【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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悪意

 お披露目パーティーの会場前で馬車を降りた私の前には、信じられない光景が広がっていた。

 

 私の馬車から、ホールの入り口まで、まるで壁を作るようにずらりと並ぶ正装の騎士たち。

 騎士たちの後ろから、何事かとこちらを見ている大勢の貴族たち。

 騎士たちの先頭に立ち、私に手を差し出している少年。

 真新しい正装に身を包んだ彼は、太陽のようにきらきらと光る金髪と、透き通るようなグリーンアイをしていた。

 

 ハーティア唯一の王位継承者、そして王妃様の息子であるオリヴァー王子だ。

 

 彼は茫然としている私の手を引いて、馬車から降ろす。

 そして、優雅な仕草で花束を私に捧げた。

 

「レディ・リリアーナ・ハルバード、私と結婚してください」

 

 はあああああああああ?

 王子様お前なんて言った?!

 結婚してくださいってどういう意味なの!

 

 こんな、騎士も貴族も見てる前で結婚してくれとか、公開プロポーズにしか見えないんだけど? いやそのまんま公開プロポーズなのか!?

 仮にも一国の王子が、すでに婚約者がいる女子にプロポーズとか、何考えてるの?!

 

 私は、パニックのまま叫びだしたくなるのを、なんとか抑える。

 落ち着け、落ち着け!

 オリヴァー王子と私には、ほとんど接点がない。

 彼の唐突な行動には絶対裏があるはず!!

 

 まず第一の問題は、私にはすでにフランっていう婚約者がいるってことだ。婚約済みの女子に王族がプロポーズするなんてあり得ない。

 ……いや。

 そこで私はある事実に気づいた。

 

 私とフランの婚約は、あくまで内輪の話だ。

 今日このパーティーで発表するまでは、非公開であり、王室側にとっても『知らない話』だ。だから、私がフランのエスコートで舞踏会に現れるまでは、誰がプロポーズしたっておかしくない。オリヴァー王子は公式的にはさほど間違ったことをしてないのだ。

 

 このプロポーズに問題がないとして……もしこの場で断ったらどうなる?

 考えを巡らせていたら、ふと視線を感じた。思わず視線の方向、ホールの二階バルコニーを見上げると、そこには側近たちに囲まれてこっちを見下ろす王妃様の姿があった。

 目があった瞬間、王妃様はにんまりと笑う。

 

『断ってごらんなさい』

 

 言外に告げられて、ぞっとした。

 

 侯爵家とはいえ、私はあくまで臣下の娘だ。王家の正式な縁談を断るのは大変な失礼にあたる。しかも、こんな衆人環視の場で。

 嫌だと言った瞬間、王妃様は声高に糾弾してくるだろう。

 

 しかし不敬だと批判されたからって、私たちはきっとただでは終わらない。父様は第一師団長だし、フランの実家だって宰相家だ。モーニングスター家やクレイモア家、カトラス家だって味方になってくれるかもしれない。

 そうなれば、たとえ相手が王家であったとしても、対抗できる。

 ……対立、できてしまうのだ。

 

 そんなことになったら、王室の権威は失墜する。場合によっては国が王室と諸侯の間で割れてしまうだろう。

 国がそんな大混乱になってしまったら……王妃の思うつぼだ。

 彼女はこの国を滅ぼしたくてうずうずしているんだから。

 国が荒れれば、混乱に乗じてキラウェアの兵が王都になだれ込んでくるだろう。

 

 私は王妃様を睨んだ。

 

 そもそも、最初からおかしかったんだ。

 王妃様の罠が、パーティーに呼びつけてそれでおしまいだなんて。

 きっと彼女は、私がフランと一緒に現れた時点で、私の大事な人がフランだと見抜いていた。だから、私が最も幸せになる瞬間に、彼を取り上げる計画を立てた。

 

 自分でも言ってたじゃないか。

 王妃様は、ハーティア国民が大嫌いだ。

 とりわけ、将来有望な少女、恋する乙女が幸せになることを憎んでいるって。

 

 フランを頼りにしている私を、彼に守られている私を、憎まないわけがない。

 

 王子との婚約か、内乱か。

 究極の選択をつきつけられて、私は拳を握り締める。

 

 こんな王子ぶんなぐってやりたい。

 今すぐ、王妃をぶっとばしたい。

 

 でも。

 

 王子と私を囲む騎士たちの向こうに、黒髪の青年の姿が見えた。

 彼は真っ青な顔でこちらを見ている。

 

 今この時点で国を壊すわけにはいかない。

 そんなことになったら、もっとよくないことが起きる。

 

 世界を救うためにこの世界に産まれた私が、とれる選択肢はひとつしかない。

 

「ありがとうございます、オリヴァー王子様」

 

 私は差し出された花束を受け取った。

 

「ぜひ私をあなたの花嫁にしてください」

 

 無理矢理唇の端をつりあげる。

 その瞬間、目の端からつうっと涙がこぼれ落ちた。

 

「どうした?」

 

 オリヴァーが不思議そうに私を見る。私は震える唇で、なんとか言葉を絞り出した。

 

「うれし涙ですわ」

「……そうか」

 

 こうして、私は最悪の形で社交界デビューを果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 




 はい! というわけで「リリィちゃんついに婚約編」完結です! 嘘は言ってない! 嘘は言ってないですよ! 相手が相手なだけで!
 世界の問題も、厄災のことも、王妃様のことも、何も解決してないのに、普通にフランとラブラブになって終われるわけないじゃないですかーやだー!

 ひたすらテンプレの逆をいくお話ではありますが、王子様の婚約かーらーのー!婚約破棄展開があってこその悪役令嬢モノ、ってことで!
(普通の悪役令嬢ものが冒頭1ページで直面する問題まで35万字かけたともいう……)

 とはいえ幸せにはするつもりなので、めっちゃ広げた風呂敷は畳む方向でご期待ください!


 プロットのストックがつきたので、一旦毎日更新は休止します。
 1~2か月プロット制作期間をもうけて、更新ストックを作ったら戻ってきますのでしばらくお待ちください。
 更新再開を毎回チェックするのが面倒だよって方は作品フォローよろしくお願いします!

 ではでは~しばらくお待ちくださいねぇ~!
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