【コミカライズ】クソゲー悪役令嬢~ 滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

137 / 490
よくやった

「大丈夫、なんて……ずいぶん甘いことを言うじゃない。どういう風のふきまわし?」

「どうもこうも、俺はいつも通り発言しただけだ」

 

 不思議に思って見上げても、フランの表情は変わらない。

 

「……お前はどう思っていたか知らないが、俺もさすがにあのふたりの相性が悪いようなら、あんな提案はしていない」

「そうなの?」

「無理な夫婦関係は結局破綻して家の衰退を招くことが多い。姉の母の実家がいい例だ」

 

 そういえば、フラン自身も政略結婚の弊害の中で育ったんだっけ。

 

「だが……あのふたりは、俺が『倫理を捨てて』などと強い言葉を使った時も、ずっと相手の事ばかり気遣っていたからな。……悪いようにはならないだろう」

「そっか、そうだよね」

 

 返事をしながら、私は思わず顔がにやけるのを止められないでいた。

 もー、この相棒は!

 結局めちゃくちゃ優しいんじゃないか。

 わざわざ汚れ役を引き受けてまで、ふたりの絆を確認するとか、器用なんだか不器用なんだかわからない。もうちょっと素直になってくれてもいいんだからね?

 

「リリィ、淑女がどうの、と主張するのなら気分次第で俺にハグするのはそろそろやめろ」

「これは騎士をねぎらう淑女の祝福ですー」

 

 フランはジェイドたちと違って、頭なでなではさせてくれないし?

 

「男の頭をなでようとするな。……と」

 

 唐突にフランの手が私の頭に載せられた。そのまま、よしよしとなでられる。

 

「な、なに?」

 

 今誉めるべきはフランであって、私じゃないよね?

 

「俺の方こそ誉めるのを忘れていた。ごたごたしていて、言いそびれていたが……護衛に裏切られて孤立無援の状態で、よく全員生き残った。……がんばったな」

「う……」

 

 今更それを言うのは卑怯ー!

 そうだよ!

 私がんばったんだよ!

 誰も見捨てないためにがんばったの!

 自分ひとりじゃ、全然どうにもならなかったけど、それでも、シルヴァンにもクリスティーヌにも、フィーアにだって不幸になってほしくなくて。

 めちゃくちゃがんばったんだよ!

 

 誰に認められるつもりもなかったから、黙ってたのに。

 そんな風に頭をなでられると、困るじゃん。

 

 顔が上げられなくなって、フランに抱き着いたままになっちゃうのは、しょうがないと思う。

 服に謎のシミができても、文句は受け付けないからね!!

 

「その程度、構わん」

 

 そこで男気を発揮するな。

 ますます顔が上げられなくなるだろーが。

 

「卑怯者ぉ……」

「なにをどうすれば、そんな結論になるんだ」

「フランがずるいこと言うのが悪い」

「……減らず口を叩けるなら、もう大丈夫だな」

 

 私が泣き止んだと判断したフランは、容赦なく引きはがしにかかった。

 おい、レディに何をする。

 

「そういう猫の子みたいな扱いはひどいと思うの」

「文句は猫の子のような行動を改めてから言え」

「私は淑女ですー!」

 

 こうなったら意地でもしがみついてやろうか。

 フランとしょうもない攻防戦を繰り広げている最中に、突然ドアが開いた。普段、何があろうとも必ずノックするうちの使用人にしては珍しい。

 

 顔をあげると、フィーアの金色の瞳と目があった。

 フィーアは私たちを見ると、目をまん丸にして、それから耳まで赤くなる。

 

「あ、あの、失礼しました! ぞんぶんに逢瀬をお続けください!」

 

 その反応を見て、私は今の自分がどんな状況に見えるか、ようやく理解した。何も知らない人にとっては、成人男性と少女が抱き合ってキャッキャしてる構図……だよね。

 

「フィーア、待って!」

 

 これは、そういうんじゃないから!!!

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。