まずい。
頭だけになって吹っ飛ばされながら、私は指令を出す。
対象は周囲の蜘蛛とゼルギズ。
上手くいけば即座に回収して貰えるだろうが、状況は非常にまずい。
まさか上層から掘った穴からブレスをぶっ放されるとは。
しかも、相当な知能があるみたいだ。
電脳の知能を持つ奴にこんな単純なブレスに当てるなんてことはそうそう出来ない。
そして少なくとも、私の知っている電脳はこんな落ち度のあることをしない。
『電脳!
私がいない間に何があった?』
『白が許容超過のダメージを食らった。
忍耐及び不死が発動したことの合図がここまで届いてる』
『白は生きてるんだよな?
転移で助けに行かなきゃ!』
『大丈夫だ。
不死で問題なく生きてるし、おそらく原因であるはずの魔王も離れていってる。
深淵魔法を打ち込まれた形跡もないし、死なんだろう』
『魔王が白の生存に気づく可能性は?』
『限りなく低い。
てかテメーの心配をしろ。
下手すりゃあと1分でお陀仏だぞ!』
白が生きてるならまあよかった。
不死のスキルがなければもう死んでいたようだし、彼女もだいぶギリギリの橋を渡っている。
ここまで同時に攻撃されたなら、おそらく故意に仕組まれている。
完全にタイミングを合わされた。
白と私を同タイミングで狙い、私をキャパオーバーにして対処出来なくしようとしたんだろう。
おそらくパペットがが目標地点についたのが合図だったんだと思う。
となると、私と白が密接に関わり合っているのも知られているということだし、同時に高い連携能力があるということ。
本当に厄介だ。
だけどそんなこと考えてる暇はない。
クイーンはもう登ってきているし、体全部吹っ飛ばされたせいで魔法陣が安定して組めない。
もう逃げるための脚もないし、このままだとマジで死ぬ!
もういい。
やるだけやってやる!
私の持ってるもの最大限使って、お前を倒してやる!
だから、今は、誰か助けて。
ーーーーーーーーーー
ヤバい。
青が死ぬ。
青が死んだら世界は変わらない。
我が助けなければ。
何も変えられない。
なにも変わらない。
アイツは言っていた。
強者とはそれだけで尊き存在と。
我はそれを信じる。
奴は何も知らない我に全てを教えてくれた。
あの美しく、全てを見定めた龍のように我はなりたい。
だから、強くなり、我は全てを変える。
あのかの者が、奴の同胞を打ち破り世界を変革させてゆくように。
我が主である青が、愛に縛られながらそれを引きずり突っ走って生きるように。
我は本当の自由を生きたい。奴が言っていた世界を漫遊し、さまざまな奴と遊びたい。
さまざまな遊戯をしたい。
何者にも縛られることのない本当の自由が欲しい。
強さは正義だ。
強さを味方につけることで世界は変わり、我は変わる。
だから、助けなければ。
世界も、我をも強く変えてくれる青を助けなければ。
我は青に向かって突っ走る。
ーーーーーーーーーーー
クイーンの移動速度が思ったよりも速い。
まさか、スキル込みとはいえあの巨体でここまで高速に動けるとは。
パペットタラテクトは私と一緒にブレスでやられて消し炭になったから今はもう気にする必要はないけど、あいつが元凶だった。
まさかあいつが移動してたの、私の地形破壊を利用するためだったとは。
まさかが多すぎるし、アドリブも多すぎる。
マジでクイーンの賢さを侮っていた。
「おい!きたぞ!
てかどう回収すればいいんだよ!?
我マグマだぞ!
てかもうくっついてんじゃねーか!?」
こいつ、マジで口数多くてうるさいな。
私は牙から糸を出して殻に噛み付くようにしてくっつく。
殻の部分だけは岩だから、糸が溶けないんだよね。
「思ったより早かったね。
眷族の中では忠誠心低い方だと思ってたから飛んできたの驚きだよ」
事実、瞬間速度強化を多用してきてるみたいだし、並大抵の気持ちでは出来ないことを駆使してこいつはここまでやって来ている。
並列意思もないのに。
「貴様は我より尊い存在だからな。
我が守るのは当然のことと言える」
「うげー」
「な!?」
「いやまあね、なんとなく思っただけ。
感謝だけはしとく。
実際あんたがいなかったら危なかった」
「フハハハッ!
生き残ってから言え、そんなことは!」
「それはそう。
まずはアースたちと合流して。喰う」
「了解!
突っ走るから捕まってろよ!」
地面から、私たちを狙うようにして飛び出す大量の極太ブレス。
さっきまではブレスなんて放ってなかったのに急に放ってきたな。
おそらく私がゼルギズにくっついたから、ブレスを撃っても見失わないとでも思ったのだろう。
危な!
ゼルギズの尻尾辺りを掠めるように飛んでくるブレス。
これ、普通にブレス避けるのもムズイっぽいな!?
「あんた平気!?」
「気にすんな!!
肉体がいくら削られようと治癒魔法がある!
お前も吸収する準備だけしとけ!」
「おけ!」
そうか、こいつ貝系だから再生力高いのか。
だからといっても危ないことに変わりはないし受けないことが最良なんだけど。
そして子供たちのところにたどり着く。
ここからは、私の時間との勝負だ。
娘に乗り移るために私は糸を放った。
そして、同時に離れていくゼルギズへ向かって叫ぶ。
「よし、行ってくる!」
「わかった!
さっさと済ませてこい。
我は足止めをしてくる」
うん。
ゼルギズありがとう。
すぐに終わらせるから、生き残れ。