幽鬼狩人と騎士猫と隻眼竜人嬢。あるいは飯の話 作:黒モク
天を衝くが如くそびえる巨大な古代樹は新大陸の海岸にほど近い。
そのため、海側から潮風が強く吹くと、森の中に潮の香りが流れ込むこともある。
塩害が生じるはずなのだが、と植物に造詣の深い研究者が首を傾げていたが、この手の植生は旧大陸でも珍しくない。この世界の植物達は生命力が強力無比だ。多少の塩など屁でもないのだろう。
それはともかく。
特注の毒妖鳥装備をまとうハンターが森の中を進んでいく。足音も装備が擦れる音も発さずに藪の中を進む様は、装備と相成って幽鬼のようだ。昆虫染みた不気味なマスクも、その恐ろしさを強調している。子供が出くわしたら泣き出すこと必至だ。
そんな幽鬼狩人に続くオトモのアイルーは使い古されたアロイ装備をまとい、背中に両手剣を担いでいる。さながら騎士を思わせる姿だ。こちらもジャングル・トレイルに慣れているのか、足音の類はとても小さい。
とはいえ、新大陸調査団総司令が『フィールド特化の極み』と評する幽鬼狩人に比べると、騎士猫の動きはちと劣る。
ゆえに、蜘蛛の巣に顔を引っ掛けてしまった。
「ニャー……」
ぼやきながら蜘蛛の巣を剥がす騎士猫。
「今日は大蟻塚の荒地へ行くはずだったニャ……」
「仕方ないだろ。あいつがクエストを決めちまったんだから」と宥める幽鬼狩人。
「姐さんはいつまで経っても強引ニャ……」溜息をこぼす騎士猫。
2人のいう『あいつ』と『姐さん』は同一人物だ。
彼女は2人をサポートする元ハンターのギルド職員であるが、このチームの実質的なボスである。隻眼の見目麗しき竜人女性ながら、そのエネルギッシュさは古龍だって遠慮がちになるだろう(本人を前にしては絶対に言えないが)。
古龍素材で作られた強力な軽弩銃を担ぎ直し、幽鬼狩人は言った。
「ま、簡単な素材採取だ。さっさと終わらせちまおう」
「草っぽろ集めよりボルボロスやディアブロスと戦いたかったニャ……」
騎士猫はガチ勢である。
強いモンスターと戦うことに人生(アイルー生?)を費やしている。よって、騎士猫としてはプラント・ハントを主にしている幽鬼狩人はゴシュジンとしてあまり望ましくないのだが……彼と組むよう仲介したのは、かつてのゴシュジンたる竜人嬢だ。どーしよーもない。
それに、幽鬼狩人はヘボハンターではない。森林や密林の中ならイビルジョーさえ一方的に仕留める手練れだ。まあ、代わりに砂漠などでは小型モンスターに追い回される男だったが。
ちなみに、幽鬼狩人自身は森や密林が好きではない。本人は山岳地の方がよほど好きだ。山稜や頂から景色を眺めることを愛している。
その意味では、古大樹のてっぺんから景色を眺めることは楽しいので、この森は嫌いではないけれども。
「そうだニャ」騎士猫は良いこと思いついたというように「採取ついでに大物を狩ろうニャ」
「ついでに大物って……ドスジャグラスとかでも良いのか?」
「あんなトカゲ、狩ってもつまらんニャ。最低でもアンジャナフか、リオが良いニャ」
「……まあ、出くわしたならな」
「言ったニャ? 言質は取ったニャッ!」
喜色を浮かべる騎士猫に、幽鬼狩人は肩を竦めた。
●
時にハンター達は猟場のキャンプに集まり、情報交換をする。
竜人嬢は新米ハンターのチームから話を聞き、左目を覆う大きな眼帯を弄った。
「バゼルギウスか。また厄介なのが現れたな」
地球なる世界で例えるなら、バゼルギウスは対地攻撃機みたいな飛竜で、可燃性物質を含む鱗を剥離して空爆してくる。技量や装備が未熟な者だと一方的に爆殺されてしまう。
キャンプ地点へ逃げ込んできた新米チームはまさにそのクチらしく、装具や着衣のあちこちが焦げていて、九死に一生を得た、と言わんばかりの有様だ。
「高位ランクの人を呼んで討伐してもらうしかないでしょうか……」
新人チームのサポート係が不安げに言った。お下げ髪が可愛い彼女もまた新米だ。年頃は15、6。新大陸で生まれた世代だろう。最初の第一期から最新の五期まで約50年。新大陸で生まれ育った者達は少なくない。
「高位ランクの者なら今、丁度森の中をうろちょろしているぞ」
隻眼の竜人嬢は幽鬼染みたハンターと騎士然としたアイルーを脳裏に浮かべ、さらっと言った。
「遭遇したなら、あいつらがなんとかするだろう」
●
「バゼルギウスかよ。面倒臭ェな」
「相手に不足なしニャッ!」
目的の素材植物を採取した帰り道、2人が出くわした大物は爆撃野郎バゼルギウスだった。
げんなりする幽鬼狩人とは対照的に、騎士猫が獰猛に目を輝かせる。
「約束は約束だからな。狩るか」
幽鬼狩人は背嚢を降ろした。予備の弾薬帯を袈裟掛けし、その他を装具のパウチに詰めていく。
“仮に”これがゲームならば、アイテムスロットにたらふく物資を詰め込めば済む話だが、血肉の通う彼らにそんな都合の良い話は無い。大樽爆弾はパウチに入らない。もちろん、回避運動しながらアイテム調合なんて出来ない。
「立ち回りはいつも通りニャ?」
「ああ」幽鬼狩人は騎士猫へ首肯し「いつも通りにやる」
鬼人薬などを服用して準備を終え、幽鬼狩人は軽弩銃の装填用槓桿を引き、初弾を装填した。
「始めよう」
人間味の無い冷酷さを湛えて。
●
バゼルギウスは大型の飛竜種で、首と尾は太く、松ぼっくりみたいな爆発鱗をたらふく蓄えている。翼腕に広がる翼膜は猛禽の翼を思わせる形状をしており、顔つきも厳めしく恐ろしい。
地球なる世界の兵器体系で例えるなら、F16戦闘機と同級の体躯が襲い掛かってくるわけだ。怖すぎ。
こんな怪物にヤッパ一本、弩銃一丁、体一つで挑むのだから、ハンターという人種は頭がおかしい。
その頭のおかしい一人である幽鬼狩人は軽弩銃を抱え、木々の間を駆けていく。ゴーグルの奥からバゼルギウスを睨む眼はゾッとするほど冷たい。
暗緑色の幽鬼が木々の間を駆けながら、絶え間なく速射を繰り返す。森の薄闇の中、発砲炎が煌めき、軽弩銃の終わりなき歌声が響く。発射熱をまとう弾頭が光跡を曳きながら次々とバゼルギウスの頭部へ着弾していく。
そして、再装填の間隙を埋める騎士猫の遊撃。両手剣による一撃離脱の妙は完全な連携そのものだ。
バゼルギウスの怒りは激しい。頑健な鱗や皮を貫き、肉体を損傷する痛撃の嵐。しかも、“敵”は森の闇に潜み続け、姿を見せない。どれほど暴れ回っても、打ち倒すのは木々ばかり、薙ぎ払うのは草葉ばかり。
姑息っ! 小癪っ! 卑怯卑劣っ!!
バゼルギウスの激憤に伴い、太い首や尾の爆鱗が赤熱化現象を起こし、赤々と輝き始める。一挙手一投足と共に爆燐が剥離、放射されて周囲を爆破していく。
吹き荒れる弾幕。咲き乱れる爆炎。銃声と爆発音の大合奏。もうもうと林冠を貫いて立ち昇る爆煙。靄のように立ち込める粉塵。降り注ぐ土砂と枝葉。
まるで地球なる世界の近代戦が如し。
辺りを覆う爆煙に紛れ、幽鬼狩人の放つ弾幕を掻い潜り、騎士猫が吶喊。両手剣が一閃。
ずばっ。
額に深々と傷をつけられ、バゼルギウスは激昂の咆哮を上げた。
もはや音波の衝撃に等しい竜叫に蹴散らされる騎士猫。
その間隙を突き、バゼルギウスが小癪な猫を踏み潰さんとしたところへ、徹甲榴弾の弾幕が頭をぶん殴った。
耐え難い衝撃に脳を揺さぶられ、バゼルギウスは大きく怯み、ヨレてしまう。
ここぞとばかりに猛弾幕が襲い掛かる。もがくバゼルギウスの頭部や頸部へ吸い込まれるように次々と命中し、焼け焦げた大地に鮮血と肉片が飛散していく。
怯みから立ち直ったバゼルギウスは、悔しがりながらも形勢の不利を悟った。翼腕を羽ばたかせ、空へ脱出を図るも、鼻先にスリンガー閃光弾が打ち上げられて目を眩まされる。撃墜されて森の底に体躯を叩きつけられた。
絶え間なく続く痛み。増え続ける出血。命の流出が止まらない状況に、バゼルギウスは恐怖を覚え、同時に激昂した。
“小動物”如きに生命の危機に陥らされた事実に、バゼルギウスは生物として激怒する。
雄叫びを上げながら弾幕の発生源へ突撃。真っ赤に輝く爆燐を大量放射した。松ぼっくり似の爆鱗が一帯にばらまかれ、一斉に爆発した。
クラスター爆弾の爆撃を浴びたように、森の一角が紅蓮の爆炎に満たされる。
瑞々しい草葉が一瞬で焼き尽くされ、大地も木々も焼け焦げた。巻き上げられた大量の土砂や枝木がざあざあと降り注ぎ、爆煙と粉塵が濃霧の如く広がっていく。
バゼルギウスは口から血混じりの唾液をドバドバと吐き、大きな体躯を揺らすように荒々しく息をしながら、周囲を見回す。
敵。敵はどこだ。敵はどこへ行った。敵はまだ生きているはずだ。あの小賢しく姑息な敵はこの程度で死なぬ。殺す。必ず殺す。血一滴残らず消し飛ばしてくれる。
双眸を血走らせ、バゼルギウスは敵を追い求めて周囲を見回し続ける。
バゼルギウスは気付いていなかった。
林冠を突き抜けるほどの爆煙が立ち昇る際、スリンガーを使って高く飛び上がった影に。
その影が、ざぁざぁと降り注ぐ大量の土砂や枝木に紛れ、バゼルギウス目掛けて落ちてくることに。
その影――幽鬼狩人は落下しながら軽弩銃の照準を合わせ、引き金を引く。
放たれた徹甲榴弾の一連射がバゼルギウスの眉間へ吸い込まれ、爆発。
頑健な頭皮が引っぺがされ、頑丈な頭蓋骨に罅が入り、衝撃圧力により目鼻の毛細血管が裂け、バゼルギウスの眼鼻から血が噴き出した。
地の果てまで届きそうな叫喚を上げながら、バゼルギウスは焦土へ倒れ込む。
刹那、焼けた地面が盛り上がり、土の中から両手剣を握りしめた騎士猫が姿を見せた。
「さらばニャ」
騎士猫は両手剣を水平に構え、体当たりするようにバゼルギウスへ突撃。切っ先が吸い込まれるように眉間へ埋まり、皮膚が剝がれて罅の入った頭蓋骨を貫いた。
慈悲も容赦もなく、騎士猫は両手剣を捻ってバゼルギウスの脳を抉る。
戦場に轟く断末魔。
バゼルギウスの命の炎が搔き消され、狩りは終わった。
●
キャンプ場まで届く激しい戦闘騒音は、恐ろしい叫喚を最後に絶えた。
新米ハンター達と新米受付嬢は顔を青くしていたが、竜人嬢は気にすることなく、上品に茶を啜りながら採取物の記録と報告書を作成している。
彼女はまったく心配していない。
仮にこれが大蟻塚の荒地や瘴気の谷なら、新米達と同じくらい不安顔を浮かべていたかもしれない。しかし森林や密林ならば、幽鬼狩人と騎士猫を殺せる獣など居やしない。
竜人嬢は本人達には決して告げられない、面映ゆいほどの信頼を彼らに抱いていた。
そして、彼女の信頼は正しかった。
「あー、くたびれた」
森の幽鬼みたいな毒妖鳥装備のハンターと、
「久々に楽しい狩りだったニャ。次もこんなのが良いニャ」
騎士然としたアイルーがキャンプに姿を現した。
幽鬼狩人は煤塗れで、騎士猫は泥に汚れていたが、2人とも怪我一つ負っていない。
唖然とする新米達を余所に、竜人嬢は得意げな笑顔を2人へ向けた。
「成果は?」
「依頼の素材植物は無事確保。それと、ついでにバゼルギウスを一匹仕留めた」
さらっと告げ、幽鬼狩人は大きな背嚢と軽弩銃を地面に置き、背嚢から目的の素材植物と“ついでに”狩ったバゼルギウスの素材を地面に並べていく。
「余裕だったニャ」
上機嫌の騎士猫は続け、
「そうニャ。御土産もあるニャ」
背中に担いでいた荷物を降ろす。
白目を剥いて死んでいる三羽のヨリミチウサギだ。
「バゼルギウスの爆撃に巻き込まれたらしい。ま、飯に丁度良いと思ってな」
幽鬼狩人がそう告げると、
「よ、ヨリミチウサギを食べるんですか?」
新米ハンターが蛮族を見るような目を向けてきた。
彼にとって、ヨリミチウサギは環境生物……平たく言えば、ペットとして飼う類の小動物という認識だった。食う? マジで?
「え、食べたことない? 美味しいよ?」と新大陸生まれの新米受付嬢が言った。たくましい。
絶句する新米ハンターを一瞥し、竜人嬢は苦笑いして言った。
「よし。お前達をねぎらって私が腕を振るってやろう」
瞬間、幽鬼狩人と騎士猫は血相を変えた。
「か、狩りの後の気を静めるためにも料理は俺がやりたいな」
「そ、某は姐さんが剥いた果物を食べたいニャ。剥いて欲しいニャ」
「うん? そうか。ならば料理は任せ、果物を剥いてやろう」
竜人嬢はにっこりと優しく微笑み、テントの中へ入っていった。
幽鬼狩人と騎士猫は深い深い安堵の息を吐いた。
「作るか……」「そうするニャ……」
困惑する新米達を置き去りにして、料理開始。
●
兎の肉は脂が少なくさっぱりしているので、印象としては鶏肉に近いかもしれない。
幽鬼狩人は昆虫然としたマスクを脱ぎ、意外なことに端正な顔を晒して料理を始める。
剥ぎ取りナイフを使い、腹を裂いてワタを抜く。人によっては内臓も料理するが、今回は自然に返す。四肢の末端を切り落とし、まるで脱がすように毛皮をべりべりと剥いだ。
「皮は某が処理しておくニャ」
毛皮は衣服や小物に用いるため、捨てたりしない。
三羽のヨリミチウサギを皮剥ぎし、肉の解体へ移る。
頭を切り落とし、前脚を肩の根元から切除。続いて後脚を骨盤辺りから尻肉ごと切り離す。後は部位ごとに切り取っていく。フィレ、ロース、リブ、背肉。
解体処理が完了したら、料理に取り掛かる。
鳥の腿肉みたいな後ろ脚とリブはハーブと塩コショウをしっかり馴染ませ、タレを塗りながら炙り焼きに。
ロースとフィレと前足は一口大に切り分けて、根菜と共に煮込んでパプリカ粉たっぷりのグラーシュに(ついでに頭を放り込む)。
「人参は要らないニャ」
「好き嫌いは禁止」
「ニャー……」
背肉は輪切りにし、塩コショウで下味を整え、ニンニクと玉葱の微塵切りと一緒に焼く。焼き上がったら木の実のジャムを掛けて、兎肉のローストの完成。
キャンプに肉の香ばしい匂いとシチューの美味そうな香りが漂い始め、食欲を強く刺激する。嗅覚の放つ信号に味覚が反応し、口腔内に涎が満ちていく。
腹が、減った。
●
本日のお品書き。
ヨリミチウサギの炙り焼き(モモ肉・リブ)。ヨリミチウサギのロースト:木の実ジャムあえ(背肉)。ヨリミチウサギのグラーシュ(フィレ・ロース・前足・頭)。
デザートにフルーツ盛。
「ヨリミチウサギ……あんなに可愛いのに……」
御相伴に与る新米ハンターが複雑そうな顔で料理を見つめた。
「美味しいよ? 鳥より味が濃くて」と新米受付嬢。
ともあれ……
「自然の恵みに感謝して」
竜人嬢の唱和と共に、食事が始まる。
「美味しい……」「ね。美味しいでしょ?」「美味いニャー」
炙り焼きの腿肉をほおばった新米達が笑顔を浮かべ、
「肉がほんのり甘い。当たりだな」「タレが良い感じだな」「美味しーニャ」
炙り焼き(リブ)を上品に食べる竜人嬢。肋骨ごと噛み砕く幽鬼狩人と騎士猫。
ハーブの下処理がジビエ特有の獣臭を消し去り、丁寧にタレを塗りながら焼いたため、噛むたびに肉汁とタレが絡まって食欲を奮い立たせる。木の実を食べて育ったのだろう。肉が仄かに甘い。
兎肉の主役たる背肉のローストは甘酸っぱい木の実ジャムとよく合う。背脂が程よく溶けて染みこんだ肉とジャムの甘酸っぱい爽快感が織りなす調和が素晴らしい。ヤンチャな坊主と元気な少女の合唱みたいだ(意味不明)。
「美味い……っ!」「美味しいね」「ニャーッ!」
貪るように食す新米達。
「うん」「ソースの代わりにジャムを使ったが正解だったな」「うまうまニャッ!」
満足げに頷く竜人嬢。ごりごりとローストの背骨をかみ砕く幽鬼狩人と騎士猫。
パプリカ粉をたっぷり使った赤いシチュー……グラーシュは兎肉と根菜の旨みがよく出ていて味わい深い。一口大に切り分けたことも手伝い、掻き込むように食していく。
「っ! っ!」「美味しー」「ニャッ! ニャッ!」
ガツガツと食らい、遠慮なくお代わりする新米達。
「いい味だ」「具はキノコでも良かったな」「人参……」
上品にスプーンを扱う竜人嬢。グラーシュの出来栄えを再検討する幽鬼狩人。人参に渋い顔つきの騎士猫。
楽しい食事の時間は続く。
新米ハンターがお代わりをしようと鍋のオタマをすくい上げ、
「ひぇ」
ウサギの頭を当ててしまい、硬直した。
「お、当たりを引いたな」「ツイてるな」「脳味噌、美味しいよ」「ニャー」
周囲が笑う中、新米ハンターはウサギの頭を凝視したまま固まっていた。
「モンスターに負けて逃げ出すなんてよくあることだ。大事なのは無事に生き延びること。無事に生き延びれば再戦の機会も鍛え直す時間も得られる。無理をすれば、私のように良くて引退。下手すれば、モンスターの餌だからな」
バゼルギウスに敗れた新米達へ竜人嬢が口端を緩めながら語り、幽鬼狩人を一瞥する。
「こいつなんて高位ランクになって古龍を狩れる腕前になっても、未だに小型モンスターの群れに負けて逃げ出すぞ」
「人間、向き不向きはあるもんさ」と幽鬼狩人は気にもしない。
「相棒は不向きの直す気がないニャ」と騎士猫が揶揄う。
「お前は人参を食え」幽鬼狩人は大量の人参を騎士猫の器へ注ぐ。
「ニャッ!?」
ははは~
ヨリミチウサギの料理が食いつくされ、デザートのフルーツ盛を摘まみながら、幽鬼狩人と竜人嬢は新米達の質問に答え、時に新人時代の失敗談を語る。騎士猫は得意顔で武勇伝を披露した。
やがて、楽しい食事の時間が終わる。
新米達はクエストへの挑戦を再開し、幽鬼狩人達は拠点へ帰還する。
大自然へ挑む新米達を見送り、騎士猫が言った。
「いつかあの子達と一緒に狩りが出来たら良いニャ」
そんな日が来ることを祈り、三人は拠点アステラへの帰路に着いた。