見えぬ輝きの最南星《アクルックス》   作:ヤットキ 夕一

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 ──有記念前日・ダイユウサクの実家


「お父さん、本当に行かなくていいの?」
「……行かないんじゃない、行けないんだ」

 もう何度目になるのか思い出せないほど繰り返された妻の確認に、私は少しイラッとしながら答えた。
 無論、何度聞かれても変えるつもりはない。
 そんな私の答えに対する返事も、同じものだった。

「でも……有記念よ? 娘の晴れの舞台なんだから……」
「何度も言っているが、会社の、外せない用事なんだ。仕方ないだろ!!」

 ──嘘だ。
 その日──22日は確かに会社の用事はある。
 しかしそれは忘年会。私がいなくとも開催にも準備にも問題は発生しないし、会そのものに影響はない。
 だから絶対に私が出席しなければならないなんてことは──無いのだ。

「私も何度も言ってますけど、それなら事情を説明したらどう? 分かってもらえるんじゃないかしら?」
「話しても駄目だったんだよ」

 ──それも嘘。
 会社には事情を話していない。
 ウマ娘の我が子が、年末の大レースである有記念に出走するなんて、話せるわけがない
 もし話せば……間違いなく話題になってしまい大騒ぎになる。間違いなく私は有記念を見に行かざるをえなくなるだろう。
 私はそれを──避けたいんだ。

(晴れ舞台? それは勝ったウマ娘の話だ)

 栄光を掴むのはあくまで一人。1位のウマ娘の頭上にのみ輝くものだ。
 それを得られず、苦汁や辛酸を嘗めてきたウマ娘は山ほどいるんだ。
 一人の栄冠は、他の14人の犠牲の上で成り立っているのが大前提の話である。

(その上に立つのが娘ならいい。だが、自分の娘を下敷きにした他のウマ娘が賞賛されている姿など……(つら)いだけだ)

 もちろん、それ──勝利に手が届くかもしれないのなら、近くで声援を送り、応援したいのはもちろんだ。
 しかし……今回は違う。

(新聞やら専門誌やら、どれを見てもメジロマックイーン……)

 娘が──ダイユウサクが有記念で走ると聞いた私はうれしかったさ。
 だから有記念の記事や特集があるものはなんでも買いあさった。
 最初は出走表に自分の娘の名前がのっているだけでも興奮できた。
 しかし──写っている写真は我が娘ではなく、淡い色の長い髪をした上品そうなウマ娘の姿ばかりということに気が付けば、イヤでも見えてくる。
 メジロマックイーンの圧倒的な有利と支持。そしてそれを裏付ける強さに。

(……勝てる、わけがない)

 どんなに親の贔屓目で見ようとも、それは明らかだった。
 従姉(いとこ)の影響で、トゥインクルシリーズを見る目も多少は肥えていると自分自身で思っているが、その目がそれを告げていた。
 マックイーンだけではない。他だって年末のグランプリに選ばれるようなウマ娘たちだ。
 その強さが垣間見え……我が娘ではとうてい勝てないような相手ばかりじゃないか、という結論に至る。

(それに……)

 私は傍らの床に置かれたスポーツ新聞をチラッと見た。
 そこには有記念の記事があり──我が娘は出走15人中、14番人気。

(……これが現実だ)

 私の脳裏にレースの光景が浮かぶ。
 圧倒的な速さで1着でゴールを駆け抜けるマックイーン。
 及ばずながら次々とゴールしていく強豪ウマ娘たち。
 そして……圧倒的な大差を付けられて、ゴール直後に崩れ落ちる我が娘、ダイユウサク。

(そんなレースの後に、どんな顔をして会えというんだ)

 娘は優しい子だ。どんな順位でも父である私や母である妻、それに弟という家族には笑顔を向けてくれるだろう。
 心の中で、どんなに顔向けできないと泣いていても。

(だからこそ私は──見に行くわけにはいかないのだ)

 私はあの子をどう迎えていいのか分からない。気を使わせたくないからこそ、その場にいない方がいいのだ。
 しかしウマ娘の妻なら……負けたアイツの気持ちを理解して、優しく包んでくれることだろう。
 だからアイツも──

「ママー、レース場とディ○ニーランド、どっちが先だっけ?」
「レース場よ。明るいうちに行っちゃったら、エレクトリカルパレード、見られないでしょ! 近いから、終わってからでも十分に間に合うわよ」

「……え?」

 思わず振り向いて、妻を見た。

「なに? お父さんもディズ○ーランドにいきたいの? でも仕事なんでしょう?」
「あ、ああ……」

 思わず頷いて、手近にあったスポーツ新聞を手にとって広げ、動揺を誤魔化す。
 え? 娘の晴れ舞台、見に行くんじゃなかったのか?

(ひょっとして……あっちに行く目的は、むしろ……まさか、な)

 妻の真意は分からんが、少なくとも息子は楽しみで仕方ないようだ。
 船橋ではなく──舞浜に行くのが。

 ……確かに近いよな、その2ヶ所。



第77R 大迷走? I'll Come!

 

 ──有記念当日、朝。

 

「じゃあ、先に行ってるわ」

「ああ。オレ達も必要な荷物を持って、後から追いかけて出発するからな」

 

 有記念の舞台は学園や東京レース場のある府中ではない。

 府中から電車で1時間と少しの距離にある中山レース場だ。

 選手であるダイユウサクを万が一にも遅刻させるわけにはいかないし、出走前の手続きもある。彼女を一足先に送り出し、残ったオレ達は準備万端整えて、その荷物を持って中山レース場へと向かうことになっていた。

 

「やれるだけのことは……できた、な」

 

 駅の方へと去っていったダイユウサクを見送ったオレは、ホッと小さく息を吐きながら、確かな手応えを感じていた。

 アイツの表情を見て、確信できた。

 今のアイツの調子はかなり良い。

 

「コスモドリームと競った高松宮杯よりも、阪神の1200でレコード出したときよりも、オグリと走った天皇賞よりも、重賞を制した金杯の時よりも……上かもしれないな」

 

 ウマ娘競走(レース)に絶対は無い。過去に巽見と話した言葉を思い出す。

 そして……一週間くらい前に見た夢を思い出した。

 オレは思わず苦笑してしまう。

 あれが正夢──走っていたのは得体の知れない四本足の動物だったが──になったら、なんていうのは出来過ぎだろうか?

 

「……だが、一抹の不安は残る……」

 

 まず間違いなく立ちはだかってくるマックイーン。

 彼女が使いこなしているとミラクルバードが断言していた“領域(ゾーン)”に対抗できなければ、勝機は低いだろう。

 

(コスモドリームがトレーニングを初めて手伝ってくれたあの日……)

 

 “領域(ゾーン)”に踏み入れているのでは? とミラクルバードが疑ったコスモドリームから話を聞いたら、「たぶん、アレがそうかな?」と話をしてくれた。

 自分の世界──心象風景のような空間──に意識が飛んだ後、爆発的な末脚が発揮された、ということらしい。

 ただし、それがレースの度に毎回起こっていたわけではなく──しかも発動する条件がよくわからなかったそうだ。

 

『たぶん、だけど……コスモの場合、仲間の応援……かな?』

 

 彼女の場合は、強い繋がりを持つ人の応援を受けて絆を感じたときに、「それに応えたい!」という必死な気持ちが超集中状態を生みだした、と考えられる。

 さらに話を聞けば、《アルデバラン》にはその“領域”に踏み入ったのが他にもいるらしく──リーダーのアルデバランがまさにそうだった。

 

(アルデバランとコスモドリームでは、超集中状態に至る条件が違っていた……)

 

 踏み入れかけたミラクルバードによれば、彼女の場合もまた違っていたらしく、「そこは個人差があるみたいね」と言っていた。

 ただ、コスモドリームもアルデバランも、共通して言っていたのは──ダイユウサクと“領域”に関して「発動させている」ということ。しかもどちらも高松宮杯と言っているあたりはミラクルバードも同じことを言っていたのでほぼ間違いないだろう。

 

「だが……アイツが使えるのは分かったのはいいが、どうすれば踏み入るのか、が分からなければ意味がない……」

 

 コスモドリームの紹介でアルデバランと会ったときに、それについて話したのだが……やはりわからなかった。

 なにしろダイユウサクの場合一度しか発動していないので、発動したときの共通項を探すことが不可能だったからだ。

 

「“領域”をダイユウサクが使いこなすどころか、発動させることさえままならない。この状況で、今日を迎えちまったのは不安が残るが……」

 

 切り札を用意してやることはできなかった。

 だが、最高のコンディションという環境は整えられた以上、もう後は出たとこ勝負しかない。

 

(これ以上は、考えても仕方がないな)

 

 オレは気持ちを切り替えて今日のレースを──

 

「トレーナー、そろそろ出発だよ? 準備は大丈夫?」

 

 ──と、思ったところでミラクルバードがやってきた。

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 中山レース場に向かって、いざ出発──と、ミラクルバードがやってきた。

 彼女に「準備は大丈夫?」と訊かれたが──うん。準備はできている。

 ダイユウサクの勝負服も準備してスーツケースにしまってあるし、オレの荷物はまとめて一つの鞄に──

 

「──♪」

 

 持って行く物を確認しようとしたその時、オレのスマホが鳴った。

 なんだ、こんなタイミングで……今日は大事な日だって言うのに、いったい誰からの着信──と思って画面を見たら、「ダイユウサク」の文字があった。

 アイツ、なにやってんだ? と思いながら通話に出る。

 

「もしもし?」

『トレーナー!? あの……』

 

 なぜか口ごもるダイユウサク。

 珍しいな、こんなに歯切れ悪いのも。

 

「なんだ? なにかあったのか?」

『問題が発生しちゃって……』

 

 問題(トラブル)だと? 出発してから1時間近く経ってるし、もう中山の近くだろう。

 いったい何が──

 

『あ、あのね? アタシ、道に迷ったみたいで……駅員さんに聞いたんだけど、中山にレース場なんて無いって……』

 

 レース場がない?

 ……なるほどな。アイツ、降りる駅を間違えたな。

 なにしろ“船橋”と名が付いている駅は複数ある。そのせいで間違えたんだろう。

 

「落ち着け、ダイユウサク。だいぶ余裕を持って出発したんだから、まだまだ時間は大丈夫だぞ。出走選手の集合時間には全然、間に合う」

『そ、そうよね? 大丈夫よね?』

「ああ、大丈夫だ。で、確認だが──今、何駅にいる? 西船橋か? それとも南船橋か?」

 

 さすがに南からは無理だが、西からなら十分に歩いていける範囲だ。

 それに南だと別のに間違えてたどり着く可能性があるから気を付けないと──んん? レース場が……無い、だと?

 

『中山よ』

 

 ………………。

 あれ? オレ質問の仕方、間違えた?

 まぁ、焦ってるから、アイツが間違えたんだ、きっと。

 だって学園から向かったんだぞ? 当然、武蔵野線を使ってるんだろうし──

 

「だから落ち付けって。お前が中山レース場に向かったのは分かってる。今、お前がいる駅の名前を聞いているんだ」

『だ・か・ら、“中山”って言ったでしょ!?』

 

 ………………………………え?

 

 なんか、猛烈にイヤな予感がしてきたんだが。

 で、でも中山レース場の近くに、“中山”って付く駅もあるからな。

 それと勘違いしても不思議じゃあないよな。アイツが見間違えてて“東中山”であることを願いたいが……武蔵野線に乗ったなら間違えないんだよなぁ、普通は。

 あはは……

 

「なぁ、ダイユウサク。一応、訊くが……お前、何線って電車に乗ってそこについた?」

『そんなの、南武線に決まってるじゃない』

「アホかあああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 オレはこめかみを押さえながら、スマホに絶叫した。

 慌てて、『中山駅』を検索する。

 ……これ、だな。

 

 中山駅──神奈川県横浜市の駅。

 ちなみに中山レース場の最寄り駅は船橋法典駅。

 船橋で分かるように当然、船橋市……つまりは千葉県だ。

 

(……全然、方向が違う)

 

 唖然とし、そして内心青ざめる。

 オレは、ダイユウサクに自分がいる場所が見当違いの場所だということを告げてやった。

 それを聞いて──アイツの顔も青ざめるのが目に浮かぶようだった。

 

『…………え? だって、中山…だって……』

「中山レース場の名前の由来はそこに移転する前の場所の名前だ! 中山レース場の最寄り駅は船橋法典ッ!! お前のいるそこは移転前でさえなく、少なくとも中山レース場とは何の関係もない!!」

『な……なによそれ!? そんなの──“船橋レース場”でいいじゃないの!! 紛らわしい!!』

 

 うん、その考えはわかる。過去はどうあれ今は中山関係ないからな。

 しかし船橋レース場は、それはそれで別に存在しているからそれも無理な相談だ。

 ただし地方で──って、今はそれどころじゃないッ!!

 

「ああもう、落ち着け!!」

 

 なんてダイユウサクに言ったが、本当は自分に必死に言い聞かせたものだ。

 中山駅は横浜市だから、船橋法典まで……時間的には、出走時間には間に合うな。

 だが……

 

(混乱してるダイユウサクをまた一人で電車で向かわせる……それも乗り換えが入るとなると、不安があるな。それに──)

 

 ──たどり着けるかという不安よりも頭を()ぎった別の不安から、オレはある決断をした。

 

「いいか、ダイユウサク。とりあえず駅から出てロータリーで待ってろ」

『待つ? なんで!? アタシ、中山に行かないと……』

「中山レース場な。でも、安心しろ。今からオレが……急いで迎えにいく。もう心配するな」

 

「……はい?」

 

 ──という声はスマホから聞こえたわけじゃなかった。

 ミラクルバードが驚いてあげた声だった。

 オレはそれを完全に無視して──

 

「今すぐ行くから、そこから、動かずに、待ってろ!」

『──ッ!!』

 

 ──強く言った言葉に、ダイユウサクは驚いた様子だった。

 

「絶対、助けに行くからな」

『……うん。待ってる』

 

 それでテンパった混乱からは立ち直ったのか、殊勝な声が聞こえ──通話は切れた。

 代わりにやってきたのは、ミラクルバードだった。

 

「ちょっと、トレーナーどういうこと!?」

「ダイユウサクが駅を間違えて迷子になった」

「え? 西船橋(ニシフナ)で降りた、とか?」

「いや、中山って名前の神奈川の駅だ」

「はいッ!? どこそれ!? というか、どういうこと!?」

 

 大混乱しているミラクルバード。

 だが、今は詳しく説明して理解させる時間も惜しい。

 

「とにかく、オレは今からその中山駅に向かい、ダイユウサクと合流する。それから中山に向かうから──」

 

 これは自分で言ってて訳分からなくなるな。

 

「──ミラクルバード、お前は巽見に連絡をとって、一足先に二人で中山レース場に行き、係員に遅くなると事情を説明してくれ」

 

 オレは──羽織っていた上着を脱いで、別のジャケットを着る。

 今から使う手段には、コイツが必要だ。

 

「でも、トレーナー……ダイユウ先輩を待たせたら、余計遅くなるよ? それなら一人で行かせた方が……」

「大ミスを犯して自責の念を抱えたアイツを、間に合うかどうか不安を抱えさせたまま、一人で中山レース場までいかせるわけにはいかないだろ。まして近くには紛らわしい船橋レース場まである。それに──そんな精神が消耗した状態で出走させたら、勝てるレースも勝てなくなる」

「あ、そっか……」

 

 少なくともオレが近くにいれば、多少の不安は解消できるだろう。

 

「ダイユウサクの勝負服と、オレの鞄は忘れずに持ってきてくれ!」

 

 そう言い残し──オレはその場から駆け出し、学園を飛び出した。

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 残されたボク──ミラクルバードは、とにかく言われたとおりに巽見トレーナーに連絡を取った。

 もともと一緒にいく約束はしていて、幸いなことにすぐに連絡がとれたから、ボクはダイユウ先輩が駅を間違えて見当違いのところにいることと、トレーナーが迎えに行ったことを説明した。

 すぐに察した巽見トレーナーは、《アクルックス(うち)》のチームの部屋までやってきてくれた。

 そして──

 

「レース場とか運営とかには事情を説明して、事前手続きに遅れる旨は話を付けておくわ。ま、後でこっぴどく怒られるでしょうけど、出走停止ってことにはならないと思う……間に合えば、ね」

 

 出走表に名前がでている以上は、最低限ちゃんと所定の手続きを踏むことができればむやみに出走停止にはしないと思うんだよね。

 とくに有記念はファン投票で選ばれてるから……まぁ、ダイユウ先輩はそうじゃないけど。

 

「だから急いで現地に向かいましょう。とにかく先輩が持って行こうとしていた物を全部持っていかないと」

「うん。トレーナーからも言われてるよ。トレーナーの鞄と、ダイユウ先輩の勝負服──あ……」

 

 ふと思いついて、ボクは声を出してた。

 

「どうかした?」

「そういえばトレーナー、ジャケットひっつかんで羽織っただけで出て行っちゃったけど……」

「さすがに出走者のトレーナーがそんな姿じゃマズいわね。向こうで先輩が着る服も用意しないと」

 

 そうだよね。

 いくらトレーナーといっても、GⅠレースだもん。あまりにラフすぎる格好はマズいと思う。

 巽見トレーナーはざっと見渡して「うん。これね」とあっさり服を見つけてくれた。

 幸い、ハンガーと一体型のスーツを入れる袋に、一式入ってるからそのまま持って行けばいい。

 

「ありがとう、巽見トレーナー。ホントに助かったよ」

「お礼を言うのはまだちょっと早いわよ。中山レース場に着いて、キチンと係に話を通してから、その言葉は受け取るわ」

 

 悪戯っぽくウィンクして微笑む巽見トレーナー。

 あとは……本人がちゃんと間に合うか、だよね。

 頼んだよ、トレーナー。

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

「ああ、もう……ホントに……」

 

 アタシは頭を抱えて深く深く反省していた。

 なんで昨日、ルート確認したときにもっとよく調べなかったのよ。

 “中山駅”じゃなくて“中山レース場”で検索しなかったのよ……

 今朝だって、調べる時間くらいは余裕であったのに。

 そうして今朝のことを思い出して──

 

「なんで南武線に乗っちゃったのよ……」

 

 改めて調べてみたら、中山レース場の最寄り駅までは武蔵野線だけでたどり着けるじゃないの。

 わざわざ乗り換えまでして、こんなまったく別の、関係ない駅に来て──ホント、なにしてんの……?

 

「なんで中山レース場なのに、中山に無いのよ……」

 

 思わず文句を言いたくなる。

 昨日、中山駅を調べたとき、横浜の駅だってわかったわ。

 でも──今まで中山レース場に行ったことがないアタシは船橋市にあることさえ知らなかった。

 

(府中に東京レース場があって、中央で使う関東のもう一つのレース場──ってなれば、やっぱり大都市にあると思うじゃないの……)

 

 もしも北関東三県とか、千葉でも房総半島の先とか、神奈川の西の端っこあたりに“中山駅”があったら疑ってたわよ、さすがに。

 そんなところにあっても人が来ないってわかるもの。

 

(でも横浜なら「まぁ、そうでしょうね」と思っても仕方ないでしょ? あってもおかしくないもん!)

 

 アタシは駅のロータリーに立ちすくみながら、気が動転しまくっていた。

 本当なら、中山レース場の正しい場所が分かったんだから、すぐに向かいたい。

 

(今すぐにでも電車に乗らないと……)

 

 不安と自責から、心の奥からそんな叫びが聞こえる。

 この大ポカを、どうにか自力で挽回しないと。それになにより情けないし、恥ずかしいし、トレーナーに顔向けできない……

 アタシは何度となく改札へ向かおうしてた。

 

(でも──)

 

 あの人は、「待っていろ」って言った。

 「動かずに待ってろ」って。

 それに、「絶対に助ける」って──

 

(だから、信じて待たないと)

 

 待つ時間は長い。

 すごく待った、と思っても時計を見たら全然進んでいなかったりする。

 だから迷う。

 今からでも電車に乗って──

 ううん。いっそここから自力で走った方が早いんじゃ……

 

 ──その永遠にさえ思えた時間が過ぎて……

 

「──ッ!!」

 

 街の喧騒の中、不安で伏せていたアタシの耳はその音を捉えてピクッと立った。

 無意識に耳を、音の聞こえた方へと向けている。

 うん、あの音は……あのエンジン音は──

 

「あれは……」

 

 アタシが顔をあげると、走る車をぬうように、1台のオートバイがこちらへと向かってきていた。

 見慣れたその車体。そしてヘルメット。

 それで誰が来たのかすぐに分かる。

 バイクはそのままアタシの下へとやってきて急停車。頭を完全に覆っていたヘルメットが、顔の部分だけパカッと開いて──見慣れた顔が見える。

 アタシは思わずそれを見て──

 

「と、トレーナーぁぁ……」

「泣くな。まだ間に合うんだから。お前は気にするな……」

 

 苦笑しながらそうアタシに声をかけてくれた。

 そして──

 

「さあ、コイツで中山まで行くぞ。早く後ろに乗れ」

「う、後ろって……でも……」

 

 戸惑うアタシ。

 確かに後ろに座席あるけど、そもそもヘルメットが無いじゃないの。

 いつもくっついてる大きな箱は外れてるし……トレーナーのはともかく、アタシのが無いじゃない。

 いくらウマ娘が自動車みたいな速度で走れても、ノーヘルは違反になるわ。

 警察に見つかればトレーナーが捕まっちゃうし、その時に警察に捕まらなくてもノーヘルがバレたら確実に問題になる。

 

(もう……アタシもバカだけど、なんでトレーナーもヘルメットを忘れるなんて初歩的なミスをするのよ!!)

 

 アタシは再び頭を抱えることになる。

 こんなことなら、電車に乗ってた方が良かったわよ。

 

「どうした? 早く乗れって……」

「ヘルメット無しで乗れるわけないでしょ!? ノーヘルは違反よ?」

「ああ、忘れてた──」

 

 ああ、もうダメよ。

 間に合わない……

 

「ほら!」

 

 トレーナーは──バイクの車体をパカッと開けて、そこからヘルメットを取り出して、アタシに渡してきた。

 ……え?

 あれ? バイクって……そんなハンドルの後ろあたりの大きなところにヘルメットが収まってるものなのね。

 そういえば、スーパーとかコンビニに停まってるスクーターとか、イスのところが開いて荷物入れになってるの、見たことあるわ。

 

「これを使え」

「うん……」

 

 渡されたそれを見て、ちょっと驚きながらアタシは頷いて、頭に被った。

 ああ、これって……

 

「耳が、痛くない?」

「ウマ娘専用のだからな」

 

 普通の──ヒト用のヘルメットを被ると、アタシ達ウマ娘は耳の場所が違うので頭頂部とヘルメットに圧迫されて、耳が挟まれてとても痛くなる。

 でも、そんな頭頂部付近に耳の隙間があるのは──ウマ娘用のヘルメットで、当然痛くない。

 でも……なんで、そんなの用意していたの?

 それにこのカラーリング。赤をベースに黄色と黒って、アタシの勝負服と一緒……

 

「ヘルメットは大丈夫だな? じゃあ、後ろに座って──」

 

 トレーナーの指示に素直に従って、タンデム用のシートに座るアタシ。

 

「トバすからな。しっかり掴まってろよ」

「つ、掴まる? いったいどこを──」

 

 アタシの問いに答えることなく、バイクは走り出してグンと加速した。

 思わず──手近にあった掴まりやすい場所に手を回した。

 運転する彼の胴へと。

 

「ぐふッ──お前、苦しいだろうが! 普通はそこじゃなくて──」

「普通もなにも、初めてだもん!! 分かるわけないでしょ!?」

「ああ、もう! そこで構わねえから絶対に離すんじゃないぞ!! ──ってだから力込めすぎ。苦しいわ! 殺す気か!!」

「アンタが言ったんでしょうが! 絶対に離すなって……」

 

 いつの間にやらアタシはトレーナーと口喧嘩を始めていた。

 おかげで──いろいろアタシが考え込んでた今回の失敗に関する色々は、すっかり頭の中からなくなってた。

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 ──それから、いろいろあったが、とにかくオレ達は、無事に中山レース場にたどり着いた。

 

 あの後は一般道から首都高へと向かい、そこから順調にたどり着けた。

 休日だったのが幸いしたな。昼間の首都高の渋滞もそこまでひどくなかったんだから。

 バイクを停めてメットを脱ぎ──思わず大きく息を吐いた。隣でダイユウサクも同じようにメットを脱いでいる。

 

「…………なに?」

「髪。乱れてるぞ」

 

 さすがにヘルメットを被っていた影響で、普段とは違う髪型に。

 オレに指摘されたダイユウサクは、慌てて髪に手をやって直している。

 

「これから大事なレースなのに、それじゃあダメだろ」

「なッ……」

 

 オレはダイユウサクの頭の上に手を置き、髪を撫でつけるようにする。

 それを彼女は──最初は驚いたものの黙って、受け入れてくれた。

 数度、手で彼女の髪に触れ……そして手を離した。

 

「後は、控え室でキチンとしてもらえよ」

「……うん」

 

 うつむいて返事をしたダイユウサクは、まだ今朝の失敗を引きずっているのか元気がない。

 オレは苦笑しながら、話しかける。

 

「なぁ、ダイユウサク……去年、有記念の時は、まさか出走できるなんて思ってなかったよなぁ」

「え? ……うん。そうね」

 

 去年の今頃はオープン特別を2連勝して、金杯に備えていた真っ最中だった。

 

「その前の年もそう。お前と今までここまできて……本当に自分でも信じられないくらいだ」

 

 オレが中山レース場の建物を見ながらしみじみと言う。

 一方、突然そんな感じでオレが言い出したので、ダイユウサクは不思議そうな目を向けてきた。

 

「……有記念に出走できた奇跡に比べれば、今日、間に合ったことくらいは些細なことだぞ。逆に、神様もお前の出走を望んでいるから間に合わせてくれたんだ。きっと、な」

 

 もしかしたら首都高を含めてもっと道が混んでいて、渋滞に巻き込まれていたら、間に合わなかったかもしれない、とオレは苦笑しながら言う。

 それに彼女は──

 

「万が一にでも、間に合わなくなるかもしれない道を選ばないでよ。まったく……バイクじゃなくて電車の方が間違いなかったじゃない」

 

 ジト目をオレに向けてきた。

 

「お前がまた間違えるかもしれないだろ。乗り換えとか。もし上りと下り間違えたら、今度こそ本当にアウトだぞ」

「そんなの、間違えないわよ!! そこまでバカじゃないわ……」

 

 ムキになって強い口調で言い出したものの、急に弱気になって尻すぼみに答えるダイユウサク。

 それを微笑ましく思っていると──オレ達に気が付いたらしいレース場の職員がこちらへ走ってくるのが、彼女の背後に見えた。

 

(……さて、そろそろ送り出さないといけないな)

 

 なんて思っていたら、ダイユウサクは不満げにオレを見ているのに気が付く。

 

「ねぇ、トレーナー。今のトレーナーの言葉で、一つ気にくわないところがあるんだけど?」

「気にくわない? いったい何が……」

「ええ。さっき、『有記念に出走できた奇跡』なんて言ったわよね?」

「ああ。まぁ……言ったな」

「奇跡といえば……たづなさんから前に聞いたんだけど、アタシが初勝利した後に黒岩理事に色々言ったそうじゃない? ……そのときのアナタの言葉、そのまま返してあげるわ──」

 

 そう言って、ダイユウサクはズイッと迫る。

 

「有記念への出走、が奇跡なんかじゃないわ」

「えッ?」

 

 思わずキョトンとするオレ。それに彼女は──

 

「奇跡は──これからよ!」

 

 そう言ってダイユウサクは──あの、オレが最も好きな──勝ち気な笑みを浮かべた。

 それを見てオレは直感した。ピンときたのだ。

 

(ああ、これで──万全だ)

 

 最後のピースがハマった。

 オレにはそう思えた。

 昨日までの調整で完全な仕上がった体に、今朝の一件で一度打ち直された精神が加わり、そして完成したのだ。

 

(これぞまさしく究極にして至高の仕上がり)

 

 もう一度、この状態にしろと言われても二度とできないと断言できる。

 まさに“完璧な”(パーフェクト)ダイユウサク、だ。

 だからオレは──

 

「ダイユウサク!!」

 

 係員に連れられて、関係者用出入口へと向かうアイツへ声をかけた。

 思わず立ち止まって振り返ったのを見て──

 

「グランプリを、獲ってこい!!」

「──ッ!!」

 

 オレの声に彼女は、突然、オレの下へと一直線へ駆け寄ってくる。

 そしてその勢いのままにオレに飛びつき──

 

「その言葉を、待っていたわ」

 

 突然の行動に驚きながらも──オレはなんとかそれに持ちこたえて倒れるのを防ぐ。

 それに精一杯だったオレの頬に……暖かなものが触れる感触があった。

 

「ッ!?」

 

 戸惑うオレ。

 しかしそれは数秒にも経たぬ間に無くなり──彼女は唇を離していた。

 

「あの時の約束──半年というのはだいぶ過ぎちゃったけど……“誰にも負けないウマ娘”になった姿、アナタに見せてあげる」

「ああ……信じて、待ってるぞ」

 

 オレの言葉にダイユウサクはうなずいて──離れる。

 そして戻ってきた係員に謝ってから、共に去っていく。

 その姿を見送りながらオレは──少し慌てん坊のサンタクロースからのプレゼントが、日本中を驚かせることになるかもしれない、と思った。

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 ──で。

 

「なんじゃこりゃああぁぁぁぁぁ!!」

 

 身分証が無かったオレは、どうにか連絡が付いた巽見からURAの発行するトレーナーの身分証を受け取り、関係者側へと入ることができた。

 そして、バイク用のジャケットから着替えようとしたのだが──そこにあった服を見て、思わず叫んでいた。

 

「オイ! ミラクルバード、なんだよこの服……」

「ああ、それ? 巽見トレーナーが見つけてくれたんだよ。一番出しやすいところにあってちょうど良かったって──」

「出しやすいところに準備していたんじゃねえよ! この前の記者会見とかセレモニーで着たから、手前にあっただけだ!!」

「……でも、問題ないよね?」

「大ありだ!! 上位予想されてるウマ娘のトレーナーならともかく、下から二番目(ブービー)人気のオレが……」

「ああもう! 勝つって信じてるんでしょ!?」

 

 話を聞いていた巽見がじれったそうに大きな声を出す。

 

「そ、それは……」

「なら、何も恥ずかしくないでしょ!? 腹をくくりなさい!」

 

「…………はい」

 

 オレはうなずいて、それに着替えるしかなかった。

 そして──

 

 

 その服に着替え……所在なげに廊下を歩いていたオレを見た別のトレーナー達が、二度見するのがわかった。

 

「え? 乾井トレーナー……? その服……」

「──ぷッ、あれ? オシャレしてどうしたんです?」

「乾井さん、レースが終わったらクリスマスパーティにでも行くんですか?」

 

 ……オイ、巽見。失笑されてるじゃねえか。

 そりゃあそうだろ。なにしろオレは──正装でこの場にいるんだから。

 まるでパーティに出るような格好……まるでもなにも、この前のレース前イベントに出席したときの一張羅だからな。

 それを巽見とミラクルバードが持ってきた。いや、それしか持ってきてなかったんだ。

 

(だからオレには他に選択肢なんか無かったんだよ!)

 

 他のトレーナーたちが、()()()()()()()()()()()オレの服を見て冷やかすのも無理はないだろう。

 だが、オレはグッと我慢した。涼しい顔を装いながら、答えてやる。

 

「出走するウマ娘のトレーナーなら、当然だろ」

「……なるほど。そういうことですか」

 

 居並ぶトレーナーの中で、髪をショートカットにした小柄な女性トレーナーが鋭い目をオレに向け、なんか訳知り顔で頷いている。

 え? なに、オレの強がりがバレた?

 さすがは天才トレーナー……奈瀬文乃だな。

 

「確かに、走る前からトレーナーが諦めているようでは、話になりませんからね。指導を受けるウマ娘達も可哀想というもの」

 

 そう言って──奈瀬トレーナーは、オレをバカにした目で見ていた周囲のトレーナーを冷ややかな目で見渡した。

 それで他のトレーナー達は、慌てて目をそらしたり、ゴホンと咳払いなんかして誤魔化していた。

 ふむ……さすが天才、スゴい深読みだな。

 

 

 ──そういうことにしておこう。

 無論、この人が担当しているウマ娘にも……オレのダイユウサクは負けないがな。

 




◆解説◆
【I'll Come!】
・今回も元ネタは『サイバーフォーミュラ』シリーズから。
・その最初であるTVで放送された『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』のOP「I'll Come」からほぼそのまま。
・シチュエーションがまさに歌詞と同じ感じだったので。
・今話終盤でのダイユウサクとトレーナーのやり取りも元ネタは『サイバーフォーミュラ』のTV版。最終回前の第36話の終盤でのハヤトとアスカの、その直後のハヤトとアスラーダの会話のオマージュです。
・……一方、お父さんは「I'll Come」ではないという。

忘年会
・1991年の第36回有馬記念を、ダイユウサクの馬主さんは見に行ってませんでした。
・ブービー人気だしまさか勝てるわけがない、そう思って地元(名古屋)で忘年会に参加していたそうな。
・その時は観光に行った娘さんが代理で見に行ったそうですが、その目的は──

ディ○ニーランド
ディズ○ーランド
・馬主の娘さんの目的は、舞浜の()()
・所在地は同じ千葉県浦安市。浦安は千葉の端っこで市川市としか隣接していませんが船橋市とはすぐ近くです。
・当時は「ほにゃららシー」なんてものはなく、ランドだけでした。
・なお「エレクトリカルパレード」もあえて台詞で当時の名称で出しました。
・ちなみに東京ディズニーランドはアメリカ国外で初めてのディズニー・テーマパーク。
・建設前は、千葉県浦安市以外にもいろいろ候補地があったらしいです。
・それは──長野県大鹿村、静岡市清水区、御殿場市、神奈川県横浜市、川崎市、千葉県我孫子市、茨城県ひたちなか市、岩手県盛岡市といったところ。
・ただ、ディズニー側は浦安一択だったそうな。まぁ、横浜や川崎はともかく東京から遠いところばかりですしね。東京から在来線で1時間以内なのはその二つ以外だと我孫子くらいですし。
・その開業は1983年。当時はまだ開業から10年も経っていないころですから、そりゃあ行きたいのも仕方ない。
・1991年は総来客数1億人を達成した年で、翌年92年には三大マウンテンの一つ、「スプラッシュマウンテン」がオープンしてます。
・残りのスペースマウンテンは開業時から、ビッグサンダーマウンテンは87年オープンしていて、もうありましたが。
・なお、中山競馬場最寄りの船橋法典駅から東京ディズニーランド最寄りの舞浜駅までは、電車では最短で乗り換え無しの15分で着きます。

中山駅
・JR横浜線と横浜市営地下鉄の駅。
・所在地は神奈川県横浜市緑区寺山町および中山。だから中山という駅名なんですね。
・もちろん府中本町から行こうとすると、乗り換える必要があります。
・なお、他にも“中山駅”はある……のではなく、過去にありました。
・岡山県にあったのですが、すでに廃駅になってます。
・また樺太にもあったそうなんですが──それも廃駅に。
・ただ、現在も現役の“中山駅”もあるんですけど……台湾です。ですので正しくは中山(ゾンシャン)駅。
・廃駅は行くわけが無いし、台湾は勘違いするわけがないのでそこへ行く案はありませんでした。
・ちなみに、“中山とつく駅”の中には、中山競馬場(中山レース場)に近い駅もありました。
・総武線の「下総中山」と京成電鉄本線の「京成中山」「東中山」があって、役2キロメートル以内の範囲内にあります。
・「東中山」に関しては最寄り駅だったこともあったそうな。
・なお……最寄り駅の「船橋法典」の“法典”ってなんだろう? と思ったのですが、船橋市に合併する前の市町村の1つ“法典村”かその元になった地名からかと。

船橋レース場
・こちらの世界の船橋競馬場のこと。
・中山競馬場の所在地が船橋市古作一丁目なのに対し、こっちは船橋市若松一丁目。
・地方競馬の競馬場で、南関東公営競馬を構成している一角。他は大井競馬場、浦和競馬場、川崎競馬場。
・同じ県でさえ複数あるのが珍しいのに、1つの市に2つの競馬場がある船橋市ってスゴい。
・なお、こちらの最寄り駅は京成線「船橋競馬場駅」。あとは京葉線の「南船橋駅」。西船橋から武蔵野線に乗り入れている電車もあるので、府中本町まで乗り換えなしでいける……かも。

迷子
・有馬記念当日に、ダイユウサクに騎乗する熊沢騎手が、中山競馬場での騎乗が初めてで道に迷ったというエピソードが今回の元ネタ。
・……さすがにここまで大幅な間違いはしていないですけど。
・というか熊沢騎手、また迷ったんスか?(笑)
・ええ。コスモドリームのオークスでも同じように初騎乗で東京競馬場で迷ったんですよね。コスモとはこんな共通点もありました。
・だからあの時、そんなに責めるなって言ったのに……

ハンドルの後ろあたりの大きなところにヘルメットが収まってる
・いや、普通のバイクはそこはガソリンタンクですよ?
・ただしトレーナーの愛車のNC750Xはそこがメットインになっていて、ヘルメットも──ものによっては──入ります。
・フルフェイスやシステム(一見フルフェイスだけど面が開く)だと入るものがあったり、入らなかったり……
・同じシステムでもSHOEIの「NEO TEC」は入ります(~Ⅱはわかりません)が、OGK KABUTOの「RYUKI」は入りませんし。(※今年のフルモデルチェンジ前の、2020年モデルで検証)
・あと、スクーターのメットインは座席の下ですので、そこにはありません。

正装
・この元ネタは、ダイユウサクを担当していた内藤調教師の有馬記念当日の服装から。
・まるで表彰式に出るようなその姿……当然、14番人気の競走馬の調教師がしてくるようなものではなく──周囲は唖然。
・しかし、内藤調教師にとってこの服装は必然ともいえるものでした。
・今まで何度か触れているように、前の週には「5枠に入ったダイユウサクが勝つ(そして大量の現金と共に帰る)夢」を見たのをはじめ、現実でもダイユウサクの仕上がりは「もう一度同じ状態にしろと言われても不可能」な程に最高潮で、自信を持っていたからです。
・「これなら無様なレースはしないだろうし、これはもしかするともしかする」と考えており、勝つ目算は内藤調教師には十分にありました。
・それゆえの、“理由ある正装”だったのです。

奈瀬文乃
・読み方は「なせ ふみの」。シンデレラグレイに登場する天才トレーナー。別名《王子様》。スーパークリークの担当トレーナー。
・《魔術師》の異名を持つ優秀なトレーナーの父を持つ若手トレーナーで、一人称は「僕」。
・というように、そのモデルは現実世界の天才ジョッキー・武豊騎手。
・そんな天才トレーナーがなぜこの場にいたのか、といえば……
・1991年の有馬記念でメジロマックイーンに騎乗していたのは武豊騎手だから。
・そんなわけで……一応、本作の裏設定ではマックイーンの担当は奈瀬トレーナーとしたいのですが、マックイーンは様々なところで主役級なのでいろんな担当トレーナーがいるんですよね。
・やはり一番イメージが強いのはアニメ版の《スピカ》トレーナーですから、奈瀬トレを担当と明言すると違和感が出てしまうので、ここではあえて誰のトレーナーかは出しませんでした。


※次回の更新は12月22日の予定です。         

※ただし時間が午後7時ではなく午後3時20分となります。

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