【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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独占欲

 私はフランの言葉に絶句した。

 つまり何?

 私を舞台に上げないために、侯爵令嬢誘拐事件を起こさせたの?

 確かにね? 誘拐されかけてショックを受けたご令嬢に、ヒロイン役を演じろと命じる大人はいないけどね?

 だからって、ここまで大がかりな仕掛けにする必要ある?

 

「フランって……」

「何か問題が?」

「ないよ! もう!」

 

 フランの行動が常識外れすぎて、怒ってた気持ちがどこかに吹っ飛んでいってしまった。

 君は私に執着しすぎじゃないのか。

 こんな激重感情見せられて、引くどころか嬉しくなってる自分も自分だけどさ。

 

「お前は、唇も、肌も……髪の毛一筋に至るまで、全部俺のものだ」

 

 静かに告げられて、とくりと心臓が鳴る。

 そして気づいた。

 目の前の恋人が久々に男の姿をしていることに。

 多分、アイリスの手下を捕らえるには、腕力のない女の姿は都合が悪かったんだろう。

 あの格好も嫌いじゃないんだけど、女の子の私が恋をしてるのは、やっぱり男性のフランだ。

 大きな手や、低い声にドキドキしてしまう。

 つーか、相変わらずかっこいいな、こんちくしょう。

 こんな美青年と狭い小屋にふたりきりとか……。

 ん? ふたりきり?

 私は、はっと顔をあげた。

 そういえばツヴァイたちは全員、自分の仕事をするために行ってしまった。ここは学園の中でも外れにあるから、生徒も教師もやってこない。

 完全なふたりきりだ。

 小屋にフランと自分しかいないのだと意識したら、途端に心臓が早鐘を打ち始めた。

 やばい。男のフランが久しぶりすぎて、どんな顔したらいいかわからない。

 うろうろと視線をさまよわせていたら、ばちりとフランと目があった。奴はにやりと腹黒笑顔とはまた別の笑みを浮かべる。

 お前、私が何故緊張してるか、わかってるな?

 しかも知ってて楽しんでるだろ!

 私は慌てて小屋のドアに手を伸ばした。

 

「何をするつもりだ」

 

 低い声が私を止める。

 

「じ……事件は収束したんでしょ? だったら戻らないと。みんな心配してるはずだし」

「その必要はない」

 

 後ろから伸びてきたフランの手が、ドアノブを握る私の手に重なる。

 手のひらの熱い体温が伝わって、また心臓がどくんと跳ねた。

 

「ヴァンたちには事前に計画を伝えてある。誰もお前の心配はしていないさ。……それより」

 

 フランは私の手を握りこんだまま、後ろに立った。

 

「せっかく仕掛けを施したのに……あまり早く戻ったら、代役を立てた意味がなくなる」

 

 ふっ、と吐息が耳にかかる。

 

「俺がいいと言うまで、外に出るな」

 

 耳元でささやかれて、私は身動きがとれなくなった。そのまま背後からぎゅうっと抱きしめられる。

 

「……っ」

 

 吐息が、胸板が、硬い腕が、大きな手が私に触れる。

 突然、フランの体を全身で感じさせられた私は、パニックに陥った。

 彼と恋人同士になったのは一年以上前だ。王妃に縁談を壊されるまでは、婚約者として普通に付き合っていた時期もある。でもその頃の自分の体はまだ子供で、ろくにキスすらしていなかった。あれは恋人と言ってても、おままごとでしかなかったんだと思う。

 でも、今のコレは違う。

 男の人が、女を求める抱き方だ。

 大人の恋人同士が、こんな触れ方をするなんて聞いてない!

 信じられないことに、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

 なんならもっと強く抱きしめられたいとさえ思ってしまう。

 きっとこの状況はやばい。

 このままフランの腕の中にいるのは危険だ。

 そう思うのに心地よくて、離れなくちゃと思う気持ちと、もっと欲しいという気持ちが両方頭の中で大暴れしている。

 

「こ……こんな、何もない小屋で……ただ、待ってろ……って言われても……」

 

 なんとかひねり出した言い訳を、フランは鼻で笑う。

 彼の手が私の顔に触れる。強引に後ろを向かされた私は、正面からフランの青い瞳を見る羽目になる。そこには今まで見たこともない欲がにじんでいた。

 

「だったら、俺とキスでもしていれば、いいんじゃないか」

「……んんっ」

 

 そして、私たちは長い長いキスをした。

 

 

 

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