【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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聖女ヒロイン

 なんでこんなところに聖女がいるんだよ!!!!

 

 私は舞台を見つめながら、心の中で絶叫した。

 間違いであってほしい、と何度も見直すけど、間違いなんかない。

 

 赤みがかったふわふわのストロベリーブロンドに、お人形さんみたいにかわいい顔立ち。薬を飲まされたのか、魔法にかけられたのか、目を閉じてぐったりと椅子にもたれかかってるけど、目をさまして微笑んだら、とびっきりの女の子になることを、私は知っている。

 

 なんで!

 聖女が!!!!

 闇オークションで売られてるかなあああああああ!!!!!

 

 どこでどうなったら、こんなことになるんだよ!

 いつフラグが立ったわけ?

 

「こちらのかわいらしい駒鳥は、ハーティア国のれっきとした貴族子女でございます。家名は明かせませんが、貴き血を受け継いだ穢れなき乙女であることを保証いたします」

 

 カトラス侯爵傘下のラインヘルト子爵令嬢ですねー!

 つーか、誰だよ、本物の貴族令嬢を売りに出した奴は!

 一般庶民と違って、貴族の子弟は国の財産だ。将来国を支える大事な人材として、手厚く保護されるべき立場にある。それを売り買いするとか、頭がおかしいとしか言いようがない。

 

 そもそも、聖女は領地でつつましく暮らしている貧乏貴族令嬢だ。売られるようなことには……あー……ひとりだけ、心当たりがあるな……。

 

 ヒロイン聖女こと、セシリア・ラインヘルトの境遇を一言で表すなら、ずばり『シンデレラ』だ。彼女は領地は小さいが古くから続くラインヘルト子爵家令嬢として生を受けた。しかし、誕生と同時に生母が死去。父親はその数年後に、資金援助目的で商家の娘を後妻に迎えた。けど、その後妻が絵に描いたような意地悪母だった。父が強く出られないのをいいことに、継母は連れ子と聖女を明確に区別し、使用人同然に扱ったのだ。父はセシリアをかばっていたけれど、聖女が13歳の時に病気で死亡。家を完全に乗っ取られてしまう。

 童話のシンデレラの場合、王子様に出会わせてくれたのは魔法使いだったけど、ゲーム内でその役を担っていたのは王立学園だった。実は、子供を王都の学校に行かせる余裕のない貧乏貴族のために、国から結構な額の支度金が支給されるんだよね。

 これは、貴い血に産まれた者が貧困を理由に学ぶ機会から遠ざかってはいけない、っていう崇高な理念によるものらしい。実際、この政策のおかげで救われた貴族は少なくないので、悪い制度ではないと思う。(そう思うなら、庶民も学ばせてやれよ、と言ってはいけない)

 ともあれ、支度金に目がくらんだ継母は、聖女に最低限の学用品だけ持たせて、王立学園に向かわせる。そして、ド貧乏貴族として学園に入学した彼女は、秘められていた力を開花させて、学園の貴族たちと恋に落ちるのだ。

 

 そのセシリアがここにいるってことは……継母が売っぱらったんだろうなあ。

 ゲームの回想でしか見たことないけど、ヤバいくらいの守銭奴継母だったもん。きっと、人買いの提示した金額が、学園の支度金より高額だったとか、そんなことなんだと思う。

 

「血筋はもちろん、しっかりとした淑女教育を受け、行儀作法も教えこまれております。この気高き小鳥の鳴き声は、最高の調べとなることでしょう」

 

 会場内の男たちがどよめく。

 ゲスな変態オヤジにとって、育ちのよい少女ほどおいしいご馳走はない。少女が無垢であればあるほど、汚し壊す愉悦が増すのだ。

 

「アマギ、あの子がほしいわ」

 

 私は願いを口にする。ただならぬ雰囲気を察したフランが前に出た。

 多分ものすごい値段になる気がするけど、ここで彼女を見捨てることはできない。どんな手段を使ってでも、彼女を落札しなくちゃ。

 

 フランが入札の意志を示した次の瞬間、カーテンの人物も手をあげた。

 

 

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