【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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それどんなクソゲー

 ケヴィンに結婚を迫ったら、ゲイだと告白されました。

 どういうこと? 意味がわからない。

 

 目の前で苦しそうに語るケヴィンが、嘘をついているようには見えないけど。

 

「ずっと前から、違和感はあったんだ。女の子と話しているのは平気なのに、相手が男だと、どきどきして言葉が出なくなる。周りに女の子が多いから、慣れてないだけだと思ってたんだけど……どれだけがんばっても、緊張してしまう」

 

 ケヴィンはぎゅっと目を閉じた。

 

「おばあ様たちに婚約者を紹介されたときもそう。みんな、かわいくて魅力的な女の子だと思ったけど、誰かひとりを守りたい、って思う気持ちは産まれなかった。友達として仲良くしたいとは思ったけど……それ以上の感情は出てこないんだ。それでやっと気づいた」

 

 ふう、とケヴィンが大きく息を吐いた。

 胸を押さえる手はカタカタと小刻みに震えている。

 

「俺は……女の子を恋愛対象として見れない。……きっと、この先何があっても、俺が伴侶として選ぶのは男性だと……思う」

 

 告白と同時に、ケヴィンの瞳からぽろぽろと涙がこぼれおちた。

 

 その様子を見ながら、私は心の中でこの世界をゲーム化した運命の女神を全力罵倒していた。

 乙女ゲームの攻略対象が、LGBTキャラってどうなのよ?!

 確かにね? 現代日本では、結構な割合で同性しか恋愛対象として見れない人がいることが広く知られている。だから、乙女ゲームみたいにたくさんの男の人を集めたら、そのうち何人かはLGBTの可能性はあるけどね?

 そういうのは非攻略キャラでやってくれませんかね?!

 

 どうしてケヴィンのルートだけ、恋愛描写が薄味だったのかわかった。

 だって恋愛してないんだもん。

 

 ケヴィンが女性を恋愛対象として見れないんじゃ、ヒロインがどれだけ恋してアタックをかけても友達にしかなれない。

 何がさわやか友達カップルエンドだ。

 ただの友情エンドだよ、それは!!!!!!

 

「おばあ様……俺を廃嫡してください!」

 

 ケヴィンはモーニングスター侯爵の前に跪いた。

 

「俺は、妻をとれません。みんなが望む、立派な侯爵になって血を繋いでいくことができないんです。こんなに期待してもらっているのに……俺はみんなの思う通りの男になれない……ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」

 

 泣き崩れるケヴィンを見て、私はようやく問題の根底に何があったのかを理解した。

 彼は察しのいい子だ。周囲が自分にどんな行動を期待しているのか、幼いころから知っていたのだろう。にもかかわらず、自分が絶対にそうなれないことを確信してしまった。

 自分が家族の理想の姿になれない。

 その自信のなさが、誰の意見も否定できない優柔不断につながっていたのだ。

 

「謝らなくていいのよ」

 

 モーニングスター侯爵は膝を折るとケヴィンを優しく抱きしめた。

 

「そんなことで、あなたを廃嫡したりしないわ」

「おばあ様……?」

「だって、あなたは私の大事な孫だもの」

 

 にっこり笑うその表情は柔らかい。モーニングスター侯爵としてではなく、祖母としての笑顔だった。

 

「ケヴィン! もう……バカね!」

 

 じっと見守っていた観客の中から、女性がひとりと女の子が三人飛び出してきた。ケヴィンの母親と姉たちだ。彼女たちは祖母と一緒になって末っ子長男を抱きしめる。

 

「そんなの、気にしなくていいの」

「あなたが誰を伴侶に選んだって、構わないのよ」

「子供ができなくったって何よ」

「姉さんたちが、後継ぎを産めば問題ないわ」

 

 口々に慰められて、ケヴィンはまた別の涙を流す。

 

「いいの……こんな俺で……」

「あなたがいいの」

 

 モーニングスター侯爵がそう言うと、会場から一斉に拍手がおきた。彼女の決定と、ケヴィン自身を認める拍手だ。ケヴィンが受け入れられずにいた個性ごと、モーニングスターが彼を受け入れた瞬間だった。

 

「よかったわね、ケヴィン」

 

 私が声をかけるとケヴィンは、はっと顔をあげた。家族に抱きしめられながら、申し訳なさそうな顔になる。

 

「あ……あの……そういうことで……君との結婚は……ごめん」

「謝らなくていいわよ。元々本気で結婚する気なんてなかったし」

「え」

 

 鳩が豆鉄砲をくらったような顔のケヴィンを見て、祖母が笑う。

 

「リリアーナ嬢は協力者よ。婚約者たちの問題を片付けて、あなたに勇気を出させるために手を貸してくれたの」

「な……なんで?」

 

 ふう、と私は大仰にため息をついた。

 

「あのね、侯爵家が落ちぶれて北部が荒れたら、難民はどっちに向かうと思う?」

「南……じゃないかな。食料があるし」

「そう、南! 北の跡取がふらふらしてたら、南のハルバードが迷惑するの。わかったら、もうちょっとしっかりしてちょうだい」

「うん……がんばる」

「期待してるわね」

 

 一同に淑女の礼をすると、私は会場を後にした。

 静かな廊下に移動し、会場の話し声から十分距離をとったところで、やっと全力で息を吐いた。

 

「ああああああ……なんとかなったああああ……」

 

 ケヴィンがLGBTを告白し始めたときにはどうしようかと思ったけど、なんとか丸く収まったみたい。多分私ひとりじゃ、無理だった。侯爵様の器の大きさとカリスマに感謝するしかない。

 

 しかもこんなピンチにもフランはいないし!!

 あとで何発か殴らないと気が済まない。

 っていうかこんな重大事に来ないってどういうこと? まさか、何かあったんじゃないでしょうね? 心配事まで増やしたくないんだけど?

 

 一旦帰ろう、とジェイドに指示を出そうとしたときだった。

 モーニングスター家のメイドさんが私に封筒を持ってきた。

 

「ミセリコルデ家から、リリアーナ様にお手紙です。至急お渡しするように、と」

「私に? しかもミセリコルデから?」

 

 封筒の差出人は、マリィお姉さまだった。

 なんで私がここにいることを知ってるんだろ?

 

 開けてみると、奇妙なことが書いてあった。

 

『犯人を捕獲。至急来られたし』

 

 何の犯人だよ?!

 

 

 

 

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