【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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恋なんてできない

「恋できないって、どういうこと? もうすでに好きな人がいるとか?」

「……違います。恋をする……誰かに心を傾けるのが、怖いんです」

 

 そう語るセシリアの指先は震えていた。

 

「だって、私聖女なんですよ? あなたの恋次第で世界の運命が変わります、って言われておいそれと誰かに恋なんかできますか?」

「乙女ゲームではよく言われる台詞だけどね」

 

 自分の選択次第で世界が変わる。

 そのキャッチコピーで無邪気に喜べるのは、所詮ゲーム機の中の出来事だからだ。自分の選択で本当に世界そのものが変わってしまうと聞かされて、選択できるかと言われたら私もうなずく自信はない。

 ヒロインセシリアにとっては、乙女ゲームが現実なのだ。

 

「……私には無理です」

 

 セシリアはまた首を振る。

 

「王家の問題も、世界の問題も、何もかも重すぎます。いきなり私は世界を救う聖女だって言われて、小夜子さんの記憶を渡されて、はい頑張ってって言われても受け止められません」

「セシリア……」

「私に世界を救う勇気なんて、ないんです」

 

 とうとう涙をこぼし始めたセシリアの背中をなでる。泣いてる女の子をなだめるのは今日二回目だ。

 私は心の中で女神に悪態をつく。

 

 あのー運命の女神様?

 あなたがポンコツなのは前々から知ってましたけどね?

 救世主に知識を与えようとして、余計混乱させないでもらえますか!

 しかも自分の運命を知ったせいで、怯えちゃってるんですけど?

 わざわざ救世主のやる気をそいでどーすんの!!

 

 世界を救う才能がないにも程があるだろ!

 

「わかった、無理に恋しろとは言わない」

「え」

 

 私が宣言すると、セシリアがぱっと顔をあげた。目をまんまるにして私を見つめる。

 

「だって、私はフランと恋愛結婚したいんだもん。それで、セシリアに王子との恋愛を押し付けるのは筋違いってものでしょ」

 

 自分は自由恋愛するのに他人に政略結婚もどきを強要するなんて、ダブルスタンダードもいいところだ。

 

「王家の問題についても、こっちでどうにかできないかやってみる」

「い……いいんですか」

「よく考えたら、世界のことをあなたひとりに背負わせるのは変だわ。この世界の問題は、この世界の人間全員の問題だもの」

 

 ハンカチでセシリアの涙をふいてあげると、セシリアは眉を下げた。

 どう反応していいかわからないらしい。

 

「本当にいいんですか……恋だけじゃなくて、王家のことまで……。私は……鍵を握ってるのに」

「確かにあなたは、王家の継承問題を解決する鍵を持ってる。それは、全てをひっくり返すことのできる最強のジョーカーよ。でも、そのカードを切った瞬間、あなたの人生は決まってしまう」

 

 セシリアは唇を噛んだ。私はゲームプレイヤーとして、セシリアの持っているカードの中身を知っている。そして、カードがどれくらい重いのかも。

 

「カードを切るかどうか、決めるのは私じゃない。セシリアよ」

「ありがとうございます……」

 

 セシリアは深々と頭を下げた。

 

 

 

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