幽鬼狩人と騎士猫と隻眼竜人嬢。あるいは飯の話 作:黒モク
旧大陸では新大陸に居る者達は『天才か、変人か、問題児』と評されているらしい。
その『天才、変人、問題児』が揃う新大陸調査団の中に、釣りキチが居る。
暇さえあれば、否。暇がなくとも釣竿を振るう彼は、孤高の魚類調査員と呼ばれているが、調査団の誰もがただの釣りキチと見做している。というか、他に見方がない。
魚の居る所に彼の姿あり。水場のある所に彼の影あり。
古代樹の森。その深層部で菌類の調査をしていた幽鬼狩人達は、釣りキチと遭遇する。
拠点近くの古代樹の森は比較的安全なフィールドであるが、強力な大型種も跳梁跋扈しているから、決して油断はできない。出来ないのだけれど、釣りキチは驚くほど軽装だ。
ツバ広帽とレザーベスト。水場に強いロングブーツ。後は釣り具。釣り具だけだ。武器は持っていない。せいぜいが後ろ腰の大振りなナイフくらいだろう。
そんな釣りキチが水辺の無いエリアに居るとは摩訶不思議。砂漠で半魚人に出くわしたような不可解さ。
資料を片手に、小型の採取用試験管に菌類のサンプルを収めていた竜人嬢が腰を上げ、尋ねる。
「珍しいところで会うな。どうしたんだ?」
古代樹の森、その深層にも水場が無いことは無い。自然が作り出した地下水道だ。魚も一応生息している。そんな地下水道の釣り場に向かう道中だろうか、と推測しつつの問いだった。
「餌集めですよ」
釣りキチは説明を始めた。
「新大陸のヌシ達を追い求めてきましたが、少し目先を変えてみたのです」
ひとしきり拠点近辺の魚類を釣りまくった彼は、近頃、餌の採取地による食いつきの違いを調べているとのこと。
たとえばミミズを餌にするとして、拠点内で採れたもの、古代樹の森で採れたもの、大蟻塚や大峡谷、陸珊瑚の台地などで採れたミミズでは、魚の食いつきに差があるか、という調査らしい。
意味の有無も意義の是非も価値もさっぱり分からない。が、釣りキチ本人は大真面目。真剣かつマジだ。
反応に困る幽鬼狩人と騎士猫と違い、竜人嬢は思うところがあったらしく、大きく頷いた。
「大変、面白いアプローチだ。研究成果がまとまったら是非とも拝見したいな」
せやろか?
「はっはっは。是非とも期待してくださいっ!」
この釣りキチ、ワイルドな見た目と違って言葉遣いが折り目正しい。
「むむ?」
釣りキチが幽鬼狩人の荷物を一瞥し、ハットの縁をわずかに押し上げた。
「幽鬼狩人殿は近頃、釣竿を振るっていないようですね」
「なんで分かったニャ?」
目を瞬かせる騎士猫と幽鬼狩人。
「釣竿が泣いているのが分かりました」と詩的に答える釣りキチ。「どうです? よろしければ、一緒にひと釣り行きませんか?」
「いや、今は仕事中だから」と幽鬼狩人が昆虫面マスクの中で困り顔を浮かべるも、
「作業はひと段落ついたし、構わないぞ」
竜人嬢が硬皮革製の鞄に試験管を収めながら、悪戯っぽく微笑む。
「夕餉に美味い魚を食べられるなら、否やもない」
そういうことになった。
●
古代樹の森、その外れにある岩場の海岸。沿岸の先にはアステラの影が見える。
この辺りは、地球なる世界のイグアナに似たジャグラス達が海岸で日向ぼっこしつつ、魚介類を食っていることが多い。ちなみに、イグアナは食える(鶏肉に似た食感らしい)。よって、ジャグラスも食える……のだろうか。
「成敗ニャッ!」
大剣を振るい、ジャグラスを追っ払う騎士猫。
幽鬼狩人も軽弩銃を撃ち、ジャグラス達を海岸から森の中へ追い払った。
「流石は高ランカー、仕事が早いですねっ!」
安全が確保されると、釣りキチが早速準備を始める。釣りができるとあって機嫌が良い。今にも鼻歌を口ずさみ始めそうだ。
その傍らで、幽鬼狩人も近頃使っていなかった釣竿と仕掛けを用意し、
「なんだか妙なことになったなぁ」
ぼやきながらも釣竿を組み立て竿先に仕掛けを結びつける。
2人が釣り糸を垂らしている中、竜人嬢はどこから用意したのか、日傘みたいなものを差しつつ、騎士猫を伴って海岸を散策していた。良家の貴婦人が従者を伴って磯遊びをしているようだ。地球なる世界なら西洋画家辺りが絵に描きそうな情景。
白雲の流れる蒼穹。燦々と輝く太陽。緩やかに打ち寄せては引き返す穏やかな波。柔らかで涼しい潮風。快い潮騒と海鳥達の優しい歌声。
平穏で心地良い昼下がり。
「フィーシュッ!」
――を釣りキチの謎の歓声が情緒を台無しにする。
流石は新大陸屈指の釣り人。糸を垂らせばたちまち魚が掛かり、竿を振るえばすぐさま魚が釣れる。すげー……
ただ、魚を釣り上げる度、釣りキチは魚が元気なうちに魚種とサイズ、魚の特徴、釣った場所、使用した仕掛けと餌を記録し、魚を優しくリリース。
この釣りキチ、基本的にキャッチ&リリースなのだ。
釣ったら食えよ魚を弄ぶんじゃねーよ、という意見も少なからずあるが、ま、その辺の難しい話は脇に置いておこう。
「なんでそんなポンポン釣れるんだ?」
一方、幽鬼狩人の釣竿には一向にアタリが来ない。ウキはウンともスンとも言わず波間で揺れている。時折、竿を挙げてみると、餌が跡形なく消えていた。
「アタリも感触も無いのに、餌だけ盗られてる。怪盗か? 海中に怪盗の魚が居るのか?」
頭の悪いぼやきを口にしつつ、幽鬼狩人は針に餌を付けて釣竿を振るう。
「はっはっはっ! 怪盗の魚ですかっ! 居るかもしれませんねっ!」
楽しげに笑う釣りキチに幽鬼狩人を嘲る向きは無く、
「ここは未だ謎多き新大陸。我々の想像を超える魚もたくさんいるでしょうからねっ!」
続く言葉が示すように、釣りキチは純粋に釣りを楽しんでいた。
「お、また来ましたっ!! フィーッシュッ!!」
●
野郎2人が釣りに興じる中、竜人嬢は騎士猫と共に海岸の散策を続けている。
磯遊びは童心をくすぐってとても楽しい。が、竜人嬢は元ハンターでギルド職員で、研究者でもある。磯の地勢や生態系をよくよく観察する。
仕方ないことではあるが……新大陸の調査は内陸部が優先され、沿岸や近海の調査は後回しになっているのが現状だった。
海にどんな生物やモンスター達が生きているのか、詳細は不明なままだ。
「この環境と生態分布を考えるなら、近海や沿岸に海竜種が目撃されていてもおかしくないんだが」
海にも様々なモンスターが居る。
ラギアクルスに代表される海竜種。エピオスなどの首長竜種。水底に潜む灯魚竜チャナガブルみたいなキワモノ。深龍ナバルデウスのように伝説的な存在もまだまだ居るに違いない。
竜人嬢は流木に混じって漂着したらしい、何かの大きな鱗を拾い上げた。かなり劣化していて鱗の持ち主は想像もつかない。
「この新大陸の海岸を隅々まで調査すれば、新種を発見できるかもしれないな」
「それは6期団以降の仕事になりそうニャ」
騎士猫は小さなカニを掴むと、カニに指先を挟まれて悲鳴を上げた。
「ニャアッ!?」
●
「フィーッシュッ!!」
もはや聞き飽きた感のある釣りキチの歓声を聞き、幽鬼狩人はげんなり顔を浮かべた。
容赦なく照りつける海辺の太陽にじりじりと焼かれ、幽鬼狩人は着衣が汗みずくになっている。昆虫面のマスクなどとても被っていられない。脱いで脇に置いてある。日除け代わりに汎用スカーフを頭に被り、だらだらと釣り糸を垂らしていた。
「釣れない……」
いや、釣れることは釣れた。ちんまい小魚が数匹。資源保護の観点から放流したから、実質釣果はゼロだ。
釣れない釣れない全然釣れない。どーして釣れないの。なーんで釣れないの。
「いっそ大樽爆弾Gでも投下してやろうか」
「むむっ! 爆弾漁は生態系を過剰に殺傷し、環境を破壊する罪深き行いっ! 釣り人としても、調査員としても、そのような暴挙は見過ごせませんっ!」
釣りキチが凄い剣幕で睨んできた。なお、その発言は完全に正しい模様。
「冗談だよ……ごめんて」
幽鬼狩人が身を引かせながら詫びた、直後。
「うぉっ!?」
ウキが一瞬で海中に没し、竿先が瞬く間に大きく弧を描く。凄まじい引きに、気を抜いていた幽鬼狩人は慌てて竿を持ち直す。頭に被っていた汎用スカーフがずり落ちて潮溜まりに堕ちたが、気にしていられない。
「うおおおおっ!? スゲー引きだっ!!」
「おおっ! 来ましたね、幽鬼狩人殿っ!!」と釣りキチが声を弾ませる。
超人的な身体能力を誇るハンターである幽鬼狩人をして、竿先が右へ左へ振られてしまう。大物だ。間違いなく大物である。
「こ、の、魚風情が舐めるなっ!!」
「魚を馬鹿にするのはよくありませんよっ!」
「そういう話は後にしてくれるかなっ?!」
幽鬼狩人が喚きながら竿を思いきり立てると、水面を大きな影が跳躍した。
長く鋭く尖った口先と立派な背びれ。ダイオウカジキだ。それもドス級の。
「おおっ! 素晴らしいサイズだっ!! 頑張ってください、幽鬼狩人殿っ!!」
釣りキチが興奮する。
「おうっ! 絶対に釣り上げてやるっ!!」
獲物の大きさに幽鬼狩人も昂奮する。
糸が切れないよう、針がバレないよう、細心の注意を払いながら、幽鬼狩人は大魚が疲れるまで格闘し続ける。
そうして数分に渡る持久戦の末、ダイオウカジキの引きが鈍くなってきた。
好機到来。
「ふんぬらばっ!!」
奇怪な雄叫びと共に、幽鬼狩人がフィニッシュムーブを仕掛ける。
ハンターの怪力にさしもの大魚も屈し、その体躯を海中から引っこ抜かれた――刹那。
どばっ。
更なる巨大な紅い影が海中から飛び出し、ダイオウカジキの後ろ半分を食い千切り、大量の水飛沫をあげて海中へ消えていった。
ざあざあと降り注ぐ水飛沫を浴びながら、幽鬼狩人と釣りキチは唖然として波に溶けていく波紋を凝視し、次いで、竿からぶら下がる無惨なダイオウカジキを呆然と見つめた。
「今のは魚、いや、モンスターか?」
「おそらく。多分、海竜種か、魚竜種だと思いますが……これまで見たことがありません」
呆気にとられた2人は半分になってしまったダイオウカジキを見つめ、互いの顔を見合わせて、笑い出した。
「確かに謎が多いな、この大陸は」
「ええ。全くです。厭きさせてくれない」
やけっぱちに笑っていると、竜人嬢と騎士猫が戻ってきてゲラゲラと笑う2人に訝り、続いて、幽鬼狩人の竿にぶら下がる無惨なダイオウカジキを見て、目を瞬かせた。
「何があったんだ?」
「あー。凄いことがあったよ」
竜人嬢へ答えながら、幽鬼狩人は憐れなダイオウカジキに顔を向けた。
「ちょうど良い。この“食べ残し”を食いながら聞かせるよ」
料理の時間――ではない。
なんたってここから調査拠点アルテラまで目と鼻の先なのだから。
●
「食い千切られたダイオウカジキなんか持ち込みやがって。ゲンが悪いだろうが」
一般的なアイルーよりずっと大柄な料理長アイルーが毒づく中、料理人アイルー達が包丁を振るい、後ろの半身を食い千切られたダイオウカジキをズバッズバッと解体していく。
断面を切除し、残っていたハラワタとエラにヒレを除去。内臓の内壁を綺麗に洗ってから頭を落とす。胴体を輪切りにしていき、皮を引っ剥がす。
流石に本職だけあって、手際が良く素早い。しかも仕事が美しい。
「頭はカブト煮。身はステーキ。残った部分は唐揚げカレーとチーズ焼き、マリネでどうだ?」
料理長アイルーの提案に、
「美味いもんなら何でも良い」「腹減ったニャー」「お任せしよう」「ええ。お任せします」
幽鬼狩人達と釣りキチは素直に頷く。
かくて料理人アイルー達が踊るようにテンポよく料理を進めていく。
大きな寸胴鍋にカジキの頭を入れてぐつぐつと煮込み、
輪切りにした身を四人分のステーキに。
残った身は一口大に切ってカラッと唐揚げにしてからカレーに入れて煮込む。
チーズを乗せてオーブンでじっくり焼き上げる。
最後に薄切りした身と野菜をドレッシングソースと絡めてマリネに。
料理を待つ間、幽鬼狩人と釣りキチはカジキの半身を食い千切った紅い影について語り、竜人嬢と騎士猫の見解を求める。
「逃がした魚のなんとやらだと思うニャ」と騎士猫が身も蓋もない意見を返す。
竜人嬢は思案した後、幽鬼狩人と釣りキチへ言った。
「海棲モンスターと一言で言っても、海竜目か魚竜目かで大分異なるし、亜目で細かく違ってくる。もしかしたら実は水陸両生種かもしれない。何かしら特徴は無かったのか?」
「体は紅かった。これは確かだ。で、魚みたいなヒレがたくさんあった、はずだ」
「ええ。ヒレが多かったですね。一瞬のことでしたが、四肢は海竜種のように完全な海棲適応していましたし、尾にもガノトトスみたく尾ヒレがありました」
幽鬼狩人と釣りキチはそれぞれ記憶のページをめくりながら答える。
竜人嬢は左目を覆う眼帯の縁を指先で撫でつつ、再び考え込んでから、口を開く。
「たしか……王立古生物書士隊が記した未確認モンスターのスケッチ集に、君らのいう海棲モンスターが載っていた覚えがあるな」
「王立古生物書士隊の未確認モンスターって、伝聞頼りや目撃者のうろ覚えで描かれてる眉唾モンじゃないか」
幽鬼狩人が優男顔を仰々しくしかめた。
王立古生物書士隊はモンスター調査のエキスパート集団として知られているが、一方でトンデモな報告書や記録を残すこともある。
たとえば、初期記録集に記載されているババコンガの姿は、地球なる世界で言うところのカバみたいな姿をしており、おおよそ現在周知されているババコンガの姿と似ても似つかない。ベリオロスとウルクススを混同し、ウルクスス顔のベリオロスという奇怪なキメラを記録として残した例もある。
こうした未確認生物群のスケッチ集は史料価値こそ乏しいが、ある種の空想読本として楽しめるため、ファンが付いていたりする。
たとえば、竜人嬢とか。
「眉唾物とはなんだ。未確認なのだから不正確なのは仕方なかろう。それに、描かれている内容がでたらめとは限らない。ナバルデウスだって実在しない伝説生物扱いだったが、モガ村の近郊の海底遺跡で発見されたじゃないか」
ちょっとムキになって論説を並べる様が可愛い。
「お腹減ったニャア」と空気を読まずにぼやく騎士猫。
そうこうしているうちに、料理はラストスパートへ。
ガーリックバターソースの肉厚なステーキ。焦げ目が香ばしいチーズ焼き。食欲を乱暴に刺激する唐揚げカレー。見た目が美しいマリネ。
寸胴鍋から出される大きなカブト煮が大皿に盛られ、料理長アイルーが最後の仕上げに移る。気合いを入れ、全身全霊を注ぎ、料理人アイルー達が見守る中――
そっと小さなパセリを一つ添えた。
完成ッ!!
配膳アイルー達がダイオウカジキ尽くしを卓上に並べられ、幽鬼狩人達は無意識に生唾を飲み込む。
腹が、減った。
●
本日のお品書き。
ダイオウカジキのステーキ・ガーリックバターソース掛け。ダイオウカジキのチーズ焼き。ダイオウカジキの唐揚げカレー。ダイオウカジキのマリネ。ダイオウカジキのカブト煮。
飲み物はご自由にどうぞ。
「自然の恵みに感謝して」
竜人嬢の唱和を皮切りに、四人はダイオウカジキ尽くしへ襲い掛かる。
「うまぁ―――――いニャッ!!」
肉厚のステーキへ豪快に齧り付いた騎士猫が、口周りをソース塗れにしながら喝采を上げた。
ハーモニカと呼ばれるカジキの最も美味な背肉部分をたっぷり含んだステーキは、脂の乗った緻密な肉質とトロットロのゼラチン質が、ガーリックバターと官能的に絡み合っている。一度齧りつけば、もはや手が止まらない。
「溶けたチーズとホロホロになったカジキの身の調和が堪らないな」
チーズ焼きを上品に食した竜人嬢がうっとりと微笑む。
彼女の説明が全てだ。チーズの焦げた部分と溶けた部分がカジキの身と一体化することで、チーズの甘さとカジキの旨みが互いを引き立て合い、最高のハーモニーを奏でている。
「美味いっ!」
幽鬼狩人が一心不乱にダイオウカジキの唐揚げカレーを掻っ込む。
もはや説明など無用だ。こんなの美味いに決まってるじゃん。
「マリネもさっぱりしていて美味いですねっ!」
前述の各料理を食べ進めつつ、箸休めにマリネを摘まんだ孤高の魚類調査員が満面の笑みを浮かべた。
ステーキにチーズ焼き、カレーと濃厚な料理の中で、新鮮な生野菜と柑橘系の爽やかなドレッシングで和えられたカジキのマリネは、最高の涼風となっていた。主役になれずとも、この食卓に欠かせない唯一無二の名脇役。この食事における最優秀助演賞だ。
そして、来るぜ来たぜ主役の出番だぜ。
鋭く長い鼻を生やしたままのカブト煮だ。
見た目がアレなので、人によっては避けたがる眼肉の部分だが、そのトロトロチュルチュルの食感は人を虜にしてしまう(綺麗に食べると真球の水晶体が出てくるぞ)。珍味で知られるカマ、頬肉、頭肉。いずれも味が濃厚で病みつきになること請け合い。
「美味しい」「うっまいなっ!」「おいしーにゃ――――ッ!」「最高ですねっ!!」
四人は先を争うようにカジキの頭から肉を貪る。蛮族かな?
楽しい食事は続く。
謎の海棲モンスター談義から魚類調査員の釣り談議に移り、
「ある釣り場に行った時、岩だと思って登ったらテツカブラだったことがありまして。危うく食われるところでしたよ」
釣りキチの失敗談に騎士猫が思い出話を語る。
「それ、駆け出しの頃の相棒もやったニャ」
「たしか火山だったか。岩と勘違いしてウラガンキンの背中をよじ登っていたな。あの時の君の顔は今でもはっきりと思い出せるぞ」
クスクスと楽しげに笑う竜人嬢。
「アレは俺が登っても眠りこけたままだったウラガンキンが悪い」
恥ずかしい過去を披露され、幽鬼狩人は唇を尖らせて拗ねる。その様に他の3人がははは~と笑う。
やがて、カジキ尽くしは食いつくされ、食事は終わる。
「いやあ、今日は楽しい釣りが出来ました。また一緒に竿を振りましょう」
孤高の魚類調査員は三人とシェイクハンドを交わし、マイルームへ帰っていく。
きっと明日も新大陸のどこかで釣り糸を垂らすのだろう。
それは幽鬼狩人達も同じ。
明日も新大陸のどこかへ向け、冒険に出る。