【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!   作:タカば

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神造兵器

「……待って、待ってくれ。建国神話ってあれだろ? おかしな絵空事ばっかりの」

「絵空事じゃないの」

 

 動揺するヴァンに、私はきっぱりと言い切る。

 

「建国神話はただのおとぎ話じゃない。本当にあった現実の事件よ。初代聖女は女神の力で巨大な城を空に浮かべ、白銀の鎧に乗り込んだ勇士たちとともに、厄災を封じたの」

「それが事実だとして、何故お前らがそれを知ってるんだ?」

「手品の種を明かさないのがハルバードの流儀、なんて台詞じゃごまかされてくれないわよね」

「当然だ。お前の言動は手品の範疇を越えてる」

「……ユラを止めたら詳しく話すわ。どこまで信じてもらえるか、わからないけど」

 

 セシリアとふたりして、ここまでゲーム情報全開の行動をしたのだ。私に忠誠を誓っているフィーアやジェイドはともかく、ヴァンたち三人は説明しなければ納得しないだろう。

 

「ご主人様、また扉です!」

 

 先頭を歩いていたフィーアが振り返った。

 そこには入り口と同じような古めかしい扉がある。こちらには文字盤も変な詩もない。セシリアが近づくと、ドアはまた音もなくスライドした。

 私たちは急いでドアの先へと踏み込む。

 そこでは想像しうる中で最悪の状況が待ち受けていた。

 

「意外に早かったね」

 

 殺風景な灰色の部屋で、ユラが振り返った。彼の前には銀のレリーフに縁どられた高さ二メートルほどの姿見があった。鏡は銀色に輝きながらも、真正面に立つユラの姿を映してはいない。ただの姿見ではないことは明らかだった。

 異様なのはそれだけじゃない。銀のレリーフに触れるユラの手からは、どす黒い何かが溢れ出ていた。黒い何かはじわじわとレリーフを黒く染めていっている。

 詳しいことはわからないけど、あれはきっとよくないものだ。

 

「ユラ、その手を放しなさい!」

「断る」

 

 セシリアの命令を拒否した瞬間、ばちんとユラの首もとで何かが爆ぜた。ユラの制服が首元からじわじわと赤く染まっていく。しかし、ユラは薄笑いを浮かべたまま、レリーフに添える手に力をこめた。レリーフはどんどん黒くなっていく。

 

 私のすぐそばから、ひゅっと風を切って何かが飛んでいった。フィーアの投げたナイフだ、と認識した次の瞬間ユラは身動きひとつせずにナイフを弾き飛ばす。次いでジェイドが放ったらしい魔法もあっけなく防がれる。ユラお得意の『魔力だけの力技で全部弾く』だ。

 

「ユラ!」

「嫌だ」

 

 ユラは何も写さない鏡面に手をあてた。とたんに、頭上から抑揚のない声が降ってくる」

 

『認証……エラー……認証……エラー…… 遺伝子を……確認できません』

「まだ他に人が?」

 

 システム音声に馴染みのないフィーアが、ぎょっとして天井をふりあおぐ。だけど説明している暇はない。

 

「無駄よ、あなたにそこに入る権限はない!」

「だからハックしてるんじゃない」

 

 鏡全体が真っ黒になる。ユラの仕業なのは明らかだった。

 

「ユラ、やめなさい!」

 

 セシリアが叫ぶ。

 ユラの首からびしゃっと派手に赤い血が噴き出した。普通の人間なら、明らかに命に係わる量の鮮血だ。ユラは体を赤く染めながら、それでもにやりと笑う。

 

「甘いよ聖女様」

 

 灰色の床に血だまりだけを残して、ユラは姿を消した。




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