トレセン学園は今日も重バ場です   作:しゃちくらげ

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桜並木と蕾たち。さて、どの蕾から花開いていくのか。
見定めるトレーナーも、ウマ娘も、どちらも大変である。


飴玉はきらきらと

 

 

 

 

「うわまっず」

 

飼葉ジュレップなる冒涜的な飲み物を恐る恐る口にするも、なんとも言い難い青臭さが鼻を抜けていった。清涼感はなく、なんならしっかりと草の香りがする。

 

しかも百味サイダーときた。

つまりあと99フレーバーが残されているということだろう。

 

この学園内の自販機といい、カフェテリアといい、ウマ娘好みの味付けのものが多いため、大概おかしなラインナップがまかり通っている。

職員向けの自販機などもあるにはあるが、そちらはそちらでウマ娘的には美味しくいただけるらしい。

甘いものが好物の子が多いためか、サイダーなどのジュース類は比較的減りが早いのに対し、ブラックコーヒーだけポツンと取り残されていることが多々発生している。

コーヒー仲間は大体が選択肢が残されていなかった我々職員か、コーヒー党を標榜する一部のウマ娘ぐらいなものである。

 

思わず端末を起動し、メーカー名を手がかりに調べてみると、歴代のウマ娘からのコメントなどが見つかった。

 

『トレセン学園の百味サイダーが懐かしい』

 

『廃盤になったけどたんぽぽ味がマイフェイバリット。復刻したら娘に買ってきてもらおうかな』

 

ウマ娘のことが更に分からなくなってきた。

 

たんぽぽ味とは一体。

それはそれで気になるのだが、それよりもトレセン学園OGかつ現人妻と思しきウマ娘までコメントをしているあたり、根強い人気があるのだろう。

 

…。

 

いや、その辺の自販機でも見かけたこと無かったんだけど、どこで売ってるのこれ。

忘れていなかったら今夜にでもルドルフに聞いてみよう。

愛飲していたらどうしよう。

 

 

 

…しかしゴールドシップはどこから情報を仕入れているのだか。

リストラこそされていないが、新たに担当を取らなくてはならない状態というのはある種新人の野良トレーナーと対して変わりない。

まあ、今頃野良トレーナーたちはまだ目をキラキラさせて入学式で新任紹介などされているのだろうが。

 

昨日出た辞令の情報が一部でも既に学生間に出回っているということか。

トレーナーが担当を探すという情報だからリークされているのか、それとも潜り込んでいた輩がいるのか。

どちらだったとしても納得はできてしまうが、しかし情報統制がザルすぎないか。

末端のトレーナーが新しく担当を持つ程度のことがリークされているならまだいいが、重大情報が出ていたらどうする気なのだろう。

駿川さんあたりに状況を伺ってみても良いかもしれない。

 

ふと、きゃっきゃと明るい声が聞こえてきた。

入学式が終わったのだろう。

遠目に、まだ新品だろう制服に身を包んだ少女たちが、若干緊張したように頬を紅潮させたまま、楽しそうに歩いてくる。

 

まだこの学園に毒されていない彼女たちは、瞳を輝かせ、楽しそうに学園内を探索して回るのが例年お馴染みの光景だ。

まぁ、初等部から上がってきたばかりの、まだ幼いと言っても良い年齢の子たちである。

ウマとはいえ女子。姦しい事この上ない。

 

そんな彼女たちが目の前を通り過ぎていく姿をぼんやりと目で追いながら、まずい炭酸を喉に流し込む。青臭さと炭酸飲料特有の清涼感が激しい違和感を訴えながらも胃に滑り落ちていく。強炭酸のせいで一気に処分ができない。うぷ…。

 

両親の教育の賜物で、食べ物を粗末に出来ないのが今は恨めしい。

飲めるが、飲めるには飲めるのだが絶妙に飲みたくない味をしている。

どちらかというと漢方薬。しかも凄まじい青臭さというか、草の香りと微妙な野草感ある味わいに甘味料をぶち込んでみましたとばかりに暴力的に甘い。

挙げ句の果てにラベルには「カロリーゼロ」との記載されているあたり殺意が湧いてくる。

そういうところに配慮できるくせにこの青臭さに対する配慮がない。糖分すら取れないのかこの飲料は。人間からすれば良いところが全くない。

大体、ジュレップを名乗るならアルコールを入れて欲しい。

ああ、ケンタッキーダービーを観戦しながらミントジュレップを飲みたい。現地で。

 

…これを手に持ってウロウロするのも嫌なので、さっさと始末してしまおうと、ぐいと呷るが強炭酸がそれを阻む。

 

ぶるりとポケットの中で端末が震えた。

飼葉ジュレップの強烈な味わいに涙目になりながら取り出してみれば、ルドルフからショートメッセージが届いていた。

 

『すまない。来賓の対応などで今日は遅くなりそうだ。終わり次第自主トレを行うので、トレーニングメニューを送ってもらえないだろうか』

 

今日は忙しいというのに、律儀なものだ。

サボり癖とは無縁であることは大変ありがたい。

ひとまず、疲れているだろうことを考慮したトレーニングメニューを送る。

場所はある程度絞れるので、彼女がトレーニングに入った頃合いを見て顔を出しに行くとしよう。

 

 

 

さて。

どうしたものかな。

 

トレーナーのイントラで情報収集したところ、入学前から噂になっているウマ娘も何人かいたが、そういう子にはベテランが接触を始めるだろうし、私のような平トレーナーに順番が回ってくるのはまだ先の話。

多分おハナさんが上手い事スカウトしていくだろう。リギルは本当に強いし。

何故リギルのような学園内どころか国内トップのチームでなく、私のような新人が無敗の三冠バの担当などやっているのかは未だに疑問である。

リギルへの転籍を薦めたらめちゃくちゃキレるんだもの、ルドルフ。

 

寮からの通学路沿いに設置されているベンチに、胡乱なラベルのサイダーを片手にぼへっと座っている私は恐らく不審者という奴だろう。

普段ならここで持ち込んだお弁当を広げたり、ロードワークからの帰りにスポーツ飲料を片手にへばっているウマ娘が腰掛けているものだが、今日腰掛けているのは私だけだ。

身分証明代わりのトレーナーバッヂを胸に付けてはいるが、入学式を終えて入寮へ向かっていくウマ娘たちが遠巻きに、声を潜めてこちらを見てくるのがひどく居心地が悪い。

さっさと逃げ出したいが、かといって、早いところ目星をつけておかないと選別に時間がかかってしまうし、できれば選抜レース前に引き抜き或いはコンタクトを取っておきたい。

はー、と軽くため息をついて、眉間に指を当てて揉み解す。

意外とゴールドシップの寄越した不味いサイダーによるダメージがあるのか。それとも疲れが取れていないのか。どうにも目の疲れが酷い。

 

 

…。

 

 

ん?

周囲がざわついている。

 

「あ、あの…」

 

「うん?」

 

かけられた声に顔をあげる。

 

「シンボリルドルフさんのトレーナーさん…ですか?」

 

おずおず、と訪ねてきたのは、見覚えのないウマ娘。

やたらボリュームのあるツインテールに、頭にはティアラを乗せた栗毛のウマ娘。

そしてなんというかこう。

 

 

 

 

 

でけえな。

いやでけえな。

 

 

 

 

「え?」

 

「何でもない」

 

思わず人とウマ娘という種族の垣根とか危険予知やリスクアセスメントといった労働安全の概念もひとまず頭から吹き飛んでしまいかけた。

あぶねえ。でもでっかいのはいいことだと思います。

色々詰まってそうだ。夢とかそういう。ともかくヨシ。

 

「ええと、シンボリルドルフのサインでも欲しいのかい?」

 

稀によくある事態である。

最近はあまり聞かないというか、それぞれ別行動を取る時間が少ないので、サインやファンレターの仲介を依頼されることはだいぶん少なくなったが。

 

「うっ。それも魅力的なんですけど…」

 

何か言いたげにしているものの、言葉がうまく出てこないのだろうか。

もじもじと前掻きをしている。

前掻きは命の危機を感じるのでNGと言いたいが、まだおそらく多分純粋無垢だろうウマ娘に言っても仕方がない。

 

私は基本的には気長な方だ。

ウマ娘というか、オフではライオンじみたシンボリルドルフの我儘という試練をいくたびも乗り越えた豪傑であると自負している。

 

ごめんルドルフが聞き分け良すぎて大したことしてないや。

 

などと。

我ながら阿呆なことを考えていると、栗毛の彼女の傍から勢いよく何かが突き出てきた。

こちらは鹿毛の子だ。

ショートヘアだが前髪で片目を隠している、なんというか軽い厨二病のようなウマ娘。

元気一杯、というか溌溂、というか。

勢い余ったのか、栗毛の彼女を弾き飛ばしながら前に出てきた。

 

それまで丁寧な姿勢だった栗毛の方が一瞬、目を吊り上げて怒鳴りかけたのが見えたが黙っててやるのが情けだろう。

優等生然とした像は作っているな。この時点でのトモの鍛え方、それに目付き、表情や耳、尾の動きから読み取れる範囲では、生真面目な優等生のガワを被ってはいるが、相当負けず嫌いというか、気が強いタイプだろう。

…なんで分かるかって?似たようなのが身近にいるからね。

それと、この2人は知り合いだろうな。

 

「すげえ!テレビで見た事ある!アンタが皇帝を育てたトレーナーか!」

 

キラキラと目を輝かせて、というには少々強すぎる気もするが。

ボーイッシュな鹿毛の子がぐいぐいと迫る。

 

「う、うん。まぁそうだね」

 

私が育てた、と言うには少々語弊がある気がするが。

支えはしたが彼女は勝手に育っていったような気もする。

 

「っとと…ええと、わりぃ、オレはウオッカってんだ。今日からこの学園に通うんで…」

 

と、何か言いかけてウオッカの姿が高速で横にぶれた。

栗毛の方が目にも止まらぬ勢いで弾き飛ばしたらしい。

 

「バカがすみません!私はダイワスカーレットと言います。お聞きしたいことがあって…」

 

やはり既知だったようだ。あと気が強いのは確定。おそらく口調も相当作っているな。

表情筋が若干ぎこちなく痙攣している。本当はそのまま掴みかかって喧嘩でもしたいぐらいなのだろう。

だが、それも一瞬で消えた。自制心というか、体面が勝ったらしい。

ダイワスカーレットというらしい彼女は、若干あざとさを感じさせる上目遣いで此方をじっと見つめている。

 

何なんだこれ。

ふと周囲を見れば、いつのまにか人だかりができている。

 

あぁ、そうかこんな往来だものな。

目立つよね、そりゃあ。

後でルドルフに怒られないといいんだが。今更感がすごいが。

…ここ、生徒会室から見えない位置だよな?

 

「いいよ。何だい?」

 

「トレーナーさんは、今年はスカウトされるんですか!?」

 

うん?

 

「シンボリルドルフのトレーナーがそろそろ次のウマ娘を育て始めるんじゃないかって、今朝のニュースにあって…」

 

ああ、なるほど。

あの記者め。どこからすっぱ抜いたんだ?昨日の辞令だぞ?

話が通じないくせにやり手だから困るんだよな…。

 

「あー…まぁ、そうだね。今年は新しく、最低2人は取ろうかなって」

 

瞬間、周囲がざわめく。

 

「それじゃあもしかして、ここで下見を…」

 

「ベテラントレーナーの先輩方と違って、一目じゃあ見抜けない未熟者だから、時間をかけて探さないといけないからね」

 

さらにざわめく周囲。

新入生たちはみんな、トレーナーからのスカウトに憧れる生き物だ。

自らチーム採用試験に応募するウマ娘が多い中、直接スカウトされるということはつまり、「才能と努力が認められる」ことに等しい。

実際にスカウトされるようなウマ娘は、総勢2000人を超えるウマ娘が在籍するこのトレセン学園でも一握りの「上澄み」だけだ。

可愛らしいウマ娘たちのビジュアルに反して、現実はひどくシビアで厳しい。

毎年、最寄駅の駅員が泣きながら田舎へ帰る子を見るのが辛いとこぼしているが、私たちトレーナーも数が極めて限られている以上、どれほど見てやりたくとも時間的に不可能だ。

仮にやれたとしても、勝負の世界である以上は何も変わらない。

敗北し道を諦める者が出るのは、人間と変わらないのだ。なまじビジュアルがその辺のアイドルより良いため、悲劇として取り扱いやすいが。

 

ともあれ。

私のような木っ端トレーナーでも、数少ない中央のライセンスを持つトレーナーの1人。

経験や実力は兎も角、1年目のトレーナーだったとしてもスカウトされたいという願望は多い。

そんな一握りに入る人材を見定めていると聞けば浮き足立ってしまうのが新入生たちだ。

きゃいきゃいとはしゃぐ姿は可愛らしいものだが、その瞳の奥に潜むのは炎。

無自覚に、しかし膨大な熱量が渦巻いている。

勝利を奪い取り、たった一人だけの勝者として立つために、彼女たちはここにいるのだ。

トレーナーの絶対数も、受け持てる限界数も少ないため、あぶれる子は多く出る。

だが、一定以上に優秀なウマ娘は、むしろ引く手数多だ。

彼女たちも、現時点ではまだ、見定められる側であり、見定める側でもある。

迂闊な言動は避けるべきだろう。

 

「すまない、通してくれないか」

 

熱が高まっていく中を、よく通る凛とした声が響いてきた。

人込みがパッと割れる。

 

こういうことができるウマ娘は数が限られている。

在校生なら、精々がシンボリルドルフか、エアグルーヴか。

エアグルーヴならもう少し声の響きが怜悧だ。

あとはごく一部の奇矯というか、トンチキな生徒もできるかもしれないが、その場合はもっと不安や困惑が先立つし、新入生はまだ危機管理意識というか、ヤバい上級生というのを知らないため、難しいだろう。

 

…まぁ、いちいち聞き分ける必要もない。

案の定、人垣を真っ二つに切り開いて、ルドルフが靴音も高くやってきた。

忙しいとはいえ、これだけ騒ぎになってしまえば気づくか。

 

「誰がこんな所で渋滞を起こしているのかと思えば…君か」

 

やれやれ、と軽く頭を振り、頭痛を抑えるかのように額に手をやる。

生徒会長というのも大変だよなあ、とぼんやり思う。

よりによって騒ぎの中心地に自分のトレーナーがいたりしたら、私だったらどうやって対処すれば良いのか分からなくなるだろう。

 

「やあ、ルドルフ。お疲れ様」

 

とりあえず片手をあげて挨拶をしてみる。

にへら、と緩い笑顔を浮かべている自覚はあるが、こういう時どういう顔をして出迎えたら良いのか本当にわからない。

ゴールドシップのように脱兎の如く逃げ出せばよかっただろうか。

 

「お疲れ様。しかしこれから寮で荷解きをする新入生を捕まえて渋滞を発生させるというのは頂けないな?」

 

「見込みのある子を探そうと思っていたらつい熱が入ってしまってね」

 

「ははは、熱心なのは良いことだが、ね」

 

少し棘がありつつも、呆れたような視線。

ちらり、と一瞬ではあるが、ダイワスカーレットに対して底冷えする目を向けた。

レース直前の、射殺すような目を。

 

叱られたと思ったのか、ダイワスカーレットとその隣にいたウオッカが身を竦ませる。

いくら負けん気が強い子が集まりやすいとはいえ、「皇帝」がいちいちめくじらを立てるようなことではない。

エアグルーヴだったらどうかわからない。

あの女帝、ちょっと短気だからな…。

 

…にしても。

掛かっているな。

今朝は早朝から料理していたようだし、入学式のスピーチなどでストレスが掛かっているのだろう。

いくら皇帝とはいえ、まだ年頃の少女だ。

気を張っていることに違いはない。

 

「ええと、ウオッカ君と、ダイワスカーレット君だったね。話の途中で悪いんだけど、怖い怖い愛バに見つかってしまったから、これで退散するよ。話はまた今度ね」

 

ルドルフが一瞬だけ、目を見開いた。

 

話の途中で打ち切ってしまうお詫びを兼ねて、カバンに常備しているキャンディを素早く取り出すと、新入生の二人に押し付ける。

子供扱いしている気もするが、大体のウマ娘は甘いものを好きなので謝意を伝えたりするときに便利なのだ。今までルドルフ以外に使ったことはほとんどないから、実際のところ効果があるかは不明だが、うちの皇帝様は大体このキャンディを口に放り込んでやれば大人しくなる。

 

「皇帝お墨付きのキャンディ。美味しいでしょ?」

 

「むぐ。は、はい…」

「むぐっ!?お、おう…」

 

こくこく、と大人しく頷く二人。

皇帝お墨付きとか言って口に押し込んでやれば、不味いとは言えないだろうという打算もある。

 

「はい、ルドルフも。お疲れ様」

 

そういって、ルドルフの口元に飴を押し付けると、あむと自分から啄むようにして飴を口に入れた。

掛かり気味の時は指ごといかれる事があるので覚悟していたが、この衆人環視の中では自制心が勝ったらしい。

 

「…んむ。はあ。君は自分の評価を甘く見過ぎだ。後で反省文を出すように」

 

腰に手をやり、呆れたように苦笑いを浮かべるルドルフ。

ころころ、と口の中で飴を転がしているのであまり威圧感はない。

甘いもので少し頭がリセットされたのか、威圧感が霧散した。

 

…甘く見るも何も、世間からの評価は大したことがない木っ端トレーナーなんだけどね。

とはいえ、ここでわざわざ訂正しても仕方がない。私の自己評価などより、彼女の面子の方が大切だ。ここはさっさと引っ込むが吉だろう。

 

ばたばたと荷物をまとめて立ち上がると、ふとルドルフがこちらの手元に視線を注いでいた。

じっと、感情の見えないそれは、手にしていた胡乱げなサイダー缶に注がれている。

 

「これかい?いやあ、私の口には合わなくてね…捨てるのも何だし」

 

軽く缶を振れば、開栓してからそこそこ時間が経っているにも拘わらず、しゅわしゅわと炭酸を弾けさせる音が聞こえる。

 

「まあ、ウマ娘向けのラインナップだからな。教職員の方が利用する自販機には入れていないはずなんだが」

 

「通りすがりに貰っちゃって」

 

誰に、とは言わない。

誰がこんなものを寄越すのかと考えれば、自ずと対象はある程度絞られていくだろうが、私の口から明言してしまうのも憚られる。

その意図を汲んだのか、ルドルフは瞑目して息を細く、長く吐き出して自制したようだ。

 

「そうか。飲み切れないならこちらで処分しておくが」

 

「悪いね。そうしてくれると有り難い。知っての通り、どうにも捨てられないタチでね」

 

はい、と手渡す。

ずっと手にしていたせいか、大分温くなってしまったそれを。

 

「じゃあ、そろそろ行くよ。また夜に顔を出すから」

 

「分かった」

 

バッグを肩にかけて立ち去ろうとして、ふと言っていないことがあったことを思い出して、振り返る。

 

「ああ、最後に一つ。ーーー新入生のみんな、入学おめでとう。頑張ってる子のところにはスカウトに行くかもしれないから、その時はよろしくね」

 

なんて。

我が愛バである皇帝の御前なので、できるだけそれらしく、ちょっと頑張ってみたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然、後でしこたま叱られることになった。

 

 


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