久しぶりにアルセウス視点です
「うーむ、どちらを食べるべきか」
「さっさと決めろそこのお前!コッチは今忙しいんだ!」
明るい日の光のもと、エセ神官は出店の前で考えていた。
「ふぅ、毎度ありー!」
「ありがとな」
彼は串についた魔物の肉を頬張りながら周りを見る。
どうやら、彼が思っていたよりも魂が摩耗しているようだ。
呆れたような顔で周りを見渡し、再び肉を喰らいはじめた。
彼はこの世界に来てからというもの、様々な出店を回っている。
というのも暇だったのだ。
「ノリでこの世界に来たはいいが特にやることもない。それなら食べ歩きでもしていた方がまだ楽しめそうだ」
これが彼の基本的なスタンスであり、理不尽な点であると言えるだろう。
予想通りしっかりと奴隷制も存在している。
表面上には出ていないが路地に少し入れば一瞬で奴隷になれるだろう。
本当にラノベの異世界みたいなんだな。そう思いながらため息をついて食べ歩きを始める。
彼はアルセウス。
宇宙に1人しかいないはずの全能神である。
ーーまあ、もともと宇宙自体が1つではないのだが。
アルセウスにとってこの星にどれほどの興味があるのかというと、実は全くない。
今の星の状態は稀にだが見られるからだ。そしてそのまま崩壊していく。
だから基本的には持ち直す星など存在しない。
ただ、彼にはポケモンという劇薬がある。
その劇薬を試したいという神の単なる興味がここまで突き動かしてきたのだ。
ーー本当にタチの悪い神の悪戯である。
ーーーーーーーーー
ーープルルルル。ガチャ。
『こちらアルセウス。わかったことを言ってくからメモしろ』
『え?私まだ呼ばれるんですか?』
『残念ながら』
『は、はぁ?』
電話の先から、力強い声が響く。
その声にも呆れが含まれているのだが。
その名はギラティナ。
だいぶ強いのにアルセウスには頭が上がらない残念な神である。
本人は謙遜しているが、Dや冥土に勝てる程度には。
『わ・か・り・ま・し・た。言ってください』
『ーーまあいい』
『ヒトの魂の消耗率70%。再生減少割合0.08%。素材強度64.8%だ。ギラティナ、どう思う?』
『だいぶ末期ですね。なにかキッカケがあればまとめて崩れるんじゃないでしょうか。ほんとによく生きてますね、そいつら』
『Dと似たようなことお前もやろうとしてだけど、ここまでなったことあるっけ?』
『ないですよ。私がいる世界はそんなジェンガがシュッと立つ世界ではありませんから。てかもっと不安定ですし』
ギラティナのいる世界はやぶれた世界と呼ばれる。そこには地面と万有引力が存在せず、ただ砕かれた大地が空中を散乱しているだけの、不思議な場所だ。
ギラティナはそこで生態系を作ってみようとしてDの魂再生システムを使ってみようとしたのだ。
激しく変化する環境に耐えられる生き物が存在せず、断念することになったが。
『うーん、生態系とか一応凝り固まってるおかげで無事なのか?なんだかんだで上手くできてるものだな。
あ、そうだ!もうひとつ面白いことを発見したぞ!』
『なんです?』
電話から嫌そうな声が響くが、彼は気にしない。それほど興味深いものであったのだ。
『例の虫のスキルが、元の意識を抹消しようとしてたんだ!』
『は?』
『はぁ?』
ーーーーーーー
『つまり、最適解を求めるスキルが遂に本体の破壊へと着手したと?なかなかなこと言いますね』
『そのなかなかがおきてるからおもしろいんだよ』
道路脇のベンチに座り笑いながら足を組む。
周囲の人々がきみ悪がって離れていくが彼は気にしない。やはり、傍若無人を人の形にしたような化け物である。
『人工知能はいずれ感情をゴミと見る。合理性は不合理をゴミと見る。それと同じだ。
電脳は青をゴミと見做した』
『ーーそのままでいいんですか?』
『ああな』
『え』
『最悪青が死んだとしたら、なにになると思う?』
『いや、わかりませんよ。なにを考えてるんですか』
ギラティナは呆れたように声を出す。
ただアルセウスがずっと黙っているために、想像もできないものなのだと唾を飲んだ。
『ーー星になる』
『はぁ?』
『青もといテル・ライズは、自身でエネルギーの生産と消費が出来る。すると面白いことが起きるんだ』
『神と星の関係を、1人で完結させることが出来るんだよ』
『は、はぁ』
なに言ってるんだコイツ。控えめに言って次元が違い過ぎる。
なに言ってるんだ。
『人と植物で例えてやろう。人は酸素を吸って二酸化炭素を出す。植物は二酸化炭素を吸って酸素を出す。これの神と星版だ』
『その意味はわかりますが……なぜ星になるのかがわかりません。そもそもエネルギーなんて生産してるんですかあの蜘蛛』
『いや、HPで卵産めるわけないじゃん』
『唐突なメタ発言!?』
『システムに対してのメタだよ。実は、強化産卵も最適解を目指すってプログラムしてだんだ。それが電脳によってHP1で卵1つに変化した。この意味がわかるか?』
『もともとエネルギーを生産していたから最適解がそれになったと?』
『ビンゴ。ま、エネルギーを生産してるのはこの世界のポケモン全般って確認出来たんだけどな』
『星になる理由は簡単だ。感情を失い行動が失われていけばエネルギーを消費しなくなる。そうなれば、生産するだけのただの星だ』
『ーーわかりました。あとひとついいですか?』
『ああ。ジャンジャン聞いてくれ』
『電脳と青は、互いにどう考えているんですか?』
『あー、それか』
『青は、電脳を信じ愛している。
電脳は、青を信じ宿り殺そうとしている。もちろん怪しまれないようにだが』
『青は、死ぬかもしれないですね』
『そうだな。ワレはそう思わんが』
『ちょっ、どういうーー』
アルセウスは通話を切り、街の外へと歩き出した。
消耗率…魂の質が低下している割合
再生減少割合…一世代の種族においての魂の劣化の速度(一部星の再生に使われるため親から子に引き渡されるMAエネルギーは親の持つもの以下となる)
素材強度…魂が劣化した結果で、魂自体の強度。劣化0%で強度100%となる