【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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幕間:補佐官殿の憂鬱その4(フランドール視点)

 フィーアに呼ばれてドアを開けたら、見知らぬ女がいた。

 

 結い上げた艶のある黒髪、抜けるように白い肌。

 長い睫毛に彩られた瞳は、ルビーのようにきらきらと輝いている。

 極上のパーツを合わせた造作は整いすぎていて、いっそ作り物に見えるくらい美しい。

 

 やや視線を落とした先、体のバランスも完璧だった。

 長い手足、整えられた指先。

 瑞々しい果実のように張りのある胸、その下の細くくびれた腰。

 赤い絹地のドレスは、彼女の体の美しさを引き立てるために作られたとしか思えない。

 

 今まで誰を見ても、そんな感慨を覚えたことはないが、今なら断言できる。

 最高の美女だ。

 俺が今まで見て来た女の中で、間違いなく一番美しい。

 

 誰だ、この女は。

 ここはハルバード家貸し切りの別荘だ。

 部外者が入り込む余地はないはず。

 

 それなのに、何故。

 

 答えが目の前にあるようで、つかめない。

 脳が答えを拒否している。

 

 茫然としているうちに、女はすっと部屋の中に入ってきた。

 俺はあわてて彼女を引き留める。

 

「おい、待て……」

 

 声をかける俺に向かって彼女が振り向く。

 そして、ひどく見慣れた表情で笑いかけてきた。

 屈託のないその笑い方のせいで、つくりものめいた印象が崩れる。花が咲きほころぶような、かわいらしい笑顔だった。

 

「さて、ここで問題です。私は誰でしょうか!」

 

 夜中に俺の部屋に尋ねてきて、こんなバカバカしい問答をしてくる人間はひとりしかいない。

 思い至った答えに、脳を殴られるような衝撃がきた。

 嫌だ、認めたくない。

 

「リリアー……ナ?」

 

 最後の力で声を絞り出すと、彼女ははじけるように笑い出す。

 

「正解!」

 

 誰か嘘だと言ってくれ。

 

「リリィ? お前、その姿は……」

「ディッツに変身薬を作ってもらったの!」

 

 あの野郎。

 なんてことしやがる。

 

「男女をいれかえる薬が作れるくらいだ。年齢操作くらいお手のものか」

「実は性別を変えるより簡単らしいわよ」

「……そうか」

 

 頭の中でディッツの台詞がぐるぐる回る。

 

『俺はお嬢の味方でしかないので、気を付けてください』

 

 あいつ、これを知ってて俺をからかいやがったな。

 何が、覚悟しておけだ。

 

 部屋の隅で立っているフィーアに目をやると、いつもの無表情を装いながら、薄く笑っている。彼女もグルだ。

 

「闇オークションに参加できないのは、子供だからよね? だったら、大人になった今は大丈夫よね!」

 

 大丈夫なわけあるか!

 こんな美女、犯罪組織の巣窟に連れていったらどうなると思ってるんだ!

 

 と、怒鳴りつけたいのに声が出ない。

 

「精神年齢は、もともと18歳だったわけだしね?」

「……病院暮らしの少女の精神だがな」

「ダメ?」

 

 リリィが俺を見上げてくる。

 

 やめろ。

 上目遣いで見てくるな。

 

 そんなポーズもとるな。

 否応なく、胸の谷間が目に入るから。

 

「……」

「フラン、お願い!」

 

 俺が黙っていると、リリィが抱き着いてきた。

 13歳の姿ならよくやっていたおねだりのハグ。だが、今この状況では意味が違う。

 

 身じろぎしようとしたら、俺の胸板とリリィの体の間で、胸がつぶれて形を変えているのが見えた。

 

「……った」

「フラン?」

「わかったから、手を離せ!」

 

 お前は俺の心臓を止める気か!!!!!!

 

 

 

 

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