【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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王たる資質(オリヴァー視点)

「説教だと? 王子はあの悪女に騙されていただけだろう!」

 

 説教、と言い出したヴァンに向かってヘルムートが食ってかかった。彼は冷ややかに見返す。

 

「それが問題だっつーの。俺らは何度も言ったよな? アイリスもゾフィーも根性悪だ。あいつらを操ってる王妃も信用するなって」

「母親を疑えって言うのか!」

「そうだ」

 

 はっきりと断言した。

 

「俺やケヴィンや、騎士科の連中の話を聞かないで、あいつらを信用した結果何が起きた?」

「そ……それは……」

「わかってんのか? さっきまで、この国は内乱一歩手前だったんだぞ」

「内乱? 令嬢の誘拐が何故そんなものに……」

「ハルバード侯爵令嬢誘拐未遂、だ」

 

 ヴァンは事件内容を訂正する。

 

「ハルバード候は娘を溺愛している。暴行されたらなりふり構わず犯人を殺すくらいにはな。第一師団長を務める南の名門侯爵がそんなことしてみろ、国が割れてバラバラになるぞ!」

「そ……そんなこと……知らない……!」

「それがお前のダメなところなんだよ!」

 

 バン、とヴァンは壁を叩いた。その勢いに思わず身をすくませてしまう。

 

「見たいものだけ見て、都合の悪いことは一切聞かない! 証拠を突きつけられたら、『知らなかった』だあ? そんな言い訳通用するかよ!」

「で……でも」

「でもじゃねえ! 王様って地位には国中の利権が集まるんだ。アイリスみてえに、利益のためにはどんな嘘でもつくって奴が群がってくる。王は全ての嘘を見抜いて、国を導く責任があるんだ」

「それだと……君の言うことすら、疑うことになるんじゃ……」

「ああそうだ。自分以外全てを疑う、それでやっとスタートラインに立てるんだ」

 

 ずっと俺を睨んでいるヴァンは、本気でそう思っているようだった。

 

「しかし、王の息子は俺しかいないから……」

「はあ? お前まだ玉座に座れる気でいんの?」

 

 ヴァンは俺の王位継承すら否定した。彼の言うことが信じられなくて、ケヴィンを見る。

 いつもほほ笑んでいたはずの彼は、無表情にうなずいた。

 

「前国王がいくつでクリスを産ませたと思ってんだ。お前の親父はその時よりずっと若いぞ。以前ならともかく、王妃の勢力が弱くなった今なら側室のひとりやふたり、侍らせるのは難しくない。来年の今ごろには弟か妹が増えててもおかしくねえ」

「……っ」

「ああ、俺がクリスに子供を産ませるのもいいな。そしたら俺は王の父親だ」

「く、クリスは臣籍降嫁予定で!」

「降嫁予定、だ。まだ婚約状態だから王位継承権自体は無くなってねーぞ。それにあいつが産む子供は前国王の孫。血の濃さだけで言ったら、お前と一緒だ」

 

 自分が王位を継がない。

 予想外の将来を突きつけられて頭が真っ白になった。自分は産まれた時から王子として、継承者として育てられてきたのに、今更それを失うというのか。

 

「現国王が置物だ、無能だって言われながらも、玉座に座ってられるのは何もしねえからだ。薬にもならねえ代わりに毒にもならねえ。最低限、国政の邪魔にはならない。だがな……」

 

 ヴァンが俺の胸倉を掴んだ。

 それは臣下が王に対してやることではない。

 

「母親や女の甘言に踊らされて、余計な手出しをする王は明らかに邪魔だ。排除するしかない」

「お前、王子になんてことを!」

 

 ヘルムートが俺からヴァンを引き離そうと駆け寄る。しかし、途中でケヴィンに足をかけられ、床に転がされた。

 

「君も同罪だよ、ヘルムート」

「何が……!」

「主が間違った道を選んだ時、泥をかぶってでも正すのが臣下の仕事だ。オリヴァーと一緒になって騙されて、流されているだけの君に存在価値はない」

「俺は、王子に逆らうことは……!」

「そう言われてても、諫めなくちゃいけないんだよ。側近の意味を理解してる? 一連托生なんだよ? 彼がもし地位を追われたら、君の地位はどうなるの」

「あ……」

 

 起き上がろうとしていたヘルムートは、そのまま力なく床に転がった。

 

「騎士科はお前を矯正するために一年かけた。それでも直らねえってんなら、別の『方法』を考えるしかない。……お前が何かできる時間はあまり残ってないぞ」

「……」

 

 彼らに何を言うべきか。言葉を探していると、部屋のドアがノックされた。

 

「ヴァン様、ケヴィン様、舞台の用意が整いました!」

「わかった。すぐ行く」

 

 ヴァンは胸倉を掴んでいた手を離した。

 

「舞台に上がるぞ、建国王様?」

「は……? この状況で劇を……?」

 

 突きつけられた現実に頭をかき回されて、まともに喋れる気がしない。舞台に上がるなんて無理だ。

 しかし、ヴァンとケヴィンは強引に俺の腕を引いて戸口に向かう。

 

「お前は戦場で敵と戦ってる時にも『今そんな気分じゃないから無理ですー』って言うつもりか。責任から逃げんな」

「大丈夫、セリフが飛んでも、演舞を間違えても、フォローするよ」

「俺たちは『まだ』臣下だからな」

 

 彼らに引きずられて、俺は舞台へと向かった。

 

 

 

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