【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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幕間:カトラス侯爵家で最も無駄なもの(ダリオ視点)

 俺の家は昔から無駄なものであふれていた。

 

 無駄な家具、無駄な装飾、無駄な家臣、無駄な女たち。

 父の周りは、常にごてごてとした無駄なもので飾られていた。

 

 貴族の誇りを示すために、必要なものだと父は言った。

 しかし、父が飾れば飾るほど、無駄が増えれば増えるほど、権威は失墜していった。

 

 宝飾品のために土地を売り、

 衣装のために権利を売り、

 何もかも売り払った後には、値段が高いだけのがらくたしか残されていなかった。

 

 何度やめろと言ったかわからない。

 無駄を集めても、結局無駄でしかない。

 誰も救わないし、誰も満たされない。

 こんなことをしても、ただ自分が無駄なものになっていくだけだ。

 

 しかし、父は俺の言葉に耳を貸さなかった。

 子供にはわからない世界だと断言し、破滅への道をただ突き進んでいく。

 そしてとうとう金策に行き詰った父は、人の売り買いにまで手を出した。

 

 人という禁断のおもちゃで遊びたいという外道は、思ったよりも多かったらしい。

 闇オークションが開催されると、今までの借金を返しても余りあるほどの金が転がり込んできた。

 この商売さえあれば、カトラスは未来永劫栄えることができる、と父は笑った。

 そこにかつて見た平凡な父の姿はなかった。

 ただ無駄に取りつかれた狂人がいるだけだった。

 

 その瞬間、わずかに残されていた家族の親愛は消え失せた。

 残ったのは、ただこの狂人を止めなくてはいけないという、使命感だけだ。

 

 俺は、父以外の家族……弟たちを守るため、カトラスの民を守るために、狂人を殺すことを決意した。

 狂人はただ殺しただけでは片付かない。

 カトラスを闇に沈めたのは父だけではないからだ。

 父を狂人に変えた何者か。操っている黒幕も同時に殺さなくては、カトラスの闇を祓うことはできない。

 

 まともな人材を密かに拾い上げ、父の取り巻きを脅し、ゆっくりと時を待った。

 その間何人の人生を見捨てたかわからない。

 しかし、一時の情に惑わされていては、その何百倍もの人生を見捨てることになってしまう。

 

 派手な仮面を被り、父の『お前も商売の良さがわかるようになったか』という反吐の出るようなセリフを受け流し……そしてついに今夜、黒幕本人がオークション会場に現れた。

 父と黒幕、彼らを同時に殺せば、悪夢は終わる。

 

 外道どもの人生はここで全て終わるのだ。

 

「胸糞悪いショーは終わりだ!」

 

 子飼いの兵たちが、会場全てに配置されたことを確認した俺は、舞台上で叫んだ。

 獣人戦士に夢中になっていた連中の目が一斉にこちらに向けられる。

 

「サンドロ・カトラス! 貴様を人身売買の罪で告発する! この会場にいる参加者もだ!」

「ダリオ? お前、父親に逆らうのか?!」

「こんなトチ狂ったバカ、父親なんかじゃねえよ! さっさと死ね!」

 

 父の手勢の配置はわかっている。すでに全員俺の部下が無力化しているはずだ。

 あとは、カーテンの奥に隠れている黒幕を掴まえれば終わりだ。

 バルコニー席を占有して、警備を固めているようだが、そもそも劇場自体を制圧してしまえば意味はない。

 

 俺は、舞台から降りると、観客席側からカーテンに閉ざされたバルコニー席に近づいた。

 カーテンが翻り、中から人が顔を出す。

 

 その瞬間、周りに控えていた俺の部下たちが消し炭になった。

 

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