらっていいか。
頭の中に電脳の言葉が響く。
私もどうしようもないのはわかってるし、とりあえず頷いておく。
しばらく続いた沈黙を破ったのはギュリエディストディエス本人だった。
『そうか。ならなぜ私が来たかわかるか?』
あ、はい。すみません。
流石に乱獲やばかったか?
『あー、とっくのとうに予想ついてるわ。オレ様たちが狩りまくってた竜だろ?オレ様はやめる気無いが謝っておく。申し訳ないな』
『やはり傲慢だな……。こちらも謝ろう。平穏に生きていたのに、こちらの世界の都合で死んでしまった。それだけでも十分な仕打ちであるのに、Dからこの世界に無理矢理送り込まれたというのは聞いている。外部の神が少し関わってるという話もあるが。本当に申し訳ない。だが、この世界の生態系を壊すまで暴れまわるのはやめてほしい。出来れば、あまり壊さないで欲しいのだ。この世界でじっとしていて欲しい。出来れば人間には関わって欲しくないし竜を狩ることで気が晴れるのならば喜んで受け入れよう』
恐ろしく下手に出てきた。
立場としてはまだギュリエディストディエスの方が圧倒的に高いと思うんだけど。
だって世界の管理者でしょ?
私、一応まだタダの電気蜘蛛としか認知されてないはずよ?
あれ?
これはDにバレちゃってるのか?
流石にミドラの時やりすぎたかも。
やばい。
『返答を聞かせてもらえないだろうか?』
この質問にはお前が答えろ。
お、おうわかった。
とりあえず正直に答えるね。
ギュリエディストディオスは抗おうとしてる。
この世界の運命に。
それならば私も、その覚悟には応えなきゃいけない。
私は電脳が発す言葉につられてゆっくりと言葉を紡ぐ。
『無理です』
管理者、ギュリエディストディオスは口を紡いだ。そしてただ一言、
『どうしてもか?』
と発する。
彼自身の、考え込んだ末の一言。
そりゃそうだ。
君が抱いてるものはあまりにも重すぎる。
君自身のしがらみが、あまりに強すぎる。
『はい』
『そうか。ならば私も何も言うことはできない。だが一つ聞かせてくれ』
なに?
なんのようについてだ。
出来れば穏便に頼む。私はまだ死にたくない。
『異世界人から見て私は滑稽に見えるか?』
なんだ、そんなことか。
全然Dにはバレてなさそうだ。良かった。
そんなこと私に聞くまでもないと思うけどな。
最高の一般人さん。
『私がなんとかしてあげる。だから私を助けてね』
『どこまでも傲慢だな。だが感謝する。つまりはそういうことなんだな』
『うん』
『では失礼する』
『待て、ギュリエディストディオス。
オレ様が少し話したいんだ。
ちょっとバーベキューに付き合え、時間はあるだろ?』
はい?
この人、爆弾投下したんだけど!
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『水竜の肉、思ってたのよりは旨い。誘ってくれて感謝する。部下を食うのは複雑だがな』
『おー、そう言ってもらえると嬉しい。
末端だし別にいいだろ。ところでお前の持ってるその酒、少しくれないか?』
『ドンドンくれてやる。
だが私を酒の席に誘ったってことは覚悟が出来てるってことでいいんだな?』
『出来てるわ。むしろそれ聞いてやるために誘ったって言っても過言じゃない。
せっかく誘ってやったんだから全部吐き出せ、な?
オレ様に出来ることは限られてんだし話したって問題ねーだろ』
なんだこの状況。
夜の砂浜で丸太が組まれて焼かれている。
その周りを囲い込む蜘蛛たちと、砂浜に置かれた丸太に座って話す蜘蛛と一体の人型の龍。
蜘蛛たちは龍と私に肉を取り分けて皿の上に乗せる。
マジでどうなってるんだこの状況。
しかも私の中には二つの人格があってそれぞれ話せるとか。
訳わからんでしょ。
電脳酔ってるっぽいし。
並列意思って酔うの?
それなら私も酔うかも知れないんだけど。
グラスとワインが不釣り合いだー。
ギュリエディストディオスが持ってきたの絶対キャンプファイヤー用じゃないし。
グラスだから割らないように注意しなきゃいけないし。
おお、肉ありがとう娘よ。
「本当にこの世界はふざけてるんだよ。本当に最低な世界だ。まずポティマスがクズだ。クズどころではなく存在してはいけない生命体だ。いくら釘を刺しても私の想定を上回る最低な策略を画策する。しかもそれがわかるのが毎回全て終わった後だから最悪だ。毎回致命的なところには行かないよう抑えることが出来ているから、今の言い方は間違ってるかも知れないな。そのせいで今の最低な状況が連続的に繰り返されてる訳だが」
「最低な状況とか草」
「私は娘いるから楽な人生送れてるけどねー。白もいるし」
「こちらは辛い人生だがな。ダスティンも己の信念に従って突き進んでいる。それ自体はいいんだよ。アリエルに関しても停滞はしているが下手な真似はしていない。これからする可能性特大だが。手出し無用だから本当にやめてほしいし貴様も動くだろうし、世界が揺れるようなことはしないでほしいのだが」
「そりゃ動くに決まってるだろアホ。白死んだら嫌なんだよコッチは。てかもー手遅れだろさっさとグラードン止めてこい」
「あー、グラードン動いたの?中層からどっか行ってくれたらうれしーな」
「そんな幸せな脳をしているから楽な人生が送れてるのか。そんな幸せ頭が考えるようなことはしているし、グラードンを止められるならもう止めている。いくら倒しても復活するから倒せないんだよ。今は海の水干上がらせながら歩いているしなにしたいのか訳がわからん。私以外グラードン止めようとしてる奴はいないしボッチにこのクエストは難しいすぎるんだ」
「頑張れボッチ。オレ様がいるしボッチ脱却じゃねーか?どっちにしろグラードン止まんなそうだけど」
「どうせカイオーガのとこ行ったんでしょ。ステータス見ても上がってるしゲンシカイキゲンシカイキ。星を一掃できるからよかったじゃん」
「私もそうしたい。いいよな星に住んでる人族の一掃。人間どもは自らが殺すサリエルを信仰するし、狂気の屑どもであるし生かす意味などないからな。だがサリエルがそれを望まないのが厄介だ。彼女の考えだけが障害ならまだしも神にはもうひとりヤツがいる。あれはあれでサリエルを放す気はなさそうだし完全に遊びのネタにしているから手に負えん。しかも最近は他の宇宙の最高神まで呼び込んで遊んでいるからどうしようもない。最高神も邪神のようだしあれとぶつかって破滅して仕舞えばいいのに」
「そりゃ無理だろ。神より上の存在であるオレ様を生み出した最高神だぞ?Dが適当に爆死することはあってもアルセウスは死なんて」
「あーお肉美味しい。おい娘おかわりカモン」
「神よりも上の存在ならこの状況をどうにかしろ。そもそもシステムの上で生きてるのに上の存在もなにもないだろ。お前もお前だ。私が監視者として置いていた龍を2匹も抹殺しているし当の本人には悪気がないどころか開き直っている。監視者を補充するのの大変さをわかっていなぃだろ」
「ああん?アース5体くらい譲ってやろうか?それで満足だろ」
「いいよー、私はギュリがそれで納得するなら」
「普通はおいそれとその地位の魔物増やせないんだよ。貰えるなら貰っておきたいがな。やっぱり貴様は異常だ。才能か?それともアルセウスの力か?」
「ま、大体アルセウスの力じゃねーの?そういや、この話Dにすんなよ。阻害かけてんだから。お前から言ったら全部パーだからな」
「肉くれー」
「いいよな力がある奴は。最高神も完全に観光気分でいるし遊ばれているのがよくわかる。部下の気持ちなんて考えたことないだろ。私もサリエルがいなければこんな星さっさと捨てているんだ。彼女が好きだから私はどうしようもないんだ。酒でも飲まないとやっていけない」
「マジで喋んなよ?ボッチだからおしゃべりになるんだよ。Dにオレ様の能力が知れたらサリエル救出も詰むんだ。マジで黙ってろ」
「男に会いたーい!」
「は?サリエル救出ってなんだ。詳しく聞かせろ」
私はお酒を一気飲みした。
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うん?
あれ。
明るくなってる。
私寝てたのかな。
頭痛い。
えーと、昨日ギュリとなに話したんだっけ?