トレセン学園は今日も重バ場です   作:しゃちくらげ

112 / 151
遠交近攻

 

 

 

 

 

おかしい。

妙、と言ってもいい事態だと思う。

 

トレーナーがこうしてよそのウマ娘をトレーニングに引っ張り込むというのは初めてのことだし、朝っぱらから乗バして乗り込んできたと言うのも只事じゃない。

一昨日の騒動からして、タキオン先輩はボクたちと同類だというのは認識していたけれど、しかし事態が急に動きすぎている。

 

たづなさんに気を揉んでいた隙に、大外から一気に捲られた、みたいな感じ。

 

3人目。

 

確かにボクたちはそれをずっと意識させられてきたのは間違いない。

今年のジレー?によって、トレーナーは最低でも3人のウマ娘と契約をしなければならない。

カイチョーがいたところにボクが滑り込んで、残り一人は最低限。

だから、ボクたちは残り一人を誰にするのか神経を尖らせていた。

 

担当トレーナーとウマ娘の関係の中で、特別な感情に発展しないほうが難しいことは確かだけれど、できればボクたちと利益がぶつからない子が入ってくれるのが一番だったのだけれど、よりによってここでタキオン先輩?

一昨日のことを考えるに、トレーナーのためだけに、あんな騒ぎを起こせるようなウマ娘が入ってきたらちょっと困る。

 

……どうしようかな。

単独でトレーナーを掻っ攫うには、ボクはまだ弱い。

 

カイチョーと手を組んでタキオン先輩を排除すべきなのか、それともいっそタキオン先輩と組んで、今一番ポイントの高いはずのカイチョーをボクたちと同じレベルまで引き摺り下ろす?

どっちにせよ、どっちかと組むと言うことはリスクを背負うと言うことでもあるかな。

うーん、頭が痛い話になりそう。

 

あ、でも待って。

さっきタキオン先輩は「3人目の可能性」って言ってたね。

と言うことは、カイチョーを煽るために言っている可能性もあるのかな?

 

「アグネスタキオン。それは所詮『3人目の可能性』だろう?それを勘案した上で、私のトレーナー君が私に何の報告もなく、突如として君を担当として連れてくる可能性は著しく低いと判断して差し支えがない。違うか?」

 

「くっく、確かにそうだねえ。私のモルモットくんはそう言うところは妙に………おやおや?そういえば風の噂で聞いたけれど、トウカイテイオー君の加入は確か……事後承諾、だったと聞いた気がするな。私の記憶違いかな?いやあこれは失礼」

 

ばちばち、とトレーナーとボクを挟むようにして、カイチョーとタキオン先輩が睨み合う。

カイチョーがすごい顔してる。

これあれじゃない?トレーナーから聞いたことあるけど、オグリ先輩にクラシック登録どうにかできないかって聞かれた時にしてたって顔じゃない?

 

……それにしても、タキオン先輩はカイチョーを煽るのが好きなのかな。すごい楽しそう。

頭良さそうだし、カイチョーも同じだから、お互いになんかこう、相容れないのかもしれないなあ。

 

ボクはどーしようかな。

 

「それは事後承諾に足る理由があったからだ。君とテイオーではそもそもの付き合いが違うだろう」

 

「いやはや、確かに私と会長の間には特段そういった繋がりはないねえ。けれど、担当トレーナーの側にわざわざ新たに担当するウマ娘について事前承諾する義務は、学則やトレーナー規範にでもあったかな?」

 

ひとまず、行き場を失ったらしいトレーナーの腕にほっぺ擦り付けておこう。すりすり。

あーこれしあわせ。

 

「信義誠実の原則を知らんわけでもあるまい?確かにウマ娘の側にそれを糾弾する正当な権利はないが、それはあくまでも通念上そうであるべきという前提の上で成り立っているのだから」

 

「そうだろうとも。であるからしてきみはテイオー君の加入に際しては遺憾の意は表明できたかもしれないが、そもそもその契約行為においては嘴を突っ込むことは許されなかった。だとすれば、それは私がそうだったとしても同様だろう?」

 

なんかボクの頭の上で銃弾が飛び交っている気もするけど、頭の上にふわりと優しい感触がして、顔を上げるとなんだか諦めたような顔をしたトレーナーと目があった。

戦場で死を覚悟したみたいな顔してるけど、これよく考えたらトレーナーのせいだよね?

と思いを込めてみたところ、そっと視線を外された。

視線を追っかけてみると、ガラスの向こう側で派手な頭……もとい、ボリュームのあるツインテールにちょこんとティアラをのっけたウマ娘が足をガクガクさせて何とか立ち上がろうとしている姿があった。

誰なんだかわからないけど、なんか大変そうだなあ。

あれ、今誰か通り過ぎた?

 

「減らず口を……」

 

「おやおや、どちらがだい?私はあくまでも規則と事実を口にしているだけだが」

 

それにしても本当にすごいなータキオン先輩。

カイチョーを相手に真っ向から煽ってる。

しかもこれだけ煽っておいて、耳や尻尾に不安も出ていない。

逆にカイチョーは、ボクが見た限りでは珍しく怒ってる?

イライラしたように靴で床叩いてるし。

 

トレーナーがある程度仲良くしてて、面倒を見たこともある相手、そして何よりもあの太々しさ……というか、カイチョーを相手にしても真っ向から煽ってくる相手というのは多分、カイチョー的には最悪の敵だろうなあ。

皇帝の威光を無視して、ロジカルにやりあえる相手なんてそう居ないだろうし。

副カイチョーのエアグルーヴは……うん、だめだね。崇拝してる感じだし。

つまり、真っ向から相対する、っていうのは珍しいんだろうなあ。いろんな意味で強すぎたから、その弊害なのかな?

 

うーん。どうしよう。

ここで無邪気にトレーナーに甘えてても役得だからいいんだけど、今後の身の振り方も考えないとまずい気がするんだよね。

あとは、一つ気になることが……。

 

カイチョーとタキオン先輩がヒートアップしていく中、突然バンと音がして、ダンススタジオのドアが開かれた。

 

「お届けもんやでー……ってちょちょちょい!アンタらまーた険悪な雰囲気出して何しとん!?」

 

あ、タマモクロス先輩だ。

 

「おっ、遅れてすみません!」

 

そしてその後ろから、桐生院サブトレーナーが慌てて入ってくる。

……あれ?ボク、あの人連れてきたよね?

どこかで落としちゃってたのかな。

 

「あ、桐生院トレーナー……」

 

「と、途中ではぐれてしまいまして……ダンススタジオの場所がわからなくなってしまって迷っているところを、彼女に……」

 

そういえば初顔合わせの時もタマモクロス先輩が連れてきてくれたんだっけ。

なんだかんだトレーナーと縁があるんだよねえ、この先輩。

今は色々あって別のトレーナーとの契約も切って、レースから退いてるみたいだけど……まあつまりはボクの敵になり得そうなんだよなあ。あと、距離が近い。

多分、担当になる前のボクよりも。

 

「せやでー。なんやほっといたらまたどっか連れてかれそうやったから、ウチが案内したったで。褒めてや」

 

「ん、ありがとう。桐生院トレーナーも、申し訳ない」

 

「感謝祭ん日に箸まきかなんか奢ってくれればええで」

 

ふんす、とドヤ顔で得意げに胸を張るタマモクロス先輩。

なーんか親近感というか、ボクの立場が脅かされている様な気がするんだよねえ……。

 

「……まあ、わかったよ。空いてる時間に連絡して。この間の事もあるし奢るよ」

 

「おっしゃ吐いた唾飲ませんからな!」

 

「君そんなに食べないでしょうに」

 

「あーん?縁日は別やろ。やけに食えたりせえへん?」

 

カイチョーとタキオン先輩がばちばちやっている中で、トレーナーはもう現実逃避なのかボクを抱えたまま移動し、タマモクロス先輩と桐生院サブトレーナーのところへそそくさと移動していく。

 

「それはちょっとわかるけど……箸まきってあれでしょ?割り箸にお好み焼き巻いた様なやつ」

 

「せやで!あれ食わな縁日ちゃうやろ」

 

「箸まき、ですか?見たことありませんが……」

 

桐生院サブトレーナーの一言で、タマモクロス先輩の動きが止まった。

 

「そういえば箸まきってボクも見たことないや」

 

「え゛っ、箸まきないんか!?縁日やろ!?」

 

ぐりん、と驚愕に見開かれた目がこちらを向いた。

なんというか、ボクよりも結構年上の筈なんだけど、リアクションが大きいのはやっぱり関西の人だからなんだろうか。

 

「あれ、関西圏特有だったと思うんだけど……」

 

「んなアホな……ウチの夢が……」

 

ずしゃあ、と音を立てて膝から崩れ落ちるタマモクロス先輩。

え、そんなに……?

関西の人のその粉物に対する情熱ってほんとどこからきてるんだろう?

 

「箸まきなら感謝祭の日よりその前のお祭り期間のほうが置いてるかもしれないけど……」

 

「っしゃ、じゃあそっちでーーー」

 

「あ、感謝祭の前日のオフはボクとデートだからダメだよ!」

 

「……自分案外強かやなあ……先約ならしゃーないわ。したら感謝祭ん時で頼むわー」

 

にこにこと腰に手を当てて機嫌良さげにしていたタマモクロス先輩だったが、急にその顔色が曇った。

そして、桐生院サブトレーナーも。

 

「………あっ、こらあかんわ。ほなまた。また連絡するでー」

 

「あ、ああ……」

 

そそくさとスタジオを後にしたタマモクロス先輩を見送る。

背後から、ちょっとひどい威圧感を受けながら。

 

「……テイオー」

 

「……トレーナー」

 

お互い目を合わせ、覚悟を決めて振り返る。

そこには、なんというかちょっとばかりお見せできないような顔をした、二人の般若もといウマ娘が立っていた。

 

「……トレーナー君?今私の聞き違いでなければ、どうもあの白いのと「感謝祭デート」をするように聞こえたんだが?」

 

「これはこれは、おかしな話だねえ。私たちが目を離しているほんのわずかな間に、ねえ?」

 

ごごごご、と空気が振動するような音が聞こえてくる。

カイチョーの周りはばちばちと変な放電音のような音が聞こえているし、タキオン先輩は心なしか目が濁っている。

 

「ねえ、トレーナー……」

 

思わず小声で言えば、トレーナーはそっとボクを地面におろした。

 

「なあトレーナー君?……感謝祭は私と回るのではなかったのかい?」

 

「それはもちろん。君のファンサービスには全て付き合うよ。その上で、タマモクロスへのお礼として少しばかり間を留守にするだけだよ」

 

「ほう。それでは埋め合わせとして、前日の……」

 

「ダメだよカイチョー。それ、ボクが約束してたんだから!」

 

「は?」

 

ボクのインターセプトに、カイチョーはびっくりした様に口をぽかんと開けて動きを止める。

 

そう、思い出して欲しい。

2週間前の模擬レースの時、ボクは確かに約束を取り付けていたんだ。

『次のデートはボクと』というのは、カイチョーが例のどさくさに紛れてデートを取り付けた際にボクもどさくさ紛れで取り付けた約束だった。

 

そして、今週末は感謝祭。

感謝祭は基本的にトレーナーはデビュー済みの担当ウマ娘のファンサービスやイベントに出ることになるので、その日はオフではない。

そのため、その前の日。いわゆる前夜祭として学園周辺で開催されるお祭りの日こそが、次のオフなのだ。

つまりどういうことか。

 

お祭りデートの権利は、ボクにあるッッ!……ということなのだ。

 

「……えっ………はっ⁉︎」

 

今になってそのことを思い出したらしいカイチョーが、顔を青くする。

あの時譲ったのは、単にカイチョーに譲ったわけではないし、あえて乗っかって「その次ね」と約束を取り付けたのも偶然じゃない。

 

そう、()()()()()()()()()()()()だったのだから。

 

「て、テイオー……?」

 

「ぶいぶい!」

 

「やられた………ッ!バカな、それでは私は……」

 

よし、強権で割り込んでこない。

ほとんど潜伏する様に仕掛けていたけれど、どこで気づかれるかという賭けに、ボクは勝った。

この時点で気づいても、今更トレーナーが前言を撤回することはない。

なぜかって、もうカイチョーと先週末にお出かけをしているからだ。

ボクの知っているトレーナーの性格上、こういうところでは公平さを重視する。あと、約束したし。

ということは、つまり今回のカイチョーは……。

 

「ん、あぁそうか。テイオーとのお出かけは丁度そのタイミングと重なるんだね。蹄鉄とか見たら少しそっちも覗こうか」

 

勝った。

 

「ふぅん。先を越されてしまったのは少々痛手だが……仕方ないな。会長は精々ファンサービスに勤しんでくれたまえ」

 

「………っ!」

 

カイチョーは今回割を食う。

唯一デビューしているから、基本的には去年のようにファンサービスのためにあっちこっちへイベントに駆り出されるし、しかも休憩時間にはトレーナーがタマモクロス先輩のところへ行ってしまう。

しかも前日はボクが抑えていて、ひっくり返そうにもカイチョーのプライドがそれを許さない。なにせ、つい先日のオフではいい思いをしたばかりだし。

ついでに、仮にトレーナーの予定が空いていても、基本的には視察なんかであっちこっち動き回っているのが去年と同じなら、時間を作る事も難しい。

 

本当なら、例年のようにカイチョーはトレーナーと一緒に視察して回るつもりだったんだろうけど、ここで仇となったのは二人の間にある「無言のうちの合意」だ。

いつも二人で一緒に行動していたから、お互いに一緒にいるのが当たり前になっている。

だから、トレーナーのスケジュールは実は、オフの日ほど白紙になっていることが多い。

……というのを、この間の自白剤のどさくさに紛れて聞き出してあったりする。

明確に約束を交わしたわけではない。ただなんとなく、開けてあるだけ。

そこにスケジュールを入れてくるのは大抵はカイチョーだし、もしくは仕事の都合だったらそちらを優先するという程度の暗黙の了解。

 

だからこそ、埋まっていないスケジュールさえ押さえてしまえばこちらのものだ。

多分、これも一度限りなんだろうけどね。

今度からは大事なスケジュールは抑えにかかるだろうけど、そうなってくればボクたちとの兼ね合いで多少トレーナーが融通を利かせてくれるはず。カイチョーの一人勝ちという事態は避けられる。

 

これで、ボクは春の感謝祭前日という絶好のデート日和の間、カイチョーからの妨害も封じたし、タキオン先輩が言った通り、生徒会の視察というのは多分今年もあるから、フリーで動ける時間も封じた形になる。

つまり、出先でばったり会うことはあっても、向こうは仕事なんだ。

 

………ま、とは言っても感謝祭の前後はずっとこの辺りはお祭り騒ぎだから、きっとどこかで遊びにいくんだろうけど。

 

それでも、カイチョーの動きを封じた状態でトレーナーとお出かけできるのは、大きな成果だと思う。

それに、そう!先日のボクが勝者となったレースの成果をこの機会に積極的に使っていきたいんだ!

髪型の好みとか、色々聞いちゃったもんねー。

 

にしし、と内心でほくそ笑んでいると、タキオン先輩がおもむろにとんとんと足を叩いて、トレーナーに話しかける。

 

「そうそう、トレーナー君。軽く動いた感じ、足の違和感も今のところは消えているよ」

 

にまにまと笑いながら、覗き込む様に。

最近気づいたけれど、この先輩は距離が近い。

物理的な距離の近さもそうなんだけど、なんと言えばいいんだろう。

ちょっとトレーナーに近い何かがあるような気がしてるんだ。それが何かははっきりとはわからないけれど。

 

「そうなんだー。よかったね!」

 

「……うん?ああ、ありがとう」

 

間にボクが割って入ってやると、少し残念そうに引き下がった。

深追いはしてこないみたい。

 

「そうか。……まあ、午前中は検査に連れていくけど、もしかするとメンタル面での不安が大きかったのかもしれないね」

 

「……タキオン先輩、足の調子悪かったの?」

 

あれで?あれだけ暴れておいて?

いや、あれだけ暴れたから、かな?

 

「ああ、実は昨日から少しねえ……それで今朝、トレーナーくんに診てもらいに行って、ついでに軽く動いてみて様子をみていた、ということだよ。何かあった時にすぐ私のトレーナーくんが対応できるように、ね」

 

え、それだけなのにあんなに煽ってたの!?

 

「そもそもアグネスタキオン、君とは契約をしていないはずだけど」

 

トレーナーのぼやきを、ピンマイクが妙にはっきりと拾った。

 

「えーっ!?あれだけのことをしておいてまだ認めないのかい!?」

 

尻尾をぴんと立てて驚く姿は、どうにも白々しいというか、嘘っぽい。

ほっとした、と思わなかったと言えば嘘になっちゃうけれど、3人目がまだ決まったわけじゃないと知って、まだもう少しの間、ボクがリードを稼ぐだけの時間があるということがわかった。

リードを稼ぐって言っても、新担当として加入すればそこからスタートするわけじゃなくて、今までの関係性がそのまま引き継がれていくわけだから、ボクの知らないところで仲のいいタキオンや、さっきそそくさと逃げていったタマモクロス先輩みたいな人が入ってくるとちょっと苦しいところではある。

 

やっぱり、どこかで共闘というか、協定なりを考えておかないといけないのかもしれない。

足を引っ張り合うというのは好みじゃないけれど、今のままカイチョーに独走されるのもちょっと困る。

かといって、たづなさん……たづなさんってボクたちの敵になり得るのかな。まだよくわからないんだけど、妙に距離が近いから警戒対象ではあるんだよね……ともかく、そういう人にいきなり横から掻っ攫われるのも避けたいし。

 

後でタキオン先輩を捕まえて、ちょっと今までの話とか訊いてみようかな。

多分もう警戒されてるとは思うけど、ここまで見てきたあの人の性格なら、そこそこちゃんと情報をくれそうな気もするんだよね。ボクという妨害のための手札を増やす方向で考えてくれるなら、だけど。

この後病院に連れていくってトレーナーが言ってるし、ボクもついていこうかな……病院キライだけど、背に腹は変えられないというか。ついでにボクの足も一応検査してもらっておけば、何か話のきっかけにできるかもしれないし。

 

……最近思うんだけど、ボクって結構出遅れてない?

なんだかちょっと危機感があるんだけど。

 

この感謝祭で少しは距離を詰めておかないといけないなあ。美容室とか予約できるかなぁ……みんなこの時期気合い入ってるから、混んでそう。

 

うーん……。

 

「ほう?であればやはり君は部外者だな。つまり、つまみ出しても問題ない、ということで相違ないな?」

 

そう言いつつ、カイチョーがわしっとタキオン先輩の頭に手を置いた。

めり、となにやら聞こえちゃいけない音が聞こえた気がしたけれど、当の本人は至って表情も変えずに飄々としたまま。

 

「生徒会長ともあろう者が、性急にことを進めるものではないよ。このトレーニングへの参加は、他ならぬトレーナーくんの意思なのだからねえ!」

 

むしろ楽しそうに両手を広げてそんなことを言い出した。

この人、本当に怖いものがないんだろうか。

 

「だそうだが?どうなんだい、トレーナー君?んん?」

 

ずい、とボクの頭を飛び越えて、カイチョーが顔をトレーナーに寄せる。

笑顔だ。笑顔なんだけど、その圧力がひどい。

あー、あれ怖いんだよなあ……。

 

「……様子を見るとは言ったけど、トレーニングに参加しろとは言わなかったね」

 

「ここで私を売るのかい!?」

 

まあ、あれはしょうがないと思うよ、ほんと。怖いもん。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。