【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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新要素は突然に

「ヴァンは型の練習と一緒に体力づくりもしたほうがよさそうだな」

「うへえ……」

 

 クリスの指摘にヴァンは顔を歪ませた。彼が騎士訓練を始めたのは二年前。いくら体格が良くなったとはいえ、生粋のクレイモア騎士ほどの体力はないらしい。そこへケヴィンが追い討ちをかける。

 

「本番だと白銀の鎧も着せられるはずだよ」

「あー……それもあったか……もう白い服でいいじゃん」

「鎧も伝説の重要なエピソードだから、省略できないんじゃないかなあ」

「重要ってアレか? 勇士が神殿の塔よりデカい白銀の鎧で戦ったってやつ」

 

 白銀の鎧、と聞いてクリスが目を輝かせた。

 

「巨大な鎧に乗り込んで化け物と戦うなんて、おもしろそうだ!」

「ロマンだよね。舞台じゃさすがにそんなもの用意できないから、出演者が鎧を着るだけだけど」

「それこそ絵空事じゃねーか。全部カットでいいよもう……」

 

 銀髪三人組の会話を、私たちは生ぬるく見守る。セシリアはコソコソと私に耳打ちした。

 

「リリィ様、白銀の鎧ってアレですよね……」

「うん、アレだよ」

 

 ゲームに出て来た巨大ロボのことだよ。

 

「……ですよね」

 

 巨大ロボ、といってもビーム兵器で宇宙戦闘するようなスケール感のロボではない。七日間で世界を焼け野原にしそうなレベルの超兵器である。建国王と勇士七名は、それぞれ巨大な神の鎧に乗り込み、厄災が差し向けた悪しきドラゴンやモンスターと戦ったのだ。勇士七家が武器の名を冠しているのは、ただの厨二センスではない。鎧の持っていた兵装が、そのまま家名になっただけだ。

 

「アレが本当だとしたら、王城の下には……」

「鎧を格納した、本物の『乙女の心臓』が眠ってるんじゃない?」

「……っ!」

 

 レースを編んでいたセシリアの手が止まる。

 

『乙女の心臓』は、聖女が操ったとされる超兵器の名前だ。伝説によると、見た目は巨大な城のようだったらしい。ソレは、聖女が祈りをささげると空を飛び、各地で暴れまわる巨大な悪魔のもとへ神の鎧を運んだそうだ。

 なんだその空中母艦。

 ゲームでこのエピソードを見た瞬間、私は思わずコントローラーをブン投げそうになった。

 ただでさえファンタジー要素盛り盛りで、国同士の思惑とか、王宮サスペンスとか、陰謀ミステリーとかでお腹いっぱいだっていうのに、ここへきてSF展開である。

 超兵器バトルとか、一介の令嬢にどうしろと。

 魔法パワーがSF的な描写になってるのかなーと思ってたけど、どうもそうじゃないっぽいし。

 二年前にカトラスで手に入れた、『電子基板っぽい古代の遺物』とか、どう見ても本物の電子機器なんだよなあ……。

 女神の……いや創造神の趣味がよくわからない。

 

「アレって本当に動かせるんでしょうか」

「さあ? アレの操縦席に座ること自体が、超無理ゲーだったからねえ」

 

 乙女の心臓についての知識が『らしい』とか『そうだ』とかになる理由はそこだ。あのゲームは、そもそも人同士の争いがヤバすぎて、どのルートにいっても勇士の大半が死ぬ。しかも敵の手を潜り抜けて、運よく操縦席にたどり着けたとしても、そこでゲームクリアになるわけじゃない。裏切りの騎士マクガイアが先回りしてて、中に入ったとたん首を刎ねられたりするからだ。

 

「でも今の情勢なら、少なくとも起動するくらいはできるんじゃない?」

「現在の第一師団長はハルバード侯ですし、勇士の末裔もダガー家以外はそろっていますからね……」

 

 ふう、とセシリアがため息をつく。

 乙女の心臓を起動できるのは聖女、つまりセシリアだけだ。

 厄災に立ち向かうには、やはり彼女の力が必要になる。

 

「リリィ様、私は……」

「急がなくていい、って言ったでしょ。そこは本当に厄災のモンスターが現れた時に考えましょ。他にも気を付けなくちゃいけないことは山ほどあるんだし」

「な、なにかありましたっけ?」

 

 おやお気づきでない。

 特別室組ってことでいつも私の側にいるから、あんまり危機感がないのかな。

 大事なぶん、世界の運命どうこうといった問題に気を取られがちだしね。

 

「今のあなたは、子爵家の跡取娘でしょ。あなたと結婚すれば子爵になれる上、カトラス候と繋がりができるってことで、家督を継げない次男以下の男子たちが本気で狙ってるわよ」

「ひっ……!」

 

 セシリアは小さく悲鳴をあげた。

 個人的には、もうこの際だからアプローチしてきた男子の誰かと恋してくれてもいいんだけどね。

 

「ほら、セシリアのすぐ後ろに……」

「きゃああああっ」

 

 背後に人の気配を感じたセシリアは、声をあげて逃げていってしまった。そこまで怖がらなくていいじゃないのさー。

 

「な、なんだったんだ……」

 

 私に声をかけようとしていた男子生徒が、茫然と彼女の背中を見送る。

 

「あの子はちょっと恥ずかしがりやなんです。それで、何の御用ですかオリヴァー様」

 

 男子生徒は、ヘルムートを従えた王子様だった。

 

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