【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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お姫様と見学会を

「クリス、お待たせ!」

 

 騎士科の訓練場わきのベンチに銀髪の美少女を見つけると、私は声をかけた。彼女は振り向いて、それから苦笑いになる。私の後ろにフィーア以外の人物がついてきたからだ。

 

「騎士科の訓練を見学すると言ったら、彼女も興味をもったみたいなの」

「今日はよろしくお願いします!」

 

 シュゼットにぺこり、と礼儀正しくお辞儀されると、クリスも拒絶できない。

 私たちは三人でベンチに並んで座った。護衛役のフランとフィーアは身分に関係なく私たちの一歩後ろに立って控える。

 シュゼットはぐるりと訓練場を見回した。

 

「思ったよりシンプルなんですね」

「大型の機材はあえて置かず、状況に合わせて備品を出し入れしているそうですよ」

 

 訓練場、と呼んでいるけど要は学校の運動場だ。校舎に囲まれる形で広くて平らなグラウンドが作られている。サッカーゴールの代わりに戦闘訓練用の備品が置かれているくらいで、他は現代の校庭とさほど変わりない。

 

「学校のカリキュラムは数年ごとに変わるからな。ふふ、今年はどんなことをやっているんだろう」

 

 クリスは期待にきらきらと目を輝かせる。

 

「見るだけでいいの? クリスのことだから、自分も参加したいとか言うと思ったのに」

「さすがに学園の訓練に入っていけないのはわかってるよ。でも、内容を知ってたら女子寮に帰ったあとで自主練習できるから」

「なるほど、見学でも十分勉強になるのね」

「あとでフィーアを貸してよ。女子寮じゃ組手のできる相手がいなくて退屈してたんだ」

「いいわよ。フィーアも運動したがってたし」

 

 戦闘訓練に参加できないのはフィーアも同じだ。いくら有能でも、私の後ろに付き従ってるだけじゃ彼女の体もなまってしまう。クリスはちょうどいい訓練相手だ。

 

「あ、あの……よろしいですか?」

 

 おずおずとシュゼットが私たちの会話に入ってきた。

 

「さきほどのお話ですと、クリスティーヌ様が女子寮で騎士訓練をされる、ということになりますけど……」

「そうだよ」

「ど、どうして?」

「趣味だ!」

 

 にこっ、とクリスは屈託なく笑った。

 

「ハーティアの妹姫様はお体が弱く、離宮の奥でひっそりとお暮しあそばれている、と伺っていたのですが……?」

「それは何年か前までの話だな。13の時にヴァンと婚約してクレイモアに移り住んだのをきっかけに、剣術と馬術を始めたんだ」

「ええええぇぇぇぇ………」

 

 シュゼットは目をぱちぱちと瞬かせている。

 でもこれは当然の反応だ。『クリスティーヌ姫』は確かに深窓の姫君だったから。去年の女子寮でも、自由に行動するクリスを見て生徒たちがパニックになっていた。私だってヴァンとクリスの入れ替わりを知らなかったら、彼女と似たような顔をしてたと思う。

 

「どっちも楽しいぞ。シュゼットもやってみるか?」

「いいいいえ、た、多分私には無理です。あの……剣術を学ばれて、婚約されているシルヴァン様は、ご心配なされないんですか?」

「全然! むしろ剣を振ってない方が心配されるな」

「……」

 

 ついに、感嘆の声をあげることもできなくなったらしい。シュゼットは絶句してしまった。

 

「あそこは騎士の家だから、いろいろとおおらかなんですよ。あまり深く考えないことです」

「……そう、なんですか」

 

 言葉は肯定しているけど、シュゼットの顔は『理解できない』とでも言いたげに引きつっていた。私も大概規格外だけど、クリスの脳筋キャラも規格外だからなあ。

 

「それより、授業が始まるみたいだぞ」

 

 校舎からシンプルな運動着に着替えた生徒たちがぞろぞろ出てきた。騎士科は去年から持ち上がりなので、メンバーは見知った者がほとんどだ。銀髪コンビに金髪の王子様。彼について歩くアッシュブラウンの側近などなど。そこにキラウェアからの留学生らしい生徒が何人か混ざっている。

 

「あら……?」

 

 参加メンバーを見ていたシュゼットが首をかしげた。

 

「どうしました?」

「ユラがいませんわ。彼も騎士科の訓練を受けるはずなのに」

「……っ」

 

 要注意人物が予定通り行動していない、と聞かされて後ろに立っていたフランの気配が緊張する。探しに行くべきか、私も腰を浮かそうとした時だった。

 

「もう授業が始まりますよ。急いでください」

「愛しい人との逢瀬が名残惜しくて」

 

 セシリアが、ユラと手をつないで現れた。




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