【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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開かずの図書室

「こっち!」

 

 突然の緊急事態に、私たちは慌てて図書室へ飛び込んだ。

 いつもは調べものをする生徒が何人も出入りする場所だけど、休日の今日は人影がなくがらんとしている。いや、ふたりだけ学習用のデスクで本を開いている生徒がいた。

 

「お前ら……」

 

 がたん、と音をたててアッシュブラウンの髪の男子が立ち上がった。その隣に座っていた金髪の少年もこちらを見る。ヘルムートとオリヴァー王子だ。

 

「君たちも勉強か?」

 

 何か調べものをしていたらしい、オリヴァー王子の前には本やノートが何冊も置かれていた。授業以外であまり姿を見かけないと思ってたけど、ここにいたのか。

 とはいえ、彼らに構っている余裕はない。

 

「え、ええ。ディッツに面倒な課題を出されてしまって。急いでいるので、ごきげんよう!」

 

 うちのちょい悪魔法使いなら、何か聞かれても適当にごまかしてくれるだろう。私はにっこり笑うと、そのまま奥へと向かった。普段は誰も入ってこない、古い歴史書ばかりが並ぶ書架を目指す。

 

「え~と、あれなんだっけな……」

 

 目的の本棚の前に到着した私は、改めて攻略本を開いた。ゲームでは目的地までアイコンタップ一発で行けるし、怪しいアイテムにはガイドが表示されるけど、現実のイベントアイテムにそんなものは存在しない。ゲームと現実のギャップを埋めないと必要な情報にたどりつけない。

 

「リリィ様、これじゃないですか?」

 

 セシリアが歴史書のひとつを指した。その本だけタイトルが周りの本とズレている。

 

「それだわ。押し込んで!」

「はい」

 

 セシリアが本に触れると、ゴゴ……と重たい音がして本棚がズレた。その奥に古めかしいデザインの扉が現れる。本一冊押し込んだだけで現れる隠し扉ってどうなの、という心配は必要ない。この程度で毎回動作していたら危なすぎるから、普段は休眠状態だ。この書架にはスイッチとは別のセンサーが設置してあって、聖女が足を踏み入れるとスイッチが有効になる。ユラはセシリアを連れまわすことで、彼女が訪れなければ動き出さない隠し部屋を探していたんだろう。

 

「おい、これって……」

「隠し部屋、だよね」

 

 ケヴィンとヴァンが青ざめる。そしてクリスが別の意味で顔色を変えた。

 

「中に何があるのか、わくわくするな。……でも、ドアノブがない?」

「ドアに文字盤があるでしょ。これにパスワードをいれるのよ。手がかりは、ここに書かれた意味不明な詩よ」

「昏き太陽の上に捧げられた白鳥の檻を探せ……? なんだこりゃ」

 

 ゲームの謎解き要素になっていたイベントだ。詩の意味を推理しながら、図書室中の本を調べなければ謎が解けない仕組みになっている。でもこの状況でいちいちイベントに関わっている暇はない。私は再び攻略本のページを開いた。

 

「セシリア、私が言う通りに入力して。月の下に眠るは漆黒のアナグマ」

 

 セシリアの白い手が文字盤を操作する。入力が終わると同時にがちゃりと小さな音がして、ドアが音もなくスライドする。その先には、細い階段がまっすぐ地下へと延びていた。

 固定パスワードなんて、一度謎が解けてしまえばただ文字を入力するだけの雑魚イベントだ。攻略本を持っている私の敵じゃない。

 

「リリィ? これってどうなってるの?」

「説明はあと。さっさと行くわよ」

 

 どんな魔法が使われてるのか。明かりが等間隔に設置されていて、階段は明るい。歩くのに問題はなさそうだ。

 

「ご主人様、先頭は私が」

「そうね、お願いフィーア」

 

 この先にトラップはなかったはずだけど、私たちの推理が正しければユラが先行しているはずだ。警戒するに越したことはない。私たちは順番に隠し通路へと足を踏み入れた。

 ジェイドを殿にして、全員中に入ったところでケヴィンが振り返る。

 

「ドアはあのままにしてていいの? 他の生徒が見たら大変なことに……」

 

 彼が心配そうに言っている間に、ドアはまたすーっとスライドして閉じていった。

 

「心配しなくても一定時間がたてば勝手に閉まる仕組みよ」

「そ、そっか……すごいね……」

「なんだって、こんなものが学校の図書室にあるんだよ」

 

 階段を降りながら、ヴァンが頭を抱える。

 

「王国史を勉強したのなら、知ってるでしょ? 王立学園の建物は、王都防衛のために作られたの。この先には空中要塞『乙女の心臓』を支援する管制施設が眠っているわ」

 

 彼らはそれを聞いて息をのんだ。

 




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