【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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バルコニー席にようこそ

 ライオンの仮面の男……ダリオに案内され、私は劇場の3階にのぼった。フロアロビーの両脇に伸びた廊下の奥に進むと、片側の壁にずらりとドアが並んでいる。これらのドアひとつひとつの先に、バルコニー席があるのだろう。

 ダリオが向かったのは、廊下の奥から3番目。かなり舞台に近い場所だ。

 

「どうぞ、マダム」

 

 ダリオは劇場スタッフに扉を開けさせ、私を招き入れる。足を踏み入れてみると、そこは小ぢんまりとした部屋になっていた。手前に小さなソファとコートかけ。あとで身だしなみを整えるためだろう、鏡も取り付けられている。部屋の奥、バルコニーのそばには椅子が2脚置かれていた。舞台の演出を邪魔しないためだろう、全体的に暗い赤で統一された、上品な部屋だった。

 

「こんな風になってるのね……」

 

 世界中の情報に触れて育つ現代日本人でも、外国の高級劇場を探検した経験はない。二つの人生、どちらでも初めて見る光景だ。

 後ろからフランも一緒にドアをくぐるのを確認してから、もう一歩奥に進む。ダリオは約束通り、フランが後ろに控えているのは許容するつもりらしい。器が大きいのか、何も考えていないのか、どうにもよくわからない人だ。

 

 バルコニーから見下ろすと、舞台では次々に品物が紹介されていた。オークションを調整しているオークショニアが、カン! と小気味よい音を立てて木槌を叩くたびに、商品の値段が決まり買い手のもとに運ばれていく。現在は前哨戦として、椅子席に座っている一般客向けの少額商品を入札し合っているらしい。

 反対側に目を向けると、ちょうど舞台を真正面から見下ろす位置に、ひときわ豪華な席が作られていた。恐らく、オーナーなどの超VIPが座る席なんだろう。よくよく見てみると、そこには見事な赤毛のおじさんが、何人もの美女に囲まれて座っていた。歳は50代くらい。間違いない、ダリオの父カトラス候だ。

 一応ゲームと攻略本情報で確信してたけど、闇オークションの元締めがカトラス侯だってことは確定だ。この後、カトラス候を排除してどうにかこの領地をまともにしていかないといけないんだけど……。

 

 私は隣に立つダリオをちらりと見る。

 

 いや本当にマジでどういうことなの。なんでダリオがこんなところにいるのさ。

 あんた止める側じゃなかったわけ?

 ダリオが駄目だったら、当主と嫡男、ふたりまとめて排除した上に、次男のルイスを引っ張り出さないといけなくなるんだけど? そんなのミッションインポッシブルどころじゃないんだけど。

 

 面倒くさいことになったな……そう思いながら、視線を泳がせる。そこで、私は向かいのバルコニー席におかしな点を見付けた。

 

「あれ、どういうことかしら」

 

 今座っているバルコニー席の向かい側。

 ちょうど椅子席を挟んで対称的に並んでいるバルコニー席が縦に3列、まるごと空席になっていた。

 

「さっきは席がもうないって言ってたのに、ガラガラじゃない」

「ああ、それですか。マダム、舞台側を見てください、下から二番目の席だけ、カーテンが引かれているでしょう?」

「言われてみればそうね。……あら、今カーテンが揺れたわ。あそこには人がいるのね」

「それが、マダムのお願いがお断りされた理由ですよ。カーテンの奥にいる者が、周りの座席まで、全部借り切ってしまっているんです」

 

 どういうことだってばよ?!

 

 

 

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