【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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ハーメルン初投稿です。
表か、コメント等応援よろしくお願いします。


悪役令嬢は兄と仲良くなりたい
どうしてこうなった


なんでこんなことになったのよ!

 

私は世界で一番かわいい子なんでしょ?

私は一番キレイでステキで、愛さずにはいられない子なんでしょ?

 

だから、最高のオシャレをしてお茶会に参加したのよ!

 

なのに、キラキラの銀髪をした男の子は

「女の子って弱いから遊ばないよ」

って言ってどっかに行っちゃうし!

 

金髪の王子様は

「ひとりでお茶が飲みたいから、ごめんね」

って言って同じテーブルに座らせてくれなかったし!

 

泣きボクロのお兄さんは

「子供がうろちょろするな、帰れ」

って言ってつまみ出そうとするし!

 

なんなのなんなの!

みんな私の言うことなら何でも聞いてくれるんじゃないの?

私が一番ステキでかわいいレディだから、何でも望みがかなうんじゃないの?

 

どうして誰も私の言うことを聞いてくれないの!

どうして誰も私のことだけ見てくれないの!

 

「おい、泣いて暴れるようなら……」

「うるさい! 私悪くないもん!」

 

泣きボクロのお兄さんの手を振りほどいた瞬間、私の体がぐらりと傾いた。

買ったばかりの赤い靴が、芝生の上で滑る。

 

「きゃあっ!」

 

テーブルに思い切り頭をぶつけて、目の前が真っ暗になった。

 

 

===================================================

 

 

 頭をぶつけて、前世の記憶を思い出しました。

 

 目を覚ますと同時に頭に浮かんだフレーズに、私は顔をしかめた。

 異世界転生もののラノベではよくある展開だ。頭を打ったとか、適当なショックで、今まで封印されていた記憶がよみがえり、新しい自分になったことを喜ぶ。

だいたいはそういう展開なのだが。

 

「なんちゅーところに転生してんの、私」

 

 最初に口からこぼれた言葉はそれだった。

 

「あ、あら? お嬢様、気が付かれましたか?」

 

 私の声に気づいた女性が振り返る。お仕着せのエプロンドレスを着た、下働きの女性、いわゆるメイドというやつだ。彼女は私の顔をあわてて覗き込んでくる。

 

「私がわかりますか? 気分は悪くありませんか?」

「大丈夫よ、ミリー。意識ははっきりしてるわ。痛いところもないし」

「お目覚めになられてよかったですわ。すぐにご主人様と奥方様をお呼びしますね」

 

 丁寧にお辞儀をすると、ミリーは部屋を出て行った。

 私はのそのそと体を起こす。

 

 周囲を見回すと、贅を凝らした美しい寝室の光景が目に入った。現代的な豪華さではない。

 ベルサイユ宮殿とか、ノイシュヴァンシュタイン城とか、そんな感じのヨーロッパの古城を思わせる優美なデザインの部屋だ。

 ここには見覚えがある。

 自分の部屋なんだから当然だ。

 私の『今の名前』はリリアーナ・ハルバード、10歳。

 南部地方を治める大侯爵の長女であり、乙女ゲーム『イデアの輪舞』の登場人物だ。

 

「なんでよりによって超クソゲーの最凶悪役令嬢に転生してんのー!」

「えー、それを望んだのは小夜子ちゃんじゃないですか」

 

 いきなり日本語で話しかけられて、私は動きを止めた。

 

「え……誰?」

「はーい、お久しぶりー!」

 

 声のする方向を見ると、デニムパンツにパーカーを着込んだイトコのお姉ちゃんが立っていた。

 

「メイねえちゃん? えええええ? どういうこと? ここってまだ夢の中?」

「はいはい落ち着いて。小夜子ちゃんは起きてるし、ここは現実だから安心してー」

「ゲームの中に転生して生前の知り合いと会話するなんてシチュエーション、夢だってほうが説得力あると思うんだけど?」

「事実は小説より奇なりって言うでしょう」

「奇なり、の範疇をぶっちぎりで越えてるから! なんでここにメイ姉ちゃんがいるの!」

「んーとね、それは私が実はこの世界を守護する運命の女神様だったからです!」

「……は?」

 

 もう一度意識が飛びかけた。

 茫然とする私の目の前で、一瞬メイ姉ちゃんの輪郭がほどける。そして次の瞬間には、女神としか言いようのない神々しい姿の女性が現れていた。

 

「これが本来の私の姿でーす。どう? それっぽいでしょ?」

「口調がメイ姉ちゃんじゃなかったら、もっと説得力があるんだけどね……」

 

 とりあえず、彼女が女神様だということは、間違いなさそうだ。

 

「なんでそんな人が私のイトコだったんだ……」

「ああ、それは暗示ですね。病室暮らしのあなたと知り合いになるために、適当な関係性を刷り込ませてもらいました」

「えええ」

「私が母方父方、どっちのイトコか正確に思い出せます?」

「そ、そんなの……あれ?」

 

 そういえば、前世の両親はどっちも一人っ子だったような……そんな状態でイトコなんてものが存在するはずがない。

 

「わ、わけがわからない……どうしてそんな暗示までかけて、他の世界の女神が私のイトコになってんの」

「それはゲームをしてもらうためですね」

 

 メイ姉ちゃん、いや女神は懐からいくつものゲームソフトを取り出した。

 それは、ヒマを持て余した私に彼女が『テストプレイして』と持ってきた開発中の乙女ゲームたちだ。

 他にやることもなかったから遊んでたけど、あれはマジでひどかった……。

 不公平すぎるパワーバランス、意味不明のフラグ管理、不条理なイベント、初見殺しの伏線。リリース前でデバッグ途中だとメイ姉ちゃんは言っていたけれど、ちょっとやそっとの修正では、どうにもならないと思う。

 

「あれ、ただのゲームじゃなくて、私が管理している世界のシミュレーションだったんですよねえ」

「え」

 

 今なんと?

 

「あれ……もしかして、現実……なの?」

「ある世界にとっては」

「えええええええ」

 

 あんなクソゲーの中で生きる人類がいるの? 不条理すぎない?

 

「若くして病気で命を落とすことになった、小夜子さんの人生に不条理はなかったと?」

「……不条理てんこ盛りだったね、そういえば」

「まあそんな不条理の中にあっても、人の子を幸福へと導くのが私の役目なのですが……どうにも、私にはそのあたりをうまく運ぶ才能がないようで。何をどうシミュレーションしても、必ず世界が崩壊するんですよ」

「ひどい女神だなあ」

「私も、それでいいとは思ってませんよ? やっぱりみんな幸せにしてあげたいですし。そこで、人の子自身の手を借りることを思い付いたんです」

「それが、あのクソゲー?」

「ええ、ポジティブ思考の人の子にハッピーエンドまでの道筋をシミュレートさせ、その攻略情報をもとに世界を導く。完璧な世界救済です」

「うわあ……ゲームのデバッグのつもりが、世界のデバッグをやっちゃってたよ。いいのかなあ」

「みんなが幸せならそれでいいのです。実際、小夜子さんはとてもいい仕事をしてくださいましたよ? おかげで、25もの世界の滅亡を回避できました。あなたは、文字通りの救世主なのです」

「……はあ」

 

 クソゲーで遊んでただけで救世主。いまいちぴんとこない。

 

「でも、それだけ世界を救っておいて、何も報いがないのはかわいそうでしょう? だから、私はあなたに新しい生を与えることにしたのです」

「それが、この転生ってこと?」

「ええ。私が干渉できるのは、あなたがプレイしていたゲームの世界だけです。それでも健康な体を持って新しく生をやり直すのは、若くして病に倒れることになったあなたにとって、救いになると思ったのです」

「はあ……それは、嬉しいんだけどさ。なんでまた、『イデアの輪舞』なの? 遊んだ中ではぶっちぎりのクソゲーだったじゃん」

 

 イデアの輪舞曲は、メイ姉ちゃんからもらったゲームの中で一番のクソゲーだ。

 ジャンルは一応乙女ゲーム。世界を救う聖女に選ばれた少女が、ヒーローたちと協力しながら危機に立ち向かうという王道ストーリーだ。

 しかし、ストーリーは王道でも設定はめちゃくちゃだった。王宮は権力闘争の真っ最中、野山は危険な魔物の巣窟だし、国際情勢は数か国が同時に侵略を企てているカオス状態。選択肢をひとつでも間違えようものなら、スパイや暗殺者にあっという間に殺される。

 その上、世界崩壊の危機である。人同士のトラブルを乗り越えて恋を成就させたとしても、最終的に世界が救えなければそのまま星ごと滅びてバッドエンドだ。

 乙女ゲームのはずなのに、愛が世界を救わないとか、どんな世界観だよ。

 むきになってやりこんでたけど、生きている間に大団円を拝むことはできなかった。

 

「だから、それを選んだのは小夜子さんなんですってば」

「えー?」

「死の間際に枕元に立って、今までプレイしたゲームのどこに転生したいか、ってきいたら……クリア済みのゲームに興味はない。どうせ再プレイするなら、大団円ができなかったイデアがいいって」

「誰だよ、そんな廃ゲーマー発言した奴」

「小夜子さんですよ」

「……」

「覚えがないですか?」

「……ないけど」

 

 死に際のテンションでそれぐらい言いそうな気はする。

 というか、たぶん言ってる。

 

「ヒロインじゃなくて、悪役令嬢なのはなんでなの」

「それも小夜子さんの希望ですね。イデアの世界で起こる悲劇はゲーム開始時点ですでに確定しているのがほとんどでした。悲劇を事前に回避するために、幼少期から貴族社会で影響を与えることのできるポジションとして、リリアーナを選択したんですよ」

「あー……確かに、それはプレイ中から思ってたなあ。ヒロインが現れるタイミングじゃどうにもならない事件ばっかりだったから」

 

 ライター何考えてたんだ、って思ってたけど現実だったのならしょうがない。そもそも、論理的に筋を作るライターが存在しなかったんだから。

 

 だからって、最凶悪役令嬢を選ぶのは思い切りすぎだけど。

 これも死ぬ間際のハイテンションで選んだ道なんだろう。だって、あの時は走馬灯ついでに見た幻想だって思ってたんだもん。実現するなんて思わないじゃないか。

 

 頭を抱える私の隣で、メイ姉ちゃんはにっこりわらった。

 

「偽りの身分での関係ではありましたが、あなたは私のよき友人でした」

「え、なんで話をまとめにかかってるの?」

「願わくば、最高に幸福な人生を」

「ちょっと!」

 

 キラキラを光ったと思ったら、次の瞬間にはメイ姉ちゃんの姿は消えていた。

 

「言うだけ言って消えないでよー!」

 

 これからどうしろっていうの!

 

 




というわけで、お話のはじまりはじまり。

恋愛するには家庭環境がアレすぎて、なかなか恋愛しませんが、魅力的な男性キャラはいっぱい出てくる……はず。たぶん。
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