【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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職権濫用

 私はドリーがアレンジした台本を握り締めた。

 何が、男子生徒への救済措置だ。ただの私情じゃないか。

 お互いストレスがたまるとわかっていて、何故ドリーが学年演劇の指導を引き受けたかわかった。教師の立場で授業をコントロールし、王子との接触を抑えるつもりなのだ。

 さすが愛の重い男、執着心が大人げない。

 お前学園に潜入して何か仕事してたんじゃなかったのか。今のところ、攻略対象の排除と王子の邪魔しかしてないんだが、それでいいのか。

 ……こんなの見て、嬉しくなってしまう自分も大概だが。

 

「リリアーナ嬢、さすがにこんな台本では不満だろう。俺のほうから、ドリー先生に抗議することもできるが」

 

 気が付くと、王子が心配そうに私を見ていた。

 そういえば、端から見れば教師の勝手な采配で出番が削られた状態なんだった。

 野心あるご令嬢ならここは文句のひとつもつけたくなる状況だろう。ゲームの悪役令嬢リリアーナなら『わたくしが! ヒロインでしてよ!』と猛抗議しているところである。でも今の私はそうじゃない。

 

「構いません、この台本でいきましょう」

 

 私がさらりと受け入れると、王子とヘルムート、そしてアイリスたち意地悪女子もきょとんとなる。

 

「だって私、すでに地位も名誉も実績も十分ありますもの。ここは騎士候補生に花を持たせてあげなくては」

 

 なにしろ私は名門お金持ちのハルバード侯爵令嬢だ。その上『11歳で領主代理をこなす神童』『東の賢者の愛弟子』『雷魔法の使い方を考案した異才』と実績に事欠かない。

 今更学生演劇で頑張らなくても、十分やっていけるのだ。

 にっこり笑ってやると、アイリスとゾフィーの顔が歪んで赤くなった。

 

「そうか……君が、そう言うなら」

 

 王子も引き下がる。ヴァンが読んでいた台本から、顔をあげた。

 

「なあ、台本の共有はどういうルールにする? 三冊だけじゃ、回し読みにも限度があるだろ」

「あ、ああ……だから、各班ごとにそれぞれ写本を作って共有しろと言われて……」

「オリヴァー様、でしたら私たちが写本を作って差し上げますわ!」

「出演者は皆さまお忙しいですものね。そのような雑務は私たちにお任せくださいまし」

 

 アイリスたちが食い気味に提案してきた。雑務を引き受けることで王子や他の出演者からの好感を得たいんだろう。物欲主義な王妃派らしい点数の稼ぎ方だ。

 

「それは助かるけど、いいのか?」

「ええもちろん! 出演者全員分、揃えてみせますわ」

 

 ゾフィーがこっちに目を向ける。

 

「もちろんリリィ様のぶんも。きっと、聖女の役作りでお忙しいですものね」

 

 なんだこれ。

 敵に塩を贈ったつもりか。

 

「結構よ」

 

 私はため息まじりに、提案を断った。

 

「王立学園の生徒は、自分のことは自分でやるのが原則じゃない。台本一冊分くらい、自分で書き写すわよ。元々写本づくりは得意だし」

 

 だいたい、君たちに任せたら絶対何か悪戯を仕掛けてくるだろう! 変な心配するより、自力で片付けたほうが早い。

 

「君にそんな特技があったなんて意外だな」

 

 王子が不思議そうに私を見る。高位貴族は、だいたい教科書も何もかも召使が用意するのが基本だもんねー。でも庶民出身のうちの師匠はややスパルタだ。

 

「魔法の家庭教師が、『教本は自分で写して作れ』という方針だったので。結局、魔法の教本どころか、薬品図鑑や薬草図鑑まで作らされましたけど」

「ふうん……じゃあ俺も自分で写本を作ろうかな。リリアーナ嬢、コツを教えてもらってもいい?」

 

 興味をそそられたらしい、王子が私の手元を見る。

 え。写本は自分のためにやるんですが。

 なんか王子イベントのきっかけみたいにされても、困るんですが。

 私が返答に困っていると、パン! とヴァンが手を叩いた。

 

「いいな、写本勉強会! ひとりで作業してても効率悪いし、全員でちゃちゃっと片付けようぜ!」

「あ……いや、俺は……」

「いいアイデアね、ヴァン! 早速出演者を集めましょう。女子の取りまとめは任せて!」

「男子のまとめは俺とオリヴァーがやる。よろしくな!」

 

 こうして、私たちは穏便に写本づくりに取り掛かるのだった……。

 

 

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