えっと?
神。力。ありがとう。
部分部分ではわかるけどやっぱりお礼を言ってるのか。
まああんなのほとんどタダだから別にいいんだけど。
私は話せない異世界語を紡ごうとする。
『あ、しゃべりたいならちょっと設定すれば普通にしゃべれるぞ』
『え?』
『ギュリから言葉少し学んだしな。アイツと会話した時点である程度文法も確認した。ま、オレ様は喋れん方がいいと思うけどな』
『なんで?』
『いやだって言葉わかってても喋れんだろお前。だったら言葉がわからない方が圧倒的に都合がいい』
それもそうか。
どうせカタコトになるのなら言葉がわかってない方が違和感ないか。
なによりコミュニケーション下手くそってバレない。
よし。
『人』
「は、はい!」
聞こえてる聞こえてる。みんながソワソワしてるし聞こえてるっぽい。しかもこの時点で騒ぐはずの子供を帰らせてるとか、教育がなってるじゃないか。村なのにね。
逆に村だからこそ子供の指導が行き渡ってるのかもしれないけど。
『私は神だ。私は食糧をあなた方に与える。あなた方は食糧多くある時に私に与える。いいか?』
「了解いたしました」
『よい』
『あなた方が良くない時、私の部下があなた方を治す』
「は、わかりました」
『私は去る。またどこかに行く。部下はここにいる。よいか?』
「わかりました」
おー、通じた。やっぱり言語は偉大だ。
『ねぇ、卵産んだ?』
『はい。もう出ていいですか?』
『いいよー』
モゾモゾと竜の尻尾を持って出てくるハルユメ。
ただ、さっき気絶してたはずの竜は絶命していて体力を吸い取られてる。
身体の損傷なしでHP0にするってなかなかこわいな。
『邪眼系のスキルならあるな。現に白も持ってるし』
白もスキルはすごいのばっかりもってるからなぁ。
根っからの天才には勝てやしない。
『卵配れる?私も手伝おうか?』
『いや、手伝わなくていいです。私でやってみたくなりました』
『おお。どんな心境の変化?』
『人って、それほど強くないんだなって思いました』
『おー。とりあえずその解釈でいいよ』
私は今まで人のことを強く恐ろしい存在と教えていた。でも、それは間違っているのかもしれない。
人間は弱く、1人だけじゃ何もできない存在だ。兵士50人が束になってもハルユメを倒せないだろうし。なにより、数だけは多いからひとりひとりにビビっていたらキリがない。
決めた。私の教育方針を変更する。
私はもう人間じゃないんだから、人のことを買い被らない。
ハルユメが卵を配る間、私は娘達に念話を繋いだ。
『娘達に告ぐ。人族は弱かった。人族は弱い存在である。人族が生きている理由は、数が多く他の生命よりわずかに賢かったからという理由しかない。今の人族は昔の人々の燃え滓でしかないのだ。
結論を言おう。人族を恐れるな。彼らはただ我らに近しい知能を持つ弱小種族であるのみなのだ』
あれ?
なんで私って人族を守ろうとしてたんだろう。
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あのあと治療もした。卵を配って人々の家も回った。
そして今、私はこの村を出る。
「ありがとうございます」
『気にしない。私は嫌ではない』
「ありがとうございます」
なんでこんな考えが急に生まれたんだろう。
この博愛主義だったはずの私に。
なんで、人間なんてどうでもいいと思い始めたんだろう。
『お前はその理由を知りたいのか』
『知りたくはないよ』
『でもな。お前はもうわかってるんだろ』
ああ。わかってるよ。わかっちゃってるよ。
わかってる。
最低なんだ、私は。
私の博愛は恐れから来てたってだけなんだよ。
私は1人で生きてきた。
それは人間だった頃からだ。
私の前世が浮かび上がってくる。
今まで私が考えていたことも、考えにもなかったことも。
残っていたのは愛してほしいという感情だったのか。
親に愛されながら生きてきた。
愛された私はずっと塾に通っていた。
愛された私は生活費を全て負担してもらっていた。
愛された私は広い一軒家を1人で使うことが出来た。
愛された私は何年もの間エアコンの中の涼しい部屋で過ごせていた。
愛された私はどんな生活を送っていてもお金で苦労することはなかった。
そんな私はポケモンにハマることになる。
もともと生き物が好きだった私は、ポケモンという架空の生き物を追いかけてさらに空想の中に潜っていった。
それにはしっかりとした生態があった。ネットでの対戦システムも、私の熱をさらに高めた。
私は対戦システムにおける戦法をネットにあげた。
それは瞬く間に有名になりテンプレのキャラ構成の一つを生み出した。
その構成に対しても様々な論争が起き、その世界では私が中心にいた。
これらが私にとっては愛だった。
だけど、私には沢山の愛がもうある。
沢山の、神からの、娘からの愛だ。
だから、もういらないと気づいたんだ。