【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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不審点

「君が告発したあと、モーニングスター家で改めて裏付け調査が行われた」

 

 そう言いながら、ケヴィンは懐から封書を取り出した。封蝋にはモーニングスターの紋章、差出人欄には侯爵様の美しい署名がある。侯爵様直々の報告書だ。

 

「私の指摘に、何か間違いがあった?」

 

 受け取りながら訪ねると、ケヴィンは首を振った。

 

「いや、君は正しかった。自分ではなかなか調べられなかった罪人を、証拠付きで告発してくれて助かった、っておばあ様も言ってたよ」

「部外者なぶん、動きやすかっただけだけどね」

 

 私は肩をすくめた。

 実は、あの告発劇はいろいろと危ない橋を渡っていたりする。

 人質の救助や証拠集めのためとはいえ、ツヴァイがそれぞれの家に不法侵入しているし、フローラの調査は深いところまで調べすぎてて、ほとんど内政干渉である。

 私の派手なパフォーマンスと侯爵様のカリスマで全員騙されてくれたけど、冷静にツッコまれていたらそこで終わりだった。フランのシナリオを信用してないわけじゃないけど、丸く収まるまでずっと緊張しっぱなしだったのだ。

 

「……でも、腑に落ちない点がいくつか残ってる」

 

 ケヴィンは封書に目を落としながら、眉をひそめる。

 

「まず、エヴァが持たされていた毒。詳しく調べたら、ものすごく毒性が強いことがわかった」

「……らしいわね」

 

 ジェイドとディッツの調査で、その毒性を知っていた私も顔をしかめる。

 

「それから、ライラの持たされていた呪物。彼女の家に仕掛けられていたものも含めて調べたら、かなり精度が高かった。どっちも、ちょっと闇市場に足を突っ込んだ程度じゃ、手に入らないものらしい」

「入手経路はわかったの?」

 

 ケヴィンは首を振る。

 

「ずいぶん尋問したけど、はっきりしないそうだよ。脅迫したことは細かく覚えてるのに、凶器の入手方法になると急に証言があやふやになる。まるで、そこだけ夢でも見てたみたいに」

「夢……催眠術や話術の類じゃなさそうね」

 

 呪いや魔法の存在するこの世界では、もちろん人の心に作用する魔法もある。でも、その対抗手段として生き物は無意識に魔力という殻を纏っている。干渉するには、高度な技術と膨大な魔力が必要になる。

 

「偽フローラについても不審な点が多い。彼女たちを拘束したあと、彼らの屋敷に兵士を向かわせたんだけど、そこは既に火が放たれたあとだった。勤めていた使用人ごと、全部燃えてしまって一切の証拠が消えてしまった」

「証拠隠滅のためとはいえ、すさまじいわね。偽フローラたちから、証言はとれたの?」

「それもダメだった。一週間くらいは普通に黙秘してたんだけどね。……ある日突然生きるのをやめてしまった」

 

 不思議な言い回しに、私は首をかしげた。

 

「生きるのをやめる、ってどういうこと?」

「ほぼそのままの意味だよ。音にも光にも反応しなくなって、ただその場にうずくまるだけになっちゃった。食事もとってくれないから、結局そのまま……」

 

 台詞の最後は、ケヴィンの口の中で消えてしまった。でも言いたいことはわかる。

 何にも反応せず食事もとらない人間が『生きる』のは無理だ。

 

「彼女たちの変装術はとても高度だった。そのへんの犯罪者ギルド程度には真似できない」

 

 ケヴィンはゆっくりと一つずつ指を立てていく。

 

「毒、呪い、偽物……どれもこれも、ただ俺の婚約者の座を奪い合っただけにしては、道具が強すぎる。おばあ様は、この事件の裏にもうひとつ大きな悪意が隠れている、と言ってた。そして、リリィがその正体に気づいているだろう、とも」

 

 ケヴィンは私をまっすぐ見つめた。

 

「事件を解決してくれた君に、これ以上求めるなんて図々しいとはわかってる。でも俺は3人の元婚約者として、将来のモーニングスター侯爵として、裏を知る必要がある」

 

 居住まいを正すと、すっと頭を下げる。その様子はいつか私にお礼を告げてくれた侯爵様の姿によく似ていた。

 

「君の知っていることを教えてほしい」

 

 

 

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