バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

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58 神様、ひきニート?

村の人たちに卵をあげるようになって3日が経過した。

栄養失調だった人たちも元気になってきたし村にも活気が出てきたんじゃなかろうか。

そんな私は今日も千里眼で浜辺から村の様子を確認する。

 

 

私自身が会いに行けって?

無理無理。

卵渡すだけならまだしも人と会話するとか無理だから。

コミュ症にそんなこと無理だっての。

 

 

だから明日私の娘を派遣することにした。

もちろん最初の日くらいは私も同行する。

言語の勉強もしたいしね。

 

 

村の人たちは卵をいつも置いているところに小さな祠を建てていってる。

神からの恵みとかでも思ってるんだろう。

本当に神にはなるつもりだし、騙してるわけじゃない。

 

 

ちなみに砂浜の近くには大きな家が建っている。

電脳が引っ張ってきた地球からの知識で作っているものだ。

蜘蛛に合うように基本的なものの高さは調整してあるけど、地球にいた時とそこまで生活水準は変わっていないはず。

食べ物の種類が少ないのが玉に瑕。

 

 

『ひとついいですか?』

『なに、ハルユメ?』

 

 

アースたちにもレッキとした名前がある。私の目から離れた瞬間にそれぞれがキラキラネームをつけ始めたけどね。

地球と違って個々の意識っていうのを強く持ってなきゃいけないし、別にいいかもだけど。

 

 

『言語教えてください』

『私もわからないんだけど……』

『わかる必要なくないか、そもそも?』

『『え?』』

『言葉わからなったとしてもオレ様たち悪くねーじゃん』

『『え?』』

 

『オレ様たちが神様なのに下界の奴らの話わかる必要あんのか?』

『それは、ないね』

『ないんですか……』

『神は神らしく自由に動いときゃいいんだ。そしてたまに人助けすれば』

 

『人助けってどうすればいいんですか?』

『患部ごと抉った後治療魔法で治せ』

『え、電脳。何で患部ごと?』

 

『お前らこの世界の体の仕組みわかってんのか?』

『いや、わかってないね』

『私もです』

『なら患部ごと削っちまえ。治療魔法ならシステムで治せる』

 

なんかシステム便利だね。

 

-----------

 

そして次の日。

旅立ちの日。

 

私が旅立たせるのは、1匹の蜘蛛、

成長したよ、三日前から。

言語も結局少しだけ仕組んでさ、治療魔法も勉強させてさ。

名前も昨日確認してさ。

全く長かった。

 

『なに言ってんだコイツ』

無視無視。

私は何にも聞こえてないでーす。

 

『私、どうすればいいですか?』

『うん?とりあえず彼らが建てた小さい祠行こう?神だし別に通してくれるでしょ。じゃあ、出発ー!!』

『え?ちょっと待ってくださいよ!?』

 

ハルユメにはまた大きくなってもらった。

そして、出遅れたハルユメが私を追いかけてくる。

その前を誘導するように私が歩く。

完璧だ。

 

『なにがだ』

『GOD Knows』

 

 

おい電脳。何だそのため息は。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

真昼間から村の入り口から侵入する私たち。

周りにいる人たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。

しょうがないよね、見たこともない魔物なんだし。

 

 

お、でも気付いた人もいるみたい。

私たちが祠に向かってることに。

そして一人が気づくと後は早い。

 

 

話は伝染して、逃げる人は減っていく。

そして逃げるのをやめた人々は物陰から物色するようになる。

私たちを監視しているようだけど、実際のところ知的好奇心なのかな。

 

 

『過去の信仰舐めるんじゃねぇ。お前はもう信仰対象だ。今はまだないが、いつか命を差し出されるぞ。せいぜいその覚悟だけはしておくことだ』

『え?』

『簡単に言えば、知的好奇心なんて甘ったるいもんじゃねぇってことだ。一応そう考えとけ。

 じゃなきゃ後悔するぞ』

『そう。ありがとう。参考にするよ。ハルユメもわかった?』

『は、はい!』

『ならいーよ』

 

 

ハルユメ、だいぶ緊張してるみたいだ。

そりゃそうだ。

今までの人生で、自分を中心としたコミュニティにしかいなかったんだから。

私は産み落としてからの育児放棄で、ハルユメ自身はハルユメの子供としか生活したことがない。

人見知りになるのも当たり前だ。

 

 

『これだな、祠』

『思ったより小さいね』

『そりゃそうだ。配ってたサイズからして人より大きいこと想定されてないだろ。

 いや、単純に資材不足か。それか人手不足か時間不足か。いややっぱ時間不足か。

 そりゃ3日で大きい祠建つわけないか』

『電脳、なに考えてるの。てかどうするこれから』

 

 

祠は高さ2mくらいしかない。しかも高さの方が幅よりも大きいから、実際に使える面積はとても小さくなる。

神社の御神体を入れる箱が少し大きくなった感じみたいだ。

 

 

『とりあえず恵むぞ。懐柔しなきゃ話は始まらない。今までは卵を配ってきたが、治療とかもできれば今日からやりたい。ハルユメ、そこも頼む』

『わかりました』

『そんな固くならなくて大丈夫。そのために私も来てるんだし落ち着いていこう』

『まずは卵置いていくぞ』

『オッケー』

 

 

実は卵を産むのはだいぶ面倒くさい。少し違うか。

デバフ無しで卵を産むのは難しい。

卵を産むのにはHPを消費するからだ。

迷宮でみたいに卵をノーリスクで産むためには、エネルギー源を外部のものに頼る必要がある。

 

 

 

『てなわけで狩ってきたよ。水竜』

『コンビニ行くみたいに言わないでください!』

『だって楽だし。今回は気絶させてるだけだしこれで卵産んでみて』

『わかりました。少し祠に入ります』

 

 

水竜の尻尾だけを祠に入れるようにして、糸で入り口をがんじらめにするハルユメ。

私も言われたから手伝ったけど、なんで祠入ったんだろう。

 

 

『どこでも卵埋めるやつと違って普通デリカシーあるんだよ』

『失礼な。私は生存本能強いだけだよ』

『それをデリカシーないって言うんだよ。

 そもそも生存本能高いならちゃんと隠れて卵産むわ。あぶねーし。

 もと人間だから感覚狂ってんだよ』

 

 

あーヤダヤダ、これだから精神論主義者は。

さて。

次は私の後ろで平伏してる人たちを精神論で懐柔しなきゃいけないのか。

 

しゃべれないのに。







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