【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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悪役令嬢の推測

「ケヴィンに頭を下げられたら、嫌とは言えないわね」

「じゃあ……」

 

 ぱっと顔をあげたケヴィンに私はにっこり笑いかけた。

 

「ただし、これはひとつ貸しよ。あとで私のお願いを聞いてちょうだい」

「もちろんいいよ、俺にできることなら何でも」

 

 ケヴィンも気安く笑う。ダリオあたりだと『お前、一体何を要求する気だ!』とか言いそうなところだけど、彼は自然体だ。女の子のお願いに慣れてるんだろうなあ。

 

「これから話すことは私の推測よ。証拠は何もないし、下手に公言すれば足元をすくわれるわ。モーニングスター侯爵様に報告してもいいけど、話すタイミングには気を付けて」

「わかった」

 

 私自身、もう一度周囲に目をくばる。この場に自分たちしかいないことを確認してから口を開いた。

 

「モーニングスター家を狙ったのは、アギト国よ」

「アギト国の有力者ってこと?」

「いいえ、国そのものよ」

 

 私が断言すると、ケヴィンの紫の瞳が見開かれた。

 

「まさか……そんなこと」

「でも、国がバックにいたのなら、納得できる点が多くない? 精度の高い毒物に呪物、訓練されすぎた刺客に、異常な速さの証拠隠滅……」

「それは、そうだけど」

「納得できない?」

「背景が大きい割にやったことが小さすぎて……。彼らがやったのって、結局俺の婚約者たちを争わせただけだよね。それも、どれかひとつの勢力に加担したんじゃない。全員を同時に焚きつけてる。目的がわからないよ」

 

 ケヴィンの疑問は当然だ。

 私だって、元から答えを知ってなくちゃ、彼らの目的に気づけなかったと思う。

 

「ねえケヴィン、想像して? もし、あの事件に私が乱入しなかったらどうなってたと思う?」

「君がいなかったら……? うーん、標的がばらばらになって、3人がお互いに殺し合った……かな?」

「あの子たちに、私のような護衛はいないわ。毒でも呪いでも刃物でも、きっと簡単に死んでしまったはず。未来ある良家の女の子が、モーニングスター家の花嫁の座をかけて何人も死んだら、きっととんでもない醜聞になったでしょうね。侯爵様のカリスマでも、収拾がつかないレベルの大混乱よ」

「まさか、モーニングスターの権威を落とすために? たったそれだけの目的で?」

「それだけってこともないでしょ」

 

 3人の婚約者の死が、北部にどれほどの影をもたらしたのか。ゲームを繰り返しプレイしていた私にはよくわかる。あれは取返しのつかない悲劇だったのだ。

 

「モーニングスターは北部の要よ。諸侯がばらばらになったら、その隙をついて攻めることができるわ。精強な騎士の守るクレイモアを避けて、北東から攻め込むことだってできるかもしれない」

 

 ことの重大さを知ったケヴィンは大きなため息をついた。

 

「なんて回りくどい作戦なんだ。でも……そうか、だからこそ国が裏にいるなんて、誰も思わない」

「アギト国を、領地や財産を求める普通の侵略国と思わないほうがいいわ。彼らはこの国を憎んでる。ハーティアを滅ぼすためなら、どの国とも手を結ぶし、どんなに高いコストだって払う。最終的に国が終わるなら、この大陸全土が焼け野原になったって構わないの」

 

 国という組織は、そもそも利益を守るために作られる。

 何かいいことがあるから、人は集まり指導者を受け入れるのだ。

 しかし、アギト国は違う。運命の女神に仇なすためだけに、厄災の神が作り上げた国だ。

 目的のためにどんな手段をとるのか、予想がつかない。

 

「悲劇を回避したからって、アギト国の悪意が消えるわけじゃない。また、何かをしかけてくるでしょうね」

 

 この先は、ゲームに記録されていない。

 シナリオから外れた先にどんな罠が待ち受けているのか、私に知る術はない。

 未来が見通せないのは正直怖い。

 でも、これから国を背負う者のひとりとして、立ち向かわなくては。

 

「彼らに対抗するために、私たちは手を組むべきだと思うの」

「それが君のお願い? 俺にメリットしかないじゃない」

 

 ケヴィンに手を差し出すと、彼はにっこりわらって握り返してくれた。

 

「あら、私に味方するのは大変よ? だって次はどこに乱入するかわからないもの」

「そ……それは確かに」

 

 今さら、私が爆弾娘なことに気が付いたらしい。ケヴィンの顔がちょっとひきつる。

 

「そこまで警戒しなくても大丈夫よ。私の友達として、他のお客に会ってもらうだけだから」

「えっ、ここに誰か来るの?」

 

 ケヴィンが首をかしげたところで、タイミングよくフィーアが来客を知らせた。

 ふふふ、実は今日のお茶会には特別ゲストを招待してるんだよね。

 

「フィーア、お客様をお通しして」

「ちょ、ちょっと待ってよリリィ!」

 

 ケヴィンはびっくりしてるけど大丈夫。

 素敵な友達だからね!

 

 

 

 

 

 

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