バチュルですが、なにか?   作:天廻シーカ

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80 特異点の胎動

「まず最初に言うと、白が見つけた機械は地下施設にあったものだ。そして、その地下施設はおそらくMAエネルギー採掘場。もともとは星から奪ったMAエネルギーを蓄えてた筈だ」

「筈っていうのは?」

「今はあの施設、死んじまってるからな。事実、ーー」

 

うーん。

私知ってることが少なすぎて話に参加できんぞ?

いや私がなにも知らないってわけじゃないんだけど、いかんせん実際に行ってきて調べた奴がいるから完全に役に立たない。

知識量的には単純劣化だし。

 

どうせだしオリジンに変わった身体を調べておくか。

指から斬糸を出して白からの拘束から抜け出す。

 

下を見た瞬間、現れる肌色の身体。

え?これ、いろんなもの露出してるよな?

え?

 

 

 

ッー!

わたし服着てないじゃん?

これどういうこと!?

 

「いやお前、別にもともとなにも持ってないだろうが!

 今更気にすんな!

 フハハハッ!」

 

うっさいゼルギズ!!

今はアンタ黙ってろ!

そういや、人間体験してないやつは服の重要性分かってないよなあ!

 

 

はー、はー、落ち着いた。

「そうだった、コイツ転生者でもなんでもないんだった。

 妙に会話できるモンスターだしてっきり服の意味くらいわかってると思ったけど」

「口に出てる口に出てる。

 あと地味に今我のことディスらなかった?」

「いや?」

「うん?」

 

 

まあでも、コイツだってオリジンなんだからすぐに人化するだろう。

そのために服の重要性は教えておかねば。

いつかは人里に降りてきてもらうつもりなのに、露出狂になると困る。

 

「ねぇゼルギズ」

「なんだ?」

 

 

自分の腕を指差しながら、糸を何回か巻きつける。

 

 

「これが糸、わかる?」

「いやわかるが。

 当たり前だろう。我だってお前の戦闘見てるんだから」

 

 

呆れるように肩をすくめるカタツムリ。

やっぱコイツ、やっちゃっていいのでは?

そのまま糸の量を一気に100倍にして、あやとりの要領で右手と左手で一気に編む。

そして、手の間に出来た一辺5cmほどの布を見せる。

 

 

「これが布。わかる?」

「この小さい糸の板がか?

 見たところ何の意味も無さそうなのに、ちゃんとした名前があるんだな。驚いた」

 

 

はー、これだから野生動物は。

アンタらの身体と人の身体は色々仕組み違うのよ。

 

「で、今の布を身体の形に合うように組み合わせて、身体の外側に纏わせる。

 それが服ね。人間っていう生き物はみんな、この服ってものを着るの。ちょっと作るのに時間かかるから家で作るけど」

「そうか!フハハハハッ!!そうか!

 完全に理解した!

 貴様は今人の姿をしていて、これから人の擬態をするために服という布の塊を纏うのだな!

 どうだこの名推理は!」

「はぁー。

 大体合ってるよ。私の羞恥心からってのも結構あるけどさ」

「だが、なぜ人は服を纏う必要があるのだ?

 貴様は簡単に作れるからまだ良いものの、人は猿の仲間なのだろう?

 糸すら簡単に作れないと思うが」

 

 

く、コイツ、カタツムリのくせにいい質問してくるじゃないか。

地味に猿の仲間とまでいい当ててるし。

 

 

「私の身体をちゃんと見ればわかるでしょ?

 あと、人のステータスは今の私くらいのステータスだから」

 

 

両手を広げて、クルリと回る。

相手が人間ならまだしもコイツはただのカタツムリ。

だから別になんも恥はないし、なんならマグマに触れたら死ぬから恐怖の方がまだあるといえる。

 

 

「うーむ、猿と違って胴体にはほとんど毛がないのだな。

 我のように粘液で覆われているわけでもないとなると……。

 となると、身体の防御のためか?」

「正解。服がないとめちゃくちゃ簡単に人は死ぬ。寒さとかでもいっぱい死ぬんじゃないかな。

 あと、サブ的な理由としては生殖が案外関わってたりするね」

 

 

「生殖か?」

「うん。

 人って他の猿より頭いいから、その分発生に時間がかかるの。

 妊娠っていう体内に入れたまま幼体を育てる方式を人はとってるんだけど、同時に年中発情期でもある。

 発生に時間がかかるということは、母体のダメージも結構来ちゃうし、産むのはそんなに出来ない。

 だけど男の欲は他の獣と違わず結構大きいから、男と女で釣り合いがとれない。

 だから、男女とも服を着るようにして、生殖器を隠すことで互いの欲情を誤魔化すようになったという話もある。

 あくまでも身体の防御の2の次だけどね。

 あ、あとついでに言っとくとここが生殖器の入り口。カタツムリは首らへんだろうから全く感覚違うと思うけど、いつかアンタも人化するんだろうし覚えといて」

 

 

 

私は股の部分を指差しながら話をする。

ゼルギズはウンウン唸りながら考えてるけど、正直やめて欲しい。

私だって好きでコイツに股間見せてるわけじゃないんだから。

いつかコイツだって人化するんだし、どうせ体温管理とか要らんやつにはこういう性的な話しか注意点ないんよ。

倫理感的なことも齟齬が大きすぎて伝わんないと思うしさ。

言っちゃえばもともとがカタツムリだから性の対象がどうなるかわからんけど、結局人になったら困るし。

 

 

 

いや、カタツムリ相手でも見てて嫌だけどさ。

私が人間に対して性的欲求抱いちゃってるんだから十分人でありうるんだろうなぁ……。

あー、ヤダヤダ。

サッサとコイツの目の前から離れたい。

私自身、どんな身体してるのか気になってる部分あるのに。

元男だったし色々気になるっちゃ気になるのよ。

胸の部分とか、股の部分とかさ。

 

 

「はいじゃあこの話終わり!

 アンタにはあとで助けてくれたお礼あげるから!」

「で、こういう場所を自主的に保護するために羞恥心が生まれたのだな」

 

タッタとゼルギズの目から逃げて、端にうずくまる。

そしてそのまま大きめの布を10秒くらいで作って真ん中に穴を開けそこに頭を通す。

これで見た目はてるてる坊主だけど隠す場所は隠せた筈だ。

でもそのかわりか、1つだけ知りたいことができた。

 

 

コイツにはなんの魔法が一番効くんだろう。

 

 

 

『おい青、とっくにこっちは話終わってるしなんなら白は先に帰ってるぞ。

 こっちはどうする?』

 

あ、そうか。

さっきから頭の中が静かになったと思ってだけど、もう白との会話終わってたのか。

ゼルギズのせいで色々考えちゃってたから気づいてなかったわ。

 

 

『うーん、一回最下層行こう。

 身体の作りとか、MA原子炉についてとか確認しないといけない』

『ゼルギズは?』

『別にほっといていいでしょ。

 死なんし』

 

 

「じゃ、ゼルギズ!

 報酬は明日まで待って!」

「オッケーだ!

 無事を祈る!」

 

転移の直前、耳に届く声。

私はそれに返答する事なく、ワープゲートに飛び込んだ。

 

うん?

最後まであいつ、私のこと馬鹿にした?






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