【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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侯爵令嬢の国外評価

 シュゼット姫は嬉しそうに、私のところまでやってきた。私のほうが背が高いせいで、自然と上目遣いで見つめられることになる。

 うわあ、なんだこれ。

 本物のお姫様のキラキラ上目遣い、めちゃくちゃかわいい。

 一瞬、嫉妬心を忘れて見とれちゃったじゃないか。

 

「リリアーナ様のお噂はかねがね伺っておりますわ」

「遠く離れたキラウェアにまで、私の話が伝わっているんですか?」

「ええそれはもう!」

 

 シュゼットはにこっと笑う。

 

「11歳の幼いころから領主代理として、お家を守ってらっしゃったんでしょう? それに魔力式給湯システムの発案者はリリアーナ様だとか。かの技術は、私たちキラウェアにも伝わり、おかげで多くの民の暮らしが豊かになりましたの」

 

 兄様……どれだけ事業拡大してんの。キラウェアにまで技術提供してるとか、聞いてないんだけど?

 

「ハーティアの貴き勇士の血に連なる侯爵令嬢でありながら、優秀な領主であり技術者でもあるなんて、まさに淑女の鑑ですわ。こんなに素晴らしい方が未来の王妃様だなんて、オリヴァー王子様はお幸せですわね」

「んン”ッ……」

 

 私は思わず口から出そうになった変な声を、ギリギリのところで堪えた。

 よくやった私の口と喉の筋肉。褒めてつかわす。

 

「リリアーナ様?」

 

 きょとんとしているシュゼットに私は慌てて笑い返す。

 

「ゆ、友好国の王女様にそんな風に思われているなんて、恐悦至極にございます……ほほほ」

 

 なんだこの拷問みたいな会話。

 相手に一切悪意がないからタチが悪い。

 それに、シュゼットの認識はそんなに間違ってないんだよなー。

 私はハーティアで王家に並ぶほど格式の高い侯爵家のご令嬢だ。領主代理に新魔法開発にと実績には事欠かない。その上、なりゆきとはいえ王妃派と大戦争を繰り広げた挙句に、女子寮の生徒を統率してしまったのだ。そこだけ見れば、これほど王子妃にふさわしい女子はいないだろう。宰相閣下の意向に気づいているはずの宰相派の中にも、私を王子妃にと望む勢力は少なくない。

 どれだけ能力があっても、王子以外の男が好きって時点で、王子妃失格なんですけどね!

 本当に! 人間関係って! 難しいね!

 

「シュゼット様は、リリアーナ嬢と同じ女子寮特別室に入居することになります」

 

 アテンド役らしく、フランが説明を付け加えた。

 彼女はキラウェアのお姫様だ。うちの女子寮の基準で考えたら、王族扱いで特別室に入るのが妥当だろう。

 つまり、私は特別室の住人として彼女を受け入れて、面倒をみなくちゃいけないわけだ。

 沈む私とは対照的にシュゼットはぱあっと顔を輝かせる。

 

「リリアーナ様と同じフロアなんですね!」

「え、ええ……」

「あああああ、あのっ、私とっ、クリス様も同じフロアなんです! よろしくお願いしますっ!」

 

 セシリアがあわあわしながら間に入ってきた。クリスも一緒になってシュゼットに手をさしのべる。

 

「よろしく、シュゼット」

「こんなに素敵な方たちとご一緒できるなんて。よろしくお願いします!」

 

 ロイヤルスマイルがまぶしい。

 私はこれから、毎日この笑顔を見ることになるのか。

 複雑すぎて感情が処理できないんですがそれは。

 

「お互いの紹介はこれくらいで。みなさん一旦中に入ってご休憩ください」

 

 王子、ナイス助け船。

 自己紹介が終わったら、次は休憩だよねー!

 一度離れてクールダウンしようか! 主に私が!

 しかし、シュゼットは困ったように視線をさまよわせた。

 

「あの、実はひとりだけ……紹介できていないのです」

 

 ハーティア側のメンバーは、全員きょとんとなる。馬車から出て来た生徒は全員紹介してもらった気がするけど?

 

「王都観光がしたいと、別行動をとった者がおりまして……」

「ではその方の紹介はまた機会を改めて」

 

 王子が段取りを調整しようとした時だった。

 

「すみませーん、遅れました!」

 

 カッコ、カッコ、と軽やかに蹄の音を響かせながら、青年がひとり学園に入ってきた。毛並みの良い馬に、キラウェア風の騎士服。彼が別行動をとっていた留学生なのだろう。

 

「ユーライア、あまり勝手をしないでちょうだい」

「申し訳ありません。異国の風景に見とれていたら、思ったより時間が経っていて」

 

 青年はひらりと馬から降りて、シュゼットの隣に立つ。

 その姿を見て、私とセシリアは思わず息をのんでしまった。後ろに控えているフランとフィーアも、無表情を装っているけど、私たちと同じ気持ちだと思う。

 彼はこの国では滅多に見ない象牙の肌をしていた。ほっそりとした輪郭に薄い唇。そして、光を全て吸い取ったような闇色の髪と瞳。

 こいつがキラウェアからの留学生?

 どう見ても、アギト国第六王子、ユラ・アギトじゃねーかっ!




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