【コミカライズ】クソゲー悪役令嬢~ 滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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死者こそ救え

「父親を告発しようとしたダリオ・カトラスが、逆に殺される。それが、ご主人様の『予言』なんですね」

 

 フィーアの問いに、私は頷く。

 

「私たちは、彼を死なせないために、カトラスに来たの。非業の死を遂げる、ということは、彼には生きるべき理由があるのよ」

 

 何度か運命を変えて、抱くようになった疑問がある。

 ゲーム内で登場する攻略対象は、確かにみんな有能だ。政治的にも重要なポジションにあり、まさに世界を救うキーパーソンと言っていい。しかし、ゲームに登場する人物だけ注意していれば、それでいいんだろうか?

 

 マシュマロボディでのんびりしていたはずの、『最強騎士』と『白百合』。

 暗殺されていたはずの、『宰相閣下』と『優秀な跡取』

 弟子の命と引き換えに死んだはずの、『東の賢者』

 

 彼らはいずれも、攻略対象と同レベルの優秀な人々だ。

 年齢を重ねているぶん、彼らより強力なカードと言っていい。

 

 元々彼らの運命を狂わせていたのは、主にアギト国だ。

 アギト国は、ハーティアを弱体化させるために、何十年もかけて優秀な者を排除してきたから。だとすれば、ゲーム開始前に殺されたり、排除された人物こそ、真にアギト国の脅威となる人材だったのではないか。

 そして、近い未来に命を落とす、ダリオもまたそのうちのひとりだ。

 

「まだ、仮定の話だがな」

「でも、やってみる価値はあるわ。欲に駆られて人の売り買いをするようなおじさんより、それを止めようとした息子のほうが侯爵にふさわしいと思うもの」

「……ダリオ個人のことはご存知ないのですか?」

「ずっとハルバードに引きこもってたからねえ」

 

 攻略本にもあんまり情報がないしね。攻略対象だったルイスの台詞から考えると、リーダーシップのある、優秀な人だったっぽいけど。

 

「フランも、あんまり親しくはないんだっけ?」

「同じ勇士7家だが、彼とは顔見知り程度の間柄だ。同じ王立学園卒業生だが、5歳も年上のダリオとは、学年が違いすぎる。わかっているのは、そこそこ優秀なことくらいか。……良くも悪くも、現カトラス候が目立っているせいか、関連する情報が少ないんだ」

「キャラの濃い父親のせいで、霞んじゃってるのね。弟のルイスもそんな感じだったなあ」

 

 ルイスルートで必要とされたのは、高度なカウンセリング力だった。父の暴挙に振り回され、すぐに後ろ向きになってしまうルイスを、ひたすらに励まし続けるのがヒロインの主な仕事だった。ダリオも同じキャラだったら面倒くさいなー。

 

「俺が暗殺組織にもぐりこみ、ダリオ殺害の指示が出たところで阻止する計画だったが……正体がばれた今、今後どうするかが問題だな」

「メンバーとして中に入り込むのが無理なら、客として入っていくしかないんじゃない? ちょうどおあつらえ向きに、闇オークションに参加する理由も条件もそろったんだから」

 

 フランが肯く。彼もこの方針に異論はないようだ。

 

「じゃあ早速準備しなくちゃね」

 

 私は立ち上がった。

 オークションなんてところに潜入するなら、それなりの恰好をする必要がある。

 忙しくなるぞー!

 

 しかし、フランは気合をいれている私を猫の子のようにつまみあげると、ソファの上に戻した。

 

「は?」

「お前は留守番」

 

 なんでだよ!!!!!

 

 


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