【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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にっちもさっちも

「ふう……」

 

 深夜、私はベッドの中でため息をついた。

 社交のために王都に出てきて一か月。全く誰とも社交できていません!

 それどころか!

 屋敷の外に一歩も出ていません!!

 

 どうしてこうなった!!

 

 父様と母様をダイエットさせたせいだけど!!!!

 

「社交めんどい、とか思ってたけど、全くできないのはそれはそれで問題よねー」

 

 ハーティアにおいて、女子の正式な社交界デビューは、王立学園に入学する15歳。

 入学歓迎のダンスパーティーがお披露目となっている。

 それはそれで重要な式典なんだけど、何も全員がそこでいきなりデビューするわけじゃない。大抵は、貴族女子の先輩である母親に連れられて園遊会やお茶会に出席し、子供のころからじわじわ顔をつないでいくのだ。いきなり王立学園でデビューするのは、よっぽど地方から出てこれない貧乏貴族か、庶民くらいのものである。(ちなみに、ゲームのヒロインである聖女は貧乏貴族なので王立学園入学まで表舞台には出てこない)

 

 つまり、王都で積極的に社交をすべき侯爵家の令嬢であれば、11歳ともなれば、お茶会に出てお友達のひとりやふたり、作っておかないといけないのである。

 

 侯爵家の令嬢、という立場を抜きにしても、今の状況はまずい。

 だって、この世界はあと4年もしたら大厄災に襲われるんだから。

 悲劇を止めて、聖女が世界を救える状況に導かなくちゃ生き残れない。家の中に引きこもっていても、何も状況は良くならないのだ。

 

 父様と母様が頑張っているのはわかる。

 毎日どこかに出かけていっては、貴族仲間に協力を求めたり、兄の学園復帰を働きかけたり、私のお茶会デビューの根回しをしたり、してくれている。

 でも、世界を救う才能のない運命の女神と同じくらい、両親に社交の才能はないみたいで、あまり良い成果を上げられていない。

 ふたりとも、完全に見た目と身体能力にパラメータを全振りして生まれてきちゃってるんだよな……。

 領地経営の仕事のほとんどをクライヴに任せているのは、興味がないからじゃない。下手に手を出すと、領地が無茶苦茶になるからなんだ、と知ったのはつい最近のことだ。

 

 どうにかしなくちゃいけない。

 でも、どうしたらいいかわからない。

 

 ……ぐるぐる考えてたら、全然眠くなってこないな。

 

「……トイレ行こう」

 

 もそもそと起き上がると、私はベッドを抜け出した。

 廊下に出ると、寝巻にスリッパ姿でトイレに向かう。

 

 余談だが、この世界は女の子好みのファンタジーご都合世界だ。

 治癒術が広まっているおかげか、魔法があるおかげか、よくわからないけど、とにかく「清潔にしたほうが病気にならない」という考えが広まっているおかげで、前世のヨーロッパと違って、街は清潔で下水道完備。その先の仕組みは不明だけど、魔法の力で水を浄化し川に流しているらしい。

 つまり、うちには水洗トイレがあるのだ!

 しかもちゃんと手が洗える洗面所つき!

 感染症対策には、手洗いうがいだよね!!

 

 そんなことを考えながら、用を足して部屋に戻ろうとすると、私の部屋の前にメイドがひとり立っていた。

 彼女は私の部屋をノックしようとして、廊下に私が立っていることに気が付いた。

 

「あ、あら? お嬢様どうしてそんなところに?」

「ちょっと眠れなくて、トイレに行ってたの」

「そうだったんですか。眠れないのなら、ホットミルクはいかがですか? 下のお部屋で飲みましょう」

 

 メイドは人の好さそうな笑顔を私に向ける。

 私は、一歩下がった。

 

「お断りするわ」

 

 

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