【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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ハルバードの至宝

「理由を聞かせてもらえる?」

 

 主人の縁談に意見する、という無礼を働いたメイドたちに、私は問いかけた。

 彼女たちは侯爵家に勤める優秀なスタッフだ。もちろん、どこまでが自分の領分なのか、ちゃんと理解している。

 そんな彼らが、あえてその境界線を踏み越えて意見するのは異常だ。

 

 使用人程度、などと一蹴していいものではない。きっと大事な理由がある。

 絶対に耳を傾けるべきだ。

 

 集まったメイドたちのうち、一番年かさのメイドが口を開いた。

 

「おそれながら……お嬢様は、かけがえのないハルバードの宝です。他家に嫁がせては、大きな損失となるでしょう」

「つまり、私に独り身でハルバードに残れと」

「そこまでは申し上げるつもりはありません。しかし……ハルバードに連なる者を伴侶とし、領内に留まっていただきたい、と思っています」

 

 ハルバード領に残る。

 それは単にそこに暮らすというだけの意味じゃない。領主の親族として、運営に関わってほしいってことだ。

 

「3年前のクライヴの事件の折、ハルバードは一度滅びかけました。そんなぼろぼろの侯爵家を守り、立て直したのはお嬢様です。私たちは、何度お嬢様に救われたか、わかりません」

 

 メイドたちはさらに深く頭を下げる。

 よく見れば、意見しようと集まってきた使用人たちは、全員ハルバード領出身だ。使用人として以上に、領内に家族を持つ者として恩を感じているんだろう。

 

「お願いです、お嬢様。ハルバードに残り、アルヴィン様を支えてください」

 

 使用人たちの願いを聞いた私は、大きく息を吸い込むと……。

 

「やだ」

 

 と、バッサリ断った。

 

「お嬢様……!」

「ハルバードの立て直しは私ひとりの力じゃないの。お父様が第一師団長として活躍して名声を集め、お兄様が王都で学業を修めながら事業を立ち上げて財産を作り、ミセリコルデ家から人材援助してもらって、やっとなんとかまとめたの。私の力なんて微々たるものよ」

 

 私は立ち上がって、メイドたちを見下ろす。

 

「それに、よく考えてみなさい。私とお兄様の統治姿勢は似ているようで違うわ。私が残れば、きっといつか意見の対立が起きる。そのときに私が下手に支持を集めてごらんなさい、ハルバードが私とお兄様の間で割れるわ。あなたたちは、ハルバードをばらばらにしたいの?」

「そ……そんなことは……!」

「あなたたちが、ハルバードを愛しているのは知ってる。私のことを評価してくれてることもね。でも、指導者は領内にふたりもいたらダメなのよ」

「……」

 

 メイドたちが俯く。

 彼女たちが、本気で私を想ってくれているのはわかる。だからこそ、頷くわけにはいかなかった。

 

「この件はもう忘れなさい。私も聞かなかったことにするから」

 

 兄様以外のリーダー候補なんて、存在させてはいけない。

 

 次期ハルバード侯爵は兄様。

 その前提が揺らいだら統治なんてできない。

 

「お嬢様……」

 

 別のメイドの声がした。

 

「何? これ以上の話はないわよ」

「それが……お客様がお見えになっていまして……」

 

 彼女は純粋に用事を持ってきた子だったらしい。

 

「着替えたらすぐ行くわ」

 

 来客って、また縁談じゃないだろうな?

 

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