【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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疲れた時にはイベントだよね

「ただいまぁ~」

 

 セシリアと私はへとへとになりながら特別室のドアを開けた。ディッツの研究室で話しこんでいたせいで、すっかり日が落ちてしまっている。フィーアを連れててよかった。学園の敷地内とはいえ、暗い石造りの廊下をか弱い女の子だけで歩くのは怖い。

 

「おかえり、ずいぶん遅かったな」

 

 相変わらず、寮ではラフな格好のクリスがひょこっと顔を出す。サロンが騒がしくなったのに気付いたのか、ライラもやってきた。

 

「下から夕食のワゴンが届いてるけど、どうする? 毒見が必要って言ってたから、食べずに待ってたけど」

「失礼しました。すぐに準備いたします」

 

 フィーアがさっとワゴンに向かっていった。私はふたりに頭をさげる。

 

「ゴメン! 私のせいで……」

「気にしなくていい。毒見が必要なのは私も同じだ。それに……騎士科で何かあったんだろ?」

 

 クリスが肩をすくめる。

 

「ちょっと、騎士科でってまさか……」

 

 不穏な空気を察したライラの眉が吊り上がる。

 

「セシリア、男子にいじめられた? 気が弱そうだからって悪戯されてない?」

「いいいい、いえいえ! 私は大丈夫です! リリィ様がかばってくださってるので!」

「問題は別よ」

 

 私はクリスとライラに騎士科の空気の悪さを説明した。話を聞いたふたりの口から、重いため息がもれる。

 

「騎士科の様子はヴァンからも聞いていたが……そこまでとは」

「どーにもならないから、ヴァンとケヴィンに丸投げしてきちゃったわ」

「ヴァンが任せろ、と言ったのなら大丈夫だろ」

「……だといいけど」

 

 クリスの言うことはもっともだけど、やっぱり心配になってしまう。

 話していると、フィーアがフードワゴンを持ってやってきた。毒見は全て終わっているのか、彼女はいつものてきぱきとした手つきで配膳を始めようとする。

 

「あ、ちょっと待って」

「なんでしょう?」

 

 それを見たクリスが慌てて止めた。

 

「今日は無礼講パーティーにしよう!」

「……はい?」

 

 フィーアはお皿を手に持ったまま、きょとんとする。

 

「疲れてるときにテーブルマナーを気にしながらごはん食べたら、余計疲れるだろ? たまには絨毯に転がって、思いっきり行儀悪くごはん食べない?」

「ちょ……それ……」

 

 ライラが顔をひきつらせる。床でごはんを食べるなんて、淑女にあるまじき行動である。

 でも……

 

「いいわね、おもしろそう!」

「えええええ? リリィ様!?」

「いいじゃない、どうせこのフロアには私たちしかいないんだから。普段いろいろ見られてる分、羽を伸ばしたってバチは当たらないわ」

「ゆ……床ですよ?」

「やると結構楽しいぞ」

 

 クリスはすでに絨毯の上で胡坐をかいている。

 オヌシ、さてはこの行儀悪い食事会に慣れてるな?

 

「クレイモアのおじい様と、時々こうやって食事をするんだ。体面を気にしてても、肩が凝るばっかりだからさ」

「悪いおじいちゃんだなー」

「それは否定できない」

 

 クリスは楽し気に笑う。

 しょうがないお姫様もいたものである。

 

「セシリア、部屋着に着替えてきましょ」

「え……」

「確かに、くさくさしてたってしょうがないもの。おもしろそうなイベントには全力参加したほうが人生楽しいわ」

 

 彼女が突然無礼講だなんだと言い出した理由は明白だ。

 こんな風に思いやってくれる友達の気持ちを、無碍にするわけにはいかない。

 それに、日本人だった小夜子の記憶があるぶん、床に座って食べるごはんにそこまで抵抗はないんだよねー。

 

「あわわ……」

 

 慌てるセシリアの背を押して、私は寝室に向かう。

 女同士のディナーイベントとか、絶対楽しいやつだよね!

 

 

 

 

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