【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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あなたはだあれ?

「リリアーナ様? 何をおっしゃってるの?」

 

 一瞬顔色をなくしたものの、フローラはすぐにかわいらしい微笑みを浮かべて首をかしげた。その様子はいつもと全く変わらない。

 しかし、今はその変化のなさが不気味だった。

 私はポーカーフェイスを装いながら、フローラを見つめる。

 

「あなた、フローラじゃないわよね」

「意味がわかりませんわ。私の名前はフローラです」

 

 フローラが立ち上がり、私に向かって一歩進む。

 その瞬間、私は従者に命令した。

 

「ジェイド」

 

 次の瞬間、ジェイドのしかけた魔法が発動し、フローラはべしゃっと床に倒れこんだ。

 

「きゃあっ! な、なに……っ、服が、床に……っ!」

 

 猛烈な力で地面に引き倒されたフローラは、あわてて体を起こそうとした。しかし、何かにさえぎられて、体を床から離すことすらできない。

 

「いい格好ね」

 

 私はフローラのすぐそばまで近寄ると、彼女を見下ろした。

 

「何なの、この魔法! 風の魔法とも土の魔法とも違う! こんな風に……体だけを引っ張るなんて……!」

「引っ張ってるのは人の体じゃないわよ。その証拠に、私はなんともないでしょ?」

 

 私はフローラのふわふわの袖をめくりあげた。

 

「あなただって、服の下に武器を隠し持ってなければ、倒れたりしないわ」

 

 大きく広がる袖の下、ほっそりとしたフローラの腕には隠し武器らしい刃物が装着されていた。それらが床に張りついているから、フローラは立ち上がれないのだ。

 ちょっとかわいそうかと思ったけど、スカートのほうもめくってみる。

 太ももにもくるぶしにも、刃物が仕込まれていた。体が起こせないみたいだから、胴体にも何か武器が入っているんだろう。

 

「鉄だけを引き付ける魔法……? なんなのそれ!!」

 

 かわいらしい妹令嬢の仮面をかなぐり捨ててフローラが叫ぶ。

 

「ごめんなさいね、手品の種は明かさない主義なの」

 

 私はあえて何も答えずに笑う。

 彼女を床に張り付けているのは、新開発の磁力魔法だ。去年カトラスで手に入れた磁鉄鉱をジェイドが分析して完成させた、最新極秘技術である。

 私の魔力じゃ強力磁石程度でしかないけど、魔法のエキスパートであるジェイドが使えば、工場なんかで使われている超強力電磁石なみの力を出すことができる。今の彼女は完全武装で電磁石の上に載せられている状態だ。

 

「なんてこと……魔力探知は完璧に隠蔽していたはずなのに」

 

 まあ、魔力じゃなくて物理現象で発見したからねえ。

 

 最初におかしいと思ったのは、彼女に静電気魔法を使った時だ。

 なかなか静電気がたまってくれなくて、思ったより魔力を消費しちゃったんだよね。何か金属製の道具を身に着けていないと、こうはならない。

 しかも、魔力探知による武装チェックをしたはずなのに、だ。

 おかしいと思って、雷魔法と磁力魔法の合わせ技で金属探知魔法を作ってみたら、彼女が体のありとあらゆるところに金属を仕込んでることがわかったんだ。そんなものを隠し持っている女の子が普通の令嬢なわけがない。

 

「あなたの様子がおかしいから、ベイルマン領に人をやって調べてみたの」

「な……」

 

 びくっとフローラが体を震わせる。

 

「報告を聞いてびっくりしたわ。フローラは2年も前から病で臥せっているそうじゃないの。しかも、ご両親であるベイルマン夫妻も、何者かに脅されてずっと領地から出ていないそうだし」

 

 私はフローラを見つめる。

 もちろん、出張したのはフランとツヴァイである。ほぼ全部このふたりの手柄だけど、そんなことおくびにも出さずに私は笑う。

 

「ねえ、あなた。そしてあなたを会場に連れてきた自称フローラのお父様。……あなたたちは、誰?」

「……ちっ!」

 

 舌打ちと同時に、フローラが体を起こした。

 武器を持つのは不可能、と判断して服を脱ぎ捨てたのだ。下着姿のまま、私に向かって手を伸ばす。しかし、彼女の手が私に届く直前、横から現れた影がフローラを組み敷いた。

 フィーアが偽フローラを拘束したのだ。

 

 モーニングスター侯爵がフローラを見下ろす。

 

「あの優しいベイルマン夫妻を脅して成り代わるなんて……なんということを。あなたたちふたりは、厳罰に処すことにします」

 

 偽フローラと、会場の隅で警備兵に拘束された偽フローラの父の顔から表情が消えた。

 ここにはモーニングスター家の関係者が全員そろっている。逃げることも言い訳することもできない。

 

「さて、これで3人の婚約者の問題は片付きましたわね」

 

 私はくるりと体を反転させると、椅子に座ったまま茫然としているケヴィンの方を向いた。

 

「最後に残った私が、唯一の婚約者候補ですわ、ケヴィン様」

 

 残るは、ケヴィンの問題だけだ。

 

 

 

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