──その日、わたしくはメジロ家の上の世代にあたる方のレースを見に来ていました。
グレードとしてはG2のレース。
メジロ家の者ならとって当たり前──とは言いません。しかしそう考えられてしまうのが、我がメジロ家という家でもありますわ。家中にはそう思う方も少なからずいらっしゃるのですから。
とはいえ、それも他の出走メンバーによって難易度は変わってくると、わたくしは思うのですが……。
現にこのレースは、わたくしや共に見に来ている者が応援するアルダン姉様と、その同世代の強敵達が名を連ねているのです。
先日の安田記念を制したバンブーメモリー。
昨年の皐月賞を制したヤエノムテキ。
同じく昨年のオークスを制したコスモドリーム。
さらにはトリプルティアラには一つも手は届かなかったものの、桜花賞とエリザベス女王杯で惜しくも2位だったシヨノロマン。
そんな方達が走るこのレース──今年の高松宮杯のレベルが低いとは、わたくしは決して思いません。
そんな中、現地で見ていたわたくしは──このレースの序盤から先頭をきるウマ娘をなんとなく目で追いかけていました。
無論、わたくしが見に来た目的は、先日に骨折から約一年かけて見事に復活を飾ったメジロ家の令嬢──メジロアルダン。
我が家の主治医からは治っていると太鼓判を押されていても、やはりその走りは気になるところ、なはずなのですが……
「わたくし、一体どうしてしまったのでしょう。なぜか、ひどく気になってしまうような……」
その先頭を走るウマ娘が気になって仕方がありません。
やがて、2位を走っていたウマ娘とアルダン姉様に追いつかれ、そのウマ娘は順位を下げていきます。
それにホッとしながら──それでもなにか引っかかるのです。
すると──
「どこ見てるのさ? アルダンさんはそっちじゃないよ!」
「ら、ライアン……」
一緒に見に来ていたウマ娘に言われて、わたくしはメジロアルダンへと戻します。
そしてゴール前、先頭はアルダン姉様。
少し離れてバンブーメモリーという方──なにやら鬼気迫る様子で、アルダン姉様よりも観客席の方を気にしていらっしゃるようですが……それでも姉様とはセーフティリードがあります。
その後ろは──アルダン姉様が抜く前まで先頭にいたウマ娘──シヨノロマンさん。すでに再加速できるほどの余力は残っていない様子……
「うん、決まったね。これは」
「はい。さすがアルダン姉様……」
ライアンの笑顔につられてわたくしも笑顔を浮かべ──
──その時でした。
「────ッ!?」
ゾワッと、体をおそった圧倒的な怖気にわたくしは思わず身を震わせました。
慌てて、そちらを振り向き──
「ど、どうしたの?」
途中、わたくしの様子に驚いたライアンが心配して声をかけえきましたが、その言葉さえ頭に入ってきません。
とてつもない悪寒に襲われた、わたくしが見たのは──二人のウマ娘が競い走る姿。
それはもちろん、
でも──
(なんという気迫……)
かたや驚異的な末脚を爆発させて追い上げるウマ娘。
そして追いつかれかけながらも──ギリギリで加速してそれを振り切るウマ娘。
その
(今のは、いったい……)
少しだけ──いいえ、ハッキリとわき上がる不安に、わたくしは戸惑うしかありませんでした。
「はぁ……」
オレは思わず大きくため息をついた。
レースの結果……オレが担当しているウマ娘、ダイユウサクは──7位だった。
「7位なんてレースじゃなかったぞ……」
口をついて出る愚痴。
まるで1位を争ったような、そんな厳しい戦いだった。
その相手──コスモドリームはゴールして間もなく、足を押さえて走るのを止めている。
そこへ──ダイユウサクが近づいていくのが見えた。
それを見たオレは──観客席を見渡し、とある人を捜した。
アタシが近づくと──コスモドリームは顔を伏せたままだった。
うつむくようにして、手で押さえた足を見つめている。
それは、痛みに耐えるようであり──涙を隠すようにも見えた。
「コスモ……ドリーム…………」
確かにレースはアタシの勝ち──7位はレースの勝者とは到底言えないけど、それでもコスモとアタシの間での勝負では、アタシは勝者だ。
でも──その勝利を今、彼女に突きつけるのは本意じゃない。
コスモを打ちのめすために走ったんじゃないんだから。
でも、今の失意のコスモに声をかけるにしても、いつものように──レース前のように“コスモ”と声をかけることができなかった。
「……ダイ、ユウ…サク……」
顔を上げたコスモ。
一瞬戸惑ったような顔だったけど──すぐに表情を引き締めた。
それは──いつもの「従姉妹でルームメイト」の彼女ではなく、競走ウマ娘としての彼女の顔だった。
そのプライドはズタボロだろう。
昨年のオークスを制した“樫の女王”。
でも──そのオークスの頃にはデビューさえしておらず、いざデビューすれば2連続でタイムオーバー
(さて……どう声をかけたものかしら?)
そんな相手であるアタシから、ぺしゃんこにまで叩き潰された彼女を立ち上がらせるために、どんな言葉をかけたらいいのか──真剣に悩む。
(あぁ、もう……トレーナーから「そこが重要だろうが。よりにもよってそこを考えてないのかよ」って呆れられそう……)
宝塚記念で惨敗したコスモを立ち直らせるため──とだけしか考えて無かったのよね。
計画では、喧嘩して挑発してコスモに走る気を起こさせて、その後はアタシが勝ってコスモを励ます──はずだったんだけど……負けたコスモの姿を見てたら、とても勝った側のアタシが励まして、再起するようには思えなかった。
(マズい……どうしよう…………)
致命的な計画の破綻に、アタシが内心うろたえていると──
「「ユウぅ~ッ! コスモぉ~ッ!!」」
スタンドの方から、聞いたことがある声が聞こえた。
思わず振り返り──唖然とする。
だってそこにいたのは──アタシを“ユウ”と呼ぶのは近い親戚だけなんだけど、それに該当する人だった。
アタシと一緒に呼ばれたコスモも振り向いて──驚いている。
「じ、爺ちゃん!?」
「それに、お婆ちゃん……」
そこにいたのは、アタシの祖父と祖母。
それも、コスモにとっても同じく祖父と祖母である──母方の祖父母だった。
その祖父はヒトだけど──祖母は頭の上に耳があり、その腰に尻尾のあるウマ娘。
彼女も、祖父も笑顔で朗らかな笑みを浮かべて、アタシとコスモを見ていた。
あわててそちらへ駆け寄ろうとして──気がつく。立ち上がったコスモが足を一歩踏み出そうとして、顔をしかめたのに。
慌てて駆け寄り──
「大丈夫? コスモ……」
「う、うん……ちょっと無理しただけだから。折れていないと思うし……」
コスモを支えつつ、アタシは祖父母へと近寄った。
見れば──その側にはアタシのトレーナーと、コスモのトレーナーの巽見 涼子さんがいる。
連れてきたのは、間違いなくこの二人よね。
「……いい走りだったわよ。二人とも」
まずそう誉めてくれたのは、自分も競走ウマ娘だったお婆ちゃん。
その言葉に、お爺ちゃんも「うんうん」と頷いている。
「お前が言うのなら、間違いないな」
「ええ、太鼓判を押しますよ。出走した他の誰よりも、立派で、見ている人を熱狂させるものだったわ」
「はっはっは……それはワシでも分かったよ。年甲斐もなく興奮してしまったんだから……」
「爺ちゃん、気をつけてよ……もう若くないんだからね」
と、コスモが苦笑しながら言うと、お爺ちゃんは「そんなことはない!」と反論し──アタシとお婆ちゃんは思わず笑ってしまった。
「お爺さん、歳を考えなさいな……」
「うるさい。こんな嬉しい日に、興奮しないわけにはいかんだろう」
「「──え?」」
思わず、コスモとアタシの声が重なった。
それに答えるように、お爺ちゃんは目を細めて笑みを浮かべ──
「お前たち二人が走る重賞レースを、こうして見ることができたんだからな」
「そうですね。同い歳──それも誕生日が一日違いのあなた達が、そろってこんなに立派になって……」
「「あ……」」
祖父母の言葉で──アタシとコスモは思わず顔を見合わせた。
確かに以前、コスモが「爺ちゃんに、二人で重賞走ってる姿を見せるんだ」って言ってたけど──そっか、叶ったんだ。
でも、コスモの反応を見る限り、この場に呼んだのは彼女ではないと思う。そうなると──
アタシが巽見トレーナーを盗み見ると、彼女はウィンクして見せた。
(ああ、この人の策略か……)
それからアタシのトレーナーを見ると、素知らぬ姿で立っている。
うん、この人も間違いなく絡んでるわね。
そんな二人の粋な計らいに感謝しつつ……なにより、祖父母に二人で走る姿を見せたことよりも──こうしてコスモと自然に話せる状況をつくってくれたことに感謝したい。
そして──
「あんな小さかった子達が、本当に立派になって……」
「ええ。ついこの前、ウチの庭を駆け回っていたのに──」
二人の言葉で思い出す。
母の実家で初めてコスモと出会った日のことを──
小さかったころのアタシは、そのころから発育が遅れ気味だった。それで気弱で引っ込み思案なところがあった──って、なんで意外そうな顔をするわけ?
で、コスモは今と変わらず活発な子供だったけど……彼女の爛漫でマイペースな雰囲気に引っ張られて、一緒に遊ぶことになったわ。
お互いに親が実家へ、お盆に帰省したために出会ったアタシたちは──
「コスモは、競走ウマ娘になるんだ! そして、G1取るんだよ!!」
「じゃあ、ユウも取りたい……」
「ダメだよ! コスモが取るんだもん!!」
「えぇ……でも…………」
「じゃあ、レースを一緒に走ろう! 1位を取るのはコスモだけど、ユウも大きなレースで一緒に走るのは許してあげる!」
一日中走り回って、そして休んだ木陰でそんな話をした。
傍らでは、祖母──彼女も競走ウマ娘であり、その話を聞いたコスモが影響を受けて、こんな話になったんだけど──が微笑んで、アタシたちを見守っていた。
──すっかり忘れていた、そんな夏休みの思い出が蘇った。
そして、今の状況──
「あ…………」
思わず、涙がこぼれた。
アタシ、気がつかないでこんなこと──コスモに勝つことだけ考えて、夢中になっちゃって……こんな大事なことを忘れていただなんて。
「コスモ……ゴメンね」
「どうしたの、ユウ?」
アタシが謝ると、ユウは少し驚いた様子だった。
しかも、アタシが涙を流していたものだから、少し引いてさえいる。
「思い出した──子供の時、お爺ちゃんとお婆ちゃんの家で、話したこと……G1じゃなかったけど、こうしてコスモと大きなレースで走れて……」
「ああ、あのときのこと、ね」
コスモも懐かしそうに遠い目をする。
「ま、コスモは、ちゃんとG1とったけどね」
「アンタねぇ……」
涙を拭いながら、アタシは苦笑する。
そしてコスモは悪びれもせずに笑みを浮かべた。
そう、なぜかどこか吹っ切れたような、潔さを感じさせる笑みを──
「だから、コスモは──」
「待った」
なにかを言い掛けたコスモを、アタシは止めた。
遮られて、不思議そうに首を傾げるコスモ。
そんな彼女にアタシは──
「コスモ……一つ、言いたいことがるんだけど」
「なに? ユウ……」
アタシが言うと、コスモは素直にこちらを見る。
「今回の勝負……アタシの勝ちなんだから、一つだけ言うことを聞いてくれないかしら?」
「えぇ~……」
「あのねぇ、別に変なことをお願いする訳じゃないわよ。安心なさい」
「だって、ユウってば──親しい人にほど無茶な要求するからなぁ」
「そんなことないわよ!!」
──って、なんでコスモは意味深にちらっとトレーナーを見るのよ!
アタシは「コホン」と一つ咳払いをして──
「いい。今から言うことは、勝者から敗者への要求なんだから、絶対に逆らわないこと」
「はいはい……で? どんな要求?」
半ば投げやりなコスモを、アタシはじっと見つめ──
「決して、ここで
「え……」
心底意外そうに──そして、意表を突かれたようにポカンとアタシを見つめるコスモ。
あれ? そんなに変なことを言ったかしら?
「ユウ、ひょっとして……気付いていたの?」
「え? なにが?」
「だって、コスモ……今回のレースで…………」
コスモはそう言うと、ちらっと祖父母を見て言葉を濁す。
うん、なんとなく──言いそうな気がしたのは分かった。
でも、アタシはそれを許せない。
「走り方を変えれば、再起はできるんでしょう?」
「それは……わからないよ」
不安げなコスモ。
それはそうよね。再起できるなんて保証があるわけがない。
でも、アタシは知ってる。
アタシたちウマ娘の夢を叶える手助けをしてくれる、頼もしい存在を──
「涼子さん、どうです?」
「任せなさい。私が責任を持ってコスモを復活させてみせるわ。あなたが後悔するくらいに強くなって、ね」
そう言って、親指を立てウィンクする巽見トレーナー。
コスモにはこんなにも頼もしい人がついてくれているんだもの。絶対に、復帰できるわ。
だから後は──アタシは、コスモをじっと見つめた。
そのコスモは、自分の足を見て──そして巽見トレーナーを見て……そして頷く。
「うん。コスモの足は痛いけど──」
コスモは一度、痛む方の足でトンと地面を叩く。
ちょっとだけ顔をしかめたけど──笑顔で大地にしっかりと立った。
「ちゃんと立てる。折れてなんか、いない。だから──また走るよ。だって、あれだけ一生懸命走っても、それに耐えてくれたんだから。コスモの足は……」
自分の足を誇らしげに見つめ──そしてコスモはアタシへと振り向く。
そしてニヤッと意地悪く笑った。
「でもね、ユウ……コスモも勝ってるんだよ?」
「は? なに言ってるのよ。アタシの方が順位が上だったじゃないの。アタシの完全な勝ちよ」
「ううん。確かに、あのときユウは、コスモよりも先にゴールするって言ってけど、コスモは──ユウを“
「え……?」
そういえば──そう言ってたっけ?
「で、ユウ……さっき、コスモに泣いて謝ったよね?」
「あ……」
確かに……言われてみれば、謝った……かも。
アタシが顔をひきつらせて冷や汗をかく中、コスモは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「だから、コスモもユウに要求させてもらうよ」
「な、なによ……」
「大丈夫、大丈夫。コスモからも無茶なことはさせないから──」
そう言ったコスモは笑顔で──
「また二人で走ろう。今回よりももっともっと大きな舞台で」
そう言って、手を差し出してきた。
アタシは、その手をつかみ──
「ええ、もちろんよ! コスモドリーム!! アナタの復活を……いつまでも待ってるわ!!」
涙混じりの笑顔で、それに応えた。
そして、その手をとって、アタシはコスモを支えて歩き始める。
だってこの後、アタシたちは──
「……ねぇ、コスモ。今回はアタシ、7位でよかったと思ってる」
「え? なんで?」
「だって──」
アタシはこの後に控えたイベントに思いを馳せた。
「──アナタと同じ服を着て、同じ曲を歌えるんだから。勝負服で歌うほどに順位が上だったら、それができなかったもの」
「──ッ」
アタシが言うと──コスモは思わず吹き出した。
そしてケラケラと笑う。
「ちょ、ちょっと、何で笑うのよ!?」
「いいや、ユウらしいと思って。コスモも嬉しいよ。一度、大きな舞台で、二人そろって歌ってみたかったもんね」
そう言って、「今から楽しみだ」と嬉しげなコスモ。
でも──
「次は、そうはいかないからね。そのときは──コスモは勝負服を着てるんだから」
「えぇ……あの、勝負服?」
「あ、ユウ! バカにしたな、あの服を!!」
「そんなことないけど──」
「次のレースは、あの服を着て走って、ユウなんてぶっちぎってやるんだから」
アタシとコスモは、そんなことを話しながらウイニングライブへと向かい──同じ服で参加した。
初めてコスモと同じステージに立てたそのライブは、心の底から楽しいと思えた。
そして──スタンドにはそのレースを見ていた、とあるウマ娘がいた。
セミロングの髪は
よく「ホシ」と言われるものの、それにしては珍しいことにその形は綺麗な星形をしている。
彼女は父親と一緒にそのレースを見に来ただけ。
そのあふれる才能から中央トレセン学園への入学を今から期待されている彼女は、父から「今からレースを見ておきなさい」としょっちゅう連れ出されてレース場へ来ていたのだ。
そんな彼女でさえ──まるでトップ争いのようなその熾烈な走りに、驚きを感じていた。
いや、走りというよりも──
「なんて強い、想い……」
彼女たちが発した、強い気持ち。
それを感じて──彼女は二人を見つめる。
手した、父から借りた双眼鏡で見て──その顔とゼッケンに書かれた名前を確認する。
「コスモドリームさんに、ダイユウサクさん……」
未だに残る、その強い思いの残滓を感じて──彼女は胸の前で手を組み、そして目を閉じて瞑想する。
「三女神様、どうかあのお二人の願いを、聞き届けください……」
すると偶然にも曇っていた空に変化が起こった。
雲に隙間が生じて、わずかに光がさす。
まるで彼女の
光に照らされた二人の姿は──気高いほどに美しかった。
──表彰式が終わった。
それに参加し、称えられているアルダン姉様。
その最中であっても、わたくしの頭の中は先ほどのレースで見た、
それは本気で先頭争いかと思うほど苛烈なもので──けれど、二人の着順はといえば、なんと7着と9着。
その結果だというのに、わたくしはなぜか心臓がドキドキするのを感じていました。
まるで──
(わたくしの魂が──このことを胸に刻めとでも言っているような……)
そんな衝動に襲われて、わたくしはこの二人を調べていました。
7着に入ったのは11番のゼッケンをつけていたウマ娘、ダイユウサク。
9着に入ったのは14番のゼッケンをつけていたウマ娘、コスモドリーム。
(──コスモドリームさんと言えば、昨年のオークスを制した方ですわ。記憶に留め、マークするのなら当然こちらですわね)
無論、もう一人の無名なウマ娘の方も一応は調べてみましたわ。
でも、今回は格上挑戦したようなクラスが下のウマ娘。ハッキリ言って拍子抜けしてしまうほどですわ。
(しかも、よくよく調べてみれば──デビューから2戦続けてタイムオーバーするようなウマ娘……確かに、このレースに出るほどに頑張ってこられたことは素直に評価いたしますけど──)
警戒に値するか、と言われれば……アルダン姉様と同い歳だというのに、未だにオープンに届かずに重賞戦線に参加できないような方。
そう考えると、条件戦に何度も出走している十把一絡げな泡沫ウマ娘──と判断するのが妥当でしょう。
(取り立てて注意する必要はありませんわ。やはり警戒するのはコスモドリームさんですわね)
わたくしがその結論に至ると──考えにふけっていたのに気がついた隣のウマ娘が話しかけてきました。
「マックイーン! どうしたの?」
「なんでもありませんわ、ライアン。さぁ、アルダン姉様のウイニングライブを見に行きましょう」
そんなメジロライアンとともに、わたくしはウイニングライブ会場へ向かって、二人で駆け出すのでした。
──無論、後々にその方と一緒に走ることになるなんて、このころのわたくしは夢にも思っていませんでした。
◆解説◆
【夢は走路を駆け巡る……】
・元ネタは、松尾芭蕉の辞世の句といわれている「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」から。
・夢とはコスモ
【お婆ちゃん】
・コスモとダイユウサクの祖母にあたるウマ娘。
・そんなわけで──血統的にはダイコーターにあたるウマ娘となります。
・ただし、今まで本作に出てきた他のウマ娘と違い、彼女がダイコーターのウマ娘である、とは言及するつもりはありません。
・ちなみに──実在馬のダイコーターは1965年の菊花賞優勝馬。
・しかし
・しかし──結果は、2着。
・結果、ダイコーターは「ダービーは金で買えない」の典型的な例に。
【アナタの復活を……いつまでも待ってるわ】
・これにて、本作でのコスモドリームのレースは一段落となります。
・史実的にはこの高松宮記念でコスモドリームは引退。
・その生涯記録は──13戦4勝。
・しかしその13戦中、3位以内は10戦で、残りの3戦のうち一つは落馬で競争中止。
・最後の2戦以外は完走したレースは全部3着以内という、強い馬だったのは間違いありません。
・さらにはオグリ世代のオークスを制覇。その成績を見れば、ウマ娘として実装されてもおかしくないくらいの成績をおさめています……同期のライバル対決がほぼ無くて目立ちませんけど。
・今後の、本作でのコスモドリームは──足を治療しつつ、足の負担にならない走り方をトレーナーと模索しながら復活を目指すことになります。
・引退とは違う道をつくろうと、このような展開になりましたが。
【とあるウマ娘】
・先行登場させたウマ娘。
・彼女は──第2章を背負って立つ予定のウマ娘。
・いったい誰なのか──前話に登場したアルデバランと同じように、非実在系の競走馬をモデルにしたウマ娘です。
・ヒントは──
【泡沫ウマ娘】
・ようは、実況で名前を呼ばれないウマ娘たちのこと。
・育成やサポカでウマ娘として実装している彼女たちとは違う、「何十戦、数勝」だったり、勝利できずに消えて行ったり、そういうウマ娘たちが数多くいるのです。
・かといって、揶揄しているとかそういうわけではありません。正直な表現をすれば──油断、ですかね。
【マックイーン】
・ええ、ここが出すタイミングと思って出しました。(厳密には2話前にちらっと出てましたが)
・本作のラスボスになるウマ娘、メジロマックイーンです。
・現在は、中央トレセン学園の新入生で、同級生のメジロライアンと共に姉貴分のメジロアルダンのレースを見に来ていました。
・彼女がメジロアルダンをどう呼ぶのか判明しなかったので、とりあえず「アルダン姉様」と呼ばせました。
・たぶんゲーム版だと違う呼び方になってると思いますが、そこは本作オリジナル要素ということで──あとで直します。(苦笑)
・そして……ダイユウサクのスキルに悪寒を感じた2人のウマ娘の一人は、彼女です。
・アルデバラン同様に、受け継いだ魂からの警告だったのですが──あれ? なんか勘違いしてない?
・警戒するべきなのはそっちじゃないんだけど……
※これにて第一章の3部──重賞初挑戦! さらばコスモドリーム編──は終了となります。
・今回の高松宮杯が第一章中盤のヤマ場でした。重賞初挑戦となるダイユウサクと、引退するコスモドリームがバトンタッチするレースでしたからね。
・──コスモ、引退しませんでしたけど。
・次なるダイユウサクの目標としては背伸びせずとも重賞に出てくる……オープンクラスになること、でしょうかね。