【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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規格外

 フランの投げたナイフを、少年は聖女を抱えたままひょいひょいとかわした。

 

「もー、危ないなあ。今の攻撃、この子ごと狙ってきたよね?」

 

 少年は口をとがらせる。

 彼が文句をいいながらナイフを避けているすきに、私を隅に降ろしたフランが飛び出した。手に持っている大振りのナイフで、ダリオを拘束している何かを切り払う。

 解放されたダリオは、その場にがくりと膝をついた。

 少年は首をかしげる。

 

「でも、いい腕だね。雑魚ばっかりだと思ってたのに、どこにこんな伏兵を置いてたの?」

「俺の兵じゃねえよ。つーか、お前アマギか?」

「いいから、とにかく立て」

 

 フランは剣を構えたまま、ダリオを無理やり立たせた。

 

「俺が注意を引き付ける。……後退するぞ」

「はあ? ここまできて、さがれだ?」

「まともにやりあって勝てる相手じゃない」

 

 フランの評価は正しい。

 普通、どんな魔法を使っても、いきなり人間を消し炭に変えることはできない。

 生き物の帯びる魔力が、外からの魔力干渉に抵抗するからだ。生き物の抵抗力を上回る、けた違いの魔力で無理やり潰さない限り、そんなこと起きない。

 

 起きるわけがないことを、起こしてるってことは……男の子自身があり得ない存在なんだろう。

 こんな異常な相手に正面から立ち向かって、どうこうできるとは思えない。

 逃げるが勝ち、ってやつだ。

 

「んー、君たち逃げられる気でいる? 僕としては放っておくわけにいかないんだけど」

「貴様の都合は聞いてない」

 

 フランが再びナイフを投げる。

 その瞬間、私は魔法閃光手榴弾《マジックスタングレネード》を放り投げた。

 少年の注意は戦闘力の高いフランに向けられてるはず。別方向からの全然違う攻撃をくらって、行動不能になってしまえ!

 

「ははっ」

 

 しかし、魔法閃光手榴弾《マジックスタングレネード》は発動しなかった。ただの小瓶のように、ころんと床に転がる。

 

「……え?」

 

 もしかして、今の一瞬で魔法閃光手榴弾《マジックスタングレネード》を無力化した? 魔力だけの力技で?

 

「およそ戦えるとは思えない女の子が、爆弾を投げてくる……いい作戦だと思うけど、その程度じゃ僕をびっくりさせられないよ」

 

 少年はクスクス笑っている。

 やばい。

 正攻法も裏技も、少年の魔力の前では、何の意味もなかった。

 そこにあるのは、ただただ圧倒的な力量差だ。

 けた違いの魔力の前に、手も足も出そうにない。

 

「一瞬でも気を引ければよかったんだがな……」

 

 フランの背中が緊張している。

 彼も少年の化け物じみた強さを感じているんだろう。

 少年は全く隙がない。このままでは見逃してもらえないだろう。

 進むにしても、退くにしても、彼の意識をそらす必要がある。

 

 でも……そんなもの……いや。

 たった一枚だけ、彼の気を引くとっておきのカードがあった。

 あとでややこしいことになりそうだけど、考えてもしょうがない!

 私は即座に切り札をきった。

 

「セシリアから手を離しなさい、アギト国第六王子、ユラ・アギト」

「……は?」

 

 突然名前を言い当てられて、少年の顔から余裕が消えた。

 その瞬間、彼の背後に潜んでいた黒猫が、少女の姿になって襲い掛かった。

 

 

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