【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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サプライズ

「お次はこちら、異国の歌を奏でるカナリアでございます!」

 

 オークショニアが商品を紹介すると、会場がどよめいた。舞台の上には、美女を閉じ込めた大きな檻が置かれている。恐らく外国人なのだろう、ハーティアでは滅多にお目にかかることのない、褐色の肌が美しい女性だった。彼女は日本の琵琶に似た楽器を抱えて、ぐったりと力なく座り込んでいる。

 

 何度かの激しい競り合いののち、バルコニー席の貴族が勝者となった。

 嬉しそうにガッツポーズを決める貴族とは対照的に、女性の顔が絶望に染まる。貴族のおもちゃになることが確定した女性は、死人のような顔色で運ばれていった。

 

「さて今度は……」

 

 しかし、彼女の絶望などお構いなしにオークションは続く。

 次から次へと、檻に入れられた人間が運ばれてきて、値段がつけられていく。

 

「サヨコは檻の中の商品に興味はないので?」

 

 オークションが人身売買へと移行してから、ずっと黙っている私にダリオが声をかけてきた。

 

「興味があるかないか、って質問だったら、興味はおおありよ。全部買い占めたいくらい」

 

 そして、全員を救いたい。

 

 売られている人たちの肩書はどれも立派なものだった。恐らく、誘拐されてくるまでは、地元で一目置かれる存在だったのだろう。誰も彼も、現在の境遇を受け入れられずに、茫然としていた。

 叶うなら、全員ここから連れ出して、故郷に帰してあげたい。

 

「でも、そんなの無理よね?」

 

 現在の私は、客のひとりでしかないからだ。

 

「ええ。金がいくらあっても足りやしないでしょうね」

 

 実は、金だけの問題ならどうとでもやりようがある。

 ハルバードの財力をフル活用すれば、会場の買い占めだってできない相談じゃない。しかし今彼らを救ったからといってどうなるだろう?

 組織が残されたままでは、第二第三の闇オークションが開かれて、新しく不幸な人が売りに出されるだけだ。ハルバードがいくらお金持ちだといっても、開催されるたび人を買い続けられるほどの財力はない。お金が尽きれば、そこでおしまいだ。

 人を売らせないためには、人身売買組織そのものを破壊する必要がある。

 

 そして、組織を破壊するためには、どうしても『潜り込んで把握する』という過程を踏まなければならない。工作活動をしている間は、誰がどう売られていても、一旦は目をつぶって……彼らを見捨てなければならないのだ。

 

 と、理屈ではわかっていても、いらだつ感情を抑え込むのは難しい。

 

「腹が立つったらないわ」

 

 私にとって、この悪趣味なショーが、何回か体験するうちの一回だとしても、売られる側にとってはそうじゃない。自分の人生を決める、一度きりのオークションだ。誰かに買われて連れて行かれたら、もうその先に真っ当な人生は残されていない。

 わかっていて見過ごすなんて、嫌だ。

 

「サヨコは、ずいぶんとおかわいらしい」

 

 くつくつとダリオが笑う。

 ねえ、その『かわいらしい』、絶対誉めてないよね?

 

 もうやだ、このバルコニー席。

 舞台ではろくなものが売られてないし、ダリオは変な絡み方してくるし、フランはずーっと後ろで黒オーラ出しまくってるし。座ってるだけでストレスがたまる。

 さっさとツヴァイを買って帰りたい。

 カタログによると、今売られているのが最後から二番目。これを耐えればツヴァイの競売が始まる。それまでの辛抱だ。

 

 祈るような想いで舞台を見つめていると、突然オークショニアが勢いよく手をあげた。

 

「ここで、サプライズオークションを開始します! カタログにも載っていない、特別な逸品をどうぞ、ご覧ください!!」

 

 高らかな宣言にあわせて、舞台袖から大きな鳥かごのような檻が運び出されてきた。中には私と同年代の少女がひとり椅子に座らされている。

 その姿を見た瞬間、私は思わず立ち上がってしまった。

 

 彼女の顔に見覚えがあったからだ。

 

「……聖女?」

 

 ゲーム内より少し幼いけど、間違いない。

 あの子は世界を救う運命を背負ったゲームのヒロイン、聖女だ。

 

 

 

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